テラーノベル
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「……んっ………」眠い目を擦って目を開ける。
隣に目をやるとしっかりと俺を抱き締めて、すやすやと規則正しい寝息を立てて眠る照が居た。
あっ…そうだ…昨日…途端に恥ずかしくなる。
途中からあまり記憶がないけれど、気怠いし腰は少し痛くて重い。
服は着てる…昨日借りた俺には大きい照のスウェットだ。
照が着せてくれたのかな…体もさっぱりしてる。
俺の服は…律儀に畳んで下に置いてあった。
帰らなきゃ…早く、帰らなきゃ!!
この状況から一刻も早く逃げ出したかった。
曖昧な気持ちのまま、一線を超えてしまったことへの後悔が押し寄せてくる。
ゆっくりゆっくり慎重に照を起こさないように腕から抜け出し、急いで自分の服に着替えた。
借りたスウェットを丁寧に畳んで、リビングのソファに置く。
「ごめんね、ひかる…」
寝室に向かってポツリと呟き、部屋を後にした。
自分の家に帰ってきた俺は、照に『用事を思い出したから帰った、急にごめん』とメッセージを入れた後、ずっと天井とにらめっこしている。
照からは『そっか。昨日はありがとう。体、大丈夫?ゆっくり休んでね。落ち着いたら話がしたい』と返事が返ってきた。
落ち着いたら話がしたい…か……
昨日、何であんなことになったのか自分でも解らない。
ただこれだけは言える。
辛そうな照の顔を見ているのに耐えれなくなったから。
その辛さを和らげてあげたいと思った。
ただそれだけだったんだ。
………スマホが鳴った。
照かなと思ったら、なべだった。
「もしもし、ふっか?お前、今日オフだよな?」
少しホッとしながら電話に出る。
「なぁべぇ…俺どおぅしたらいぃ…」
自分でもビックリするくらい情けない声だった。
「おまっ!どうした!?とりあえず、俺んちに来い!迎えに行くから待ってろ!」
うんって言うとすぐ行くからって返ってきた。
後ろで「ふっか、何かあった?大丈夫?」って舘さんの声がする。
相変わらず一緒に居るのかと思ってたら、じゃあなと電話が切れた。
「んで、何があった?」
なべが迎えに来てくれて、そのままなべの家に連れて来てもらった。
そこにはやっぱり舘さんも居て、2人とも心配そうに俺を見てる。
「実は……」
昨日の出来事を全て正直に話した。
「はぁぁ!?マジかよ…お前最低だな」
「翔太、言い方!」
「最低なのは解ってる。ひかるの辛そうな顔見てたらほっておけなかった……」
「じゃあ、照と付き合うのか?」
「それは……」
言葉を濁した俺になべは盛大にため息を吐いた。
「お前さ、それだと更に照を傷つけることになるぞ。お前も失恋したばかりだし、はっきりと答えを出せとは言わない。ただ、今、誰のことを1番に考えてる?照か阿部か?」
「……解らない」
本当に解らないんだ。
阿部ちゃんのことはまだ好きだと思う。
「ふっか、阿部に告白してみたら?気持ちに区切りつくかもしれないよ?」
静かにたまに翔太を嗜めながら俺の話を聞いていた、舘さんが口を開いた。
「それだ!そうしろ!それが良い!!」
翔太が畳みかけるように言ってくる。
「不安なのは解るよ。でも、このままだと翔太が言ったように更に照を傷つけると思う。答えを出さないと照もふっかも前に進めないよ。照はね、本当にふっかのことを本当に大切に思ってるんだよ。一昨日、皆で食事した時に照がお酒飲んでなかったから、飲まないの?って聞いたら、ふっかがやけ酒するだろし、介抱しなきゃならないから飲まないって言ってたよ。介抱なんて、別に照がしなくても良いのにね。大切に思われてるんだからちゃんと答えは出してあげて欲しい」
照そんなこと言ってたんだ……
どこまで優しいんだろ……
やっぱりこのままじゃダメだよな。
「俺、阿部ちゃんに気持ち伝える」
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