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「んんっ、、、」
「起きたのか!!??・・・コホンッ・・・よかった」
とわざとらしく誤魔化す彼。
いや、彼的には隠せているつもりなのか?
「・・・しょ、〜〜〜!?!?いだぃっ、、」
魈のことが見たくてたまらなかったから、火照った身体を起きあげようとしたが、、、
そうだ、そうだった。
私は怪我をしていたのだ。
骨も折れてしまっているかもしれない。
背中や右手の痣がジリジリと痛む。
おまけに倦怠感。息がいつもよりあがっていて、正気じゃないのがわかる。
いつもの私だったら起き上がろうなんてしないだろう、
・・・・・・多分。
「動くな蛍。怪我が治りづらくなるだろう、そんなことで鍾離様のお手を煩わせるな。」
そういう彼の手には、私の額にあったものがのせられていた。
「・・・少し待っていろ、」
そう言い残し、彼は手際よく布を水に浸し、いい具合に絞る。
それをもって蛍の元へ歩き出し、額にのせる。
「つべだっ」
つい冷たくて出てしまった。
魈なら『これだから凡人は』とか言いそうだ、と身構えていたが、いつまで経っても言葉が帰ってこないのでそっと彼を見ると、
「ふふっ、、」
と柔らかい笑顔で可笑しそうに笑っていた。
予想外の反応に蛍は顔をリンゴのように赤くし、口をはくはく動かしていた。
それを見た魈は自分がどういう顔をしていたのか自覚し、どんどん蛍に負けないほど顔が赤くなっていく。
顔を抑えたって見えているのに。
そんなところも可愛らしいな、なんて思っていた私はやっぱり正気じゃない。
いつもならなにも考えられないほど心臓の音でおかしくなっているだろう。
・・・ん?『いつも、』だったら、、?
自分の考えていることに不思議を感じて少し考え込んでいると、『コンコン』と扉を優しく叩く音がした。
「失礼する。・・・旅人、起きていたのか」
「っあ、、しょ、、り、、」
「無理に話さなくてよい。また無理をしたら魈が許さないと思うぞ」
「!?!?し、鍾離様!?なな、、なにを、、」
とあからさまに顔を赤く染める彼に、鍾離の口角が少し上がる。
「それはさておき旅人、」
あっ、置いちゃうんだ。魈がすこし可哀想だけど
「正直に言う、お前は今最悪の状態だ。」
「・・・?」
よく分からず、ハテナをうかべていたが、それに気づいたのか
「つまりはだな、怪我と風邪を同時に患っている、ということだ。これがどういうことが分かるか?」
「・・・さい、、あく、、」
なるほど。理解した。
たしかに最悪だ、けれどそこまでいう必要はあるのか、、?
「それだけでは最悪とよべない、という顔をしているな。」
ドキッとした。
「・・・図星か。そうだな、旅人、お前は自分の状態を確認した方がいい。魈、鏡を持ってきてくれないか?」
「はいっ」
そういい、風元素を残して去っていく。
「せんせっ、、ぱい、、も、、」
声を出すのも精一杯で、一言発するだけで喉の奥が痛む。
「お前の腹のうえだ。」
・・・?
お腹の上にパイモンが・・・?
「お前を心配して、離れなかったんだ。」
鍾離の顔を見たあと、自分のお腹の上の相棒に目を落とす。
・・・そうだったんだ。
申し訳ないが、嬉しくなってしまった。
やっぱりパイモンは優しいな。
その優しさが心を満たしていくのが感じられた。
「鍾離様。鏡をお持ちいたしました。」
「ああ、ありがとう魈。旅人、自分の体を見てみろ。」
「・・・ぇ」
つい間抜けな声が出てしまった。
いや、これは仕方なく無いか!?!?
背中には火傷のあと、右手には痣。それは知っていたからびっくりすることはなかったが、、、
顔にも火傷のあと。
腕には切り傷や打撲、足には腕と比例しようがないほどの切り傷。しかも胸元の際どい部分まで赤く染まっていた。
全体的に火照った体と荒い息、
だれが見ても痛々しいと思うだろう。
うん、たしかに最悪だ。自分の状態は思ったより悪かったらしい。
「分かったか、自分の状態が悪いことが。」
言葉にはできないからコクっと頷く。
「それでだ、風邪をとりあえず治したいと思ってな、薬を持ってきたのだ。」
受け渡されるものを取りたいと思うのとは裏腹に、体は全く言うことを聞かない。
「・・・ぁ」
「・・・仕方ない、魈。」
「はい、鍾離様。」
「旅人に薬を飲ませてやってくれないか。」
「・・・はい」
「ありがとう魈。やはり、、、いや、なんでもない。」
そういって笑みをこぼすと、蛍のお腹の上にいる非常食をもって歩き出す。
「では、朝飯を作ってくる。あとはよろしく頼んだぞ、魈。」
「はい、鍾離様。」
ぺこりと頭をさげて扉が閉まったのを確認すると、くるりと蛍の方を向いた。
明らかに不機嫌そうな顔をしているが、やっぱり心配の色が伺えた。
「しょ、、」
「・・・我はまだ怒っているからな。」
そういいながらも薬の入った湯のみを蛍に近づける。
「!?!?くざっ、、けほっ」
「暴れるな、これは薬だ。良薬口に苦し、というやつだ。」
いやいや、それにしても、だ。
風邪のせいなのか、匂いが近くにくるまで気づかなかった。
とてつもなく臭いと言うことを。
「・・・やぁ、、のみたくな、、」
「・・・わがままを言うな。」
そう言われても、、、こんなに臭い飲み物、、いや物体、、?
なんでもいいが飲めたものか。
全力で抵抗すると、どんどん魈の眉間にしわがよっていく。
あっ、やばい、怒らせた。
そう思った時にはもう時すでに遅し。
「埒があかん。もういい、喋るな」
もともと喋ってないけど、なんてツッコミしたらほんとに怒らせてしまうから心に閉まっておく。
急に立ち上がったと思ったら、魈は湯呑みに入った物体を自分の口の中に含んだ。
「なにっ、、してる、、のっ、、!?」
なぜ自分で飲むのか理解できなくて、思わず口を開けてしまった。
蛍の空いた口が閉じぬよう、顎に手を優しく置いて少し上げる。
黄金色の綺麗な瞳が自分の目の前にあるのに気が付き、ぼっと顔が赤くそまっていくのを感じる。
どんどん顔は近づき、耐えられずに目を閉じた。
それとほぼ同時刻に唇に柔いものが落ちてきて、一瞬なにが起こっているのか分からなかった。
魈は自分の口に含んだ薬を蛍の口に移し、上顎や歯茎をいやらしい舌で舐めていく。
その感覚が恥ずかしてたまらなかった。
「んやっ、、しょ」
と言いかけるも、魈の舌は自分の舌を器用に見つけ、焦らしながら絡ませる。
じゅるじゅる、という音が蛍の耳を責め、頭が働かずに顔にばかり熱が集まるのを嫌でも感じさせられた。
ごくっと蛍が飲み終わったのを確認すると、少し寂しそうに自分の口を離していく。
蛍の口と魈の口を繋いでいた銀色の糸はプツリと切れ、最後に魈は蛍の口についていたどちらのものか分からない唾を舐めとった。
恥ずかしさで薬の味なんて全くせず、言葉もでなかった。
「・・・我は、お前のことを愛している」
急すぎる告白に口も頭も言うことを聞かず、ただただ顔が、身体が熱くなっていくのを感じていた。
「わ、、たっ、、しも、、」
「しょ、、しょうの、こ、、と、、」
「すき、、だよ」
だんだんと声が小さくなっていくのが分かる。
もうこのまま崖から飛び降りたいほど恥ずかしさが募っていく。
いっそのことだれか突き落としてくれないかな!?!?
なんて思ってしまう。
しばらくたっても魈がなにも言葉を発さないため、布団の端からちらりと除くと、顔を真っ赤にそめた大好きな人がいた。
それを見た蛍は恥ずかしさですぐに顔を隠してしまい、
心の中で物事を精一杯整理する。
『愛している』
その言葉が実際に魈の口から発せられた、それがわかった時は羞恥心で弾けそうだった。