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コメントありがとうございます!<(_ _)>
キャラ崩壊があると思います
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朝の体育館は、いつもより静かだった。
窓から差し込む光は変わらないのに、
そこにある空気だけが違う。
ボールの音が響く。
ドン、ドン、と規則正しい音。
でも、そのリズムはどこか“足りない”。
「もう一本!!」
田中の声が響く。
いつも通りのはずだった。
でも、
「日向!」
返事がない。
「おい、日向!!」
もう一度叫ぶ。
それでも、返事はない。
一瞬、誰も気にしないふりをする。
よくあることだと。
遅れているだけだと。
でも、
その“ふり”が、続かない。
「……来てないのか?」
山口の声が小さく落ちる。
誰も否定しない。
誰も肯定しない。
影山は、ボールを持ったまま止まっていた。
指先が、わずかに強く握り込まれている。
「……遅刻だろ」
誰かが言う。
でも、その声は自分言い聞かせるためのものだった。
練習が始まる。
でも、何かが違う。
速攻がない。
いや、できない。
影山がトスを上げる。
田中が打つ。
ブロックに捕まる。
「今の、日向なら……」
誰かが言いかけて、やめる。
その言葉は、もう口に出してはいけない気がした。
時間が進むほどに、違和感が増える。
声が遅い。
動きが噛み合わない。
視線が一瞬だけ迷う。
“そこにいるはずの場所”を見る癖だけが残っている。
それが一番、痛い。
休憩時間。
誰も水を飲む音しかない。
「……変だな」
田中が呟く。
「何が」
月島が返す。
月島は、いつも通り冷静な顔をしている。
でも、その目はコートを見ていない。
「なんかさ」
田中は言葉を探す。
「一人足りねぇのに、まだそのままやってる感じがする」
その瞬間、誰も笑わなかった。
澤村が、ゆっくりと息を吐く。
「……続けるしかないだろ」
その声は、主将の声だった。
でも同時に苦しさも混じっていた。
午後の練習。
ラリーは続く。
でも、続けているだけだった。
ボールは落ちない。
でも、繋がっていない。
どこかで“切れている”。
影山がトスを上げる。
ほんの一瞬、迷う。
誰に上げるべきか。
ではなく。
“誰に上げていたか”。
その記憶が、邪魔をする。
「……くそ」
小さく呟く。
そのときだった。
バシン。
レシーブが乱れる。
誰も追いつけない。
ボールが落ちる。
静か。
その音だけが、やけに大きい。
誰も動かない。
「……今の、取られてたよな」
山口が言う。誰も答えない。
取られていた。
でも、届かなかった。
“いつもなら”。
その言葉が、頭の中で繰り返される。
日が傾く。
練習終了の時間。
誰も、すぐに帰らない。
コートに立ったまま。
ただ、立っている。
「……なぁ」
田中が言う。
「これ、いつまで続くんだ?」
答えない。
影山は、ネットの向こうを見ていた。
そこにいるはずのない場所を。
でも、
そこには何もない。
ただの空白。
「……戻すしかねぇだろ」
誰かが言う。
でも、その言葉は希望じゃなかった。
義務だった。
夜。
体育館は無人になる。
電気が消える。
暗闇の中で、ネットだけが浮かんでいる。
その向こう側に。
何もない。
でも、
誰もいないはずの場所に、
まだ視線だけが残っていた。
どうでしたか?
コメントしてくれるとうれしいです!
コメント
2件
面白すぎるよぉ……本当に初心者!?私より上手いよ!?続き楽しみに待ってるね!