テラーノベル
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岩塩の混ざった冷たい砂嵐が、荒野を吹き抜けていく。
「ふぅ……ふぅ……!」
私は膝に手を突き、荒い息を吐き出しながら立ち上がった。
手のひらに練り上げた風のチャクラ。今までみたいにゴツゴツした硬い爪や鱗じゃなく、しなやかで、まるで生きているみたいに静かに渦巻く「風の龍影」。
ナラク先生の過酷すぎる指導と、『武御雷(たけみかづち)』の雷撃をしつこく受け流し続けたおかげで、私は少しずつ『竜神化』の感覚を掴みかけていた。
「よし……! 今の、結構いい感じだったんじゃない!?」
「まあまあやな」
日傘を差したナラク先生が、干し梅を口に放り込みながらフッと鼻で笑った。
「最初の頃の『自滅寸前の暴走トカゲ』よりは、だいぶ見られるようになったわ。……けどな、浮かれてる暇はないで、アカネ」
ナラク先生の雰囲気が、急にガラリと変わった。
右目の車輪の紋様——**『思金神(おもいかね)』**が、怪しく真っ赤に光を放っている。
「……先生?」
「追っ手や。……いや、追っ手というよりは、ウチらと同じ獲物を狙う『お邪魔虫』やな」
「え……?」
ナラク先生は日傘を少し上げ、私たちが歩いてきた東の空……火の国と風の国の国境の峠道を睨みつけた。
「木ノ葉の忍びや。それも……なかなか骨のある小隊が、速い速度でウチらの背中を追ってきてる」
「木ノ葉の忍び……!?」
私の頭に、真っ先にあの生意気で綺麗な顔が浮かんだ。
「……まさか、あの白眼野郎……日向ミズキ!?」
「せや。あの白眼のぼっちゃん(ミズキ)に、熱血な体術使い(ロイス)、忍具オタクの嬢ちゃん(アイネ)……それに、なかなかに厄介な術を使う上忍(サエ)がついておるな」
ナラク先生はフンと鼻を鳴らした。
「世間じゃあな、あの犯罪組織『暁(あかつき)』が大々的に暗躍しとるおかげで、大国の上の連中はてんやわんやや。人柱力だの尾獣だのの防衛で、暗部も上忍も駆り出されて手一杯なんやが……そんなドサクサに紛れて、あの小隊は『彼岸』の討伐と、あんたらの捕獲(あるいは保護)のために動いとる」
「暁……? 人柱力……?」
原作の知識なんて何もない私には、ナラク先生の言っている単語の意味がほとんど分からなかった。だけど、「木ノ葉の忍びが私たちを追ってきている」ということだけははっきりと理解できた。
「ミズキの奴……! 私に『彼岸に行くのはやめろ』とか『足を引っ張るな』とか上から目線で言っておいて、結局追ってきたの……!?」
「フッ……あんたのその荒削りな風が心配でたまらんのやろ。素直やない坊っちゃんや」
「心配なんてされてないよ! あいつ、私のこと『野蛮な風使い』ってバカにしてたんだから!」
キーキーと怒る私に、後ろからぬっと黒い影が寄り添ってきた。
「アカネさん……! その白眼野郎が来たら、僕が傀儡の影から毒針を撃ち込んで排除します……! だから、僕と……」
「マキナ、白眼相手に隠れて毒針撃っても丸見えやで。あとプロポーズは却下や」
#うちはイタチ
琴葉つきね
979
#コメントいっぱい頂戴!
ナラク先生が一瞬でマキナの頭を日傘の柄で叩く。
「あはっ♡ 木ノ葉のエリート小隊かぁ〜! 日向の白眼の静かな音、それから上忍の放つ底知れないチャクラの音……うーん、彼岸の凶悪な音と混ざり合ったら、どんなシンフォニーになるんだろうねぇ♡ ゾクゾクしちゃう! **食べちゃいたい♡**」
「シズク、あんたは相変わらずブレへんな。……まあええわ」
ナラク先生は視線を前方の、黒々とした岩塩の洞窟——『彼岸』の潜伏先へと戻した。
「彼岸の連中も、暁の騒ぎを利用して自分たちの実験に没頭しとる。大国が手出しできへんのをいいことに、あんたのその『龍の肉体』を完全に解体して、大蛇丸すら到達し得なかった『未知の仙術』を手に入れようと手ぐすね引いて待っとるで」
ナラク先生の言葉に、私の全身の毛穴がキュッと収縮した。
大蛇丸。仙術。解体。
不気味な言葉の数々。カムラたちの冷酷な笑顔が脳裏に浮かぶ。
「……上等だよ」
私はギュッと拳を握りしめ、前を見据えた。
「木ノ葉のミズキたちが追ってこようが、彼岸のやつらが私を解体しようとしていようが関係ない。私は……私の風で、全部吹き飛ばすだけだ!」
「……ふん。ええ顔するようになったやんか」
ナラク先生は口角を上げ、満足そうに頷いた。
「よし、決戦や。木ノ葉のエリートどもにいいところ持ってかれんように……たつまきの風とうちはの雷、彼岸の不気味な奴らにぶち叩き込んでやるで!」
「「おおおっ!!」」
「アカネさん! 激戦の前に、愛の証としてこの婚約指輪(傀儡の関節用リング)を……!」
「受け取るかぁぁぁっ!!」
マキナを勢いよく蹴り飛ばしながら、私は決戦の舞台——闇に蠢く岩塩洞窟へ向かって、全力で駆け出した。
「サエ先生。……見えました」
岩塩洞窟の異様な冷気が立ち込める地下回廊。
僕——**日向(ひゅうが)ミズキ**は、こめかみに浮き出た血管をさらに緊張させ、視界を全開に開いていた。
『白眼』の透過視界の先——地下深くの回廊を、凄まじい速度で突き進む四つのチャクラの束。
「……あの野蛮な少女(アカネ)たちが、すでに洞窟の深部へ突入しています。その後ろには……『うちは』の万華鏡のチャクラ」
「まあ……本当に速いですね。あの少女、数日前に出会った時よりもチャクラの無駄が削ぎ落とされていますよ」
サエ先生が暗闇の中で、手持ちのお汁粉缶を最後の一滴まで飲み干しながら感心したように呟いた。
「フッ……! だから言っただろうミズキ! 彼女の胸に宿る『情熱』は、僕たちの想像を超えて成長しているのだと!」
**カール・ロイス**が景門のチャクラを微かに燃やし、熱い拳を握りしめる。
「ロイス、静かに。それよりサエ先生……敵の配置は?」
**アイネ・チェン**が大型の巻物を背中から滑らせ、緊張した面持ちで尋ねた。
「ええ……。少し『覗いて』みましょう」
サエ先生が両目を閉じる。
周囲の空気が重く沈み込み、先生の体から一瞬で大量のチャクラが霧散していく。
「……くっ……! はぁ……はぁ……っ!」
数秒後、目を開けたサエ先生は肩を大きく揺らし、額から滝のような汗を流していた。
「だ……大丈夫ですか、サエ先生! ほら、予備の金時豆入りお汁粉です!」
「あ……助かります、アイネ……。ゴク……ゴク……ふぅ、死ぬかと思いました……」
呼吸を整えたサエ先生が、冷徹な分析を口にする。
「……『彼岸』の四人は、広大な地下塩湖の広場でアカネたちを待ち受けています。カムラの『闇電』、テッサの『砂鉄』、イワドの『重力』、蒸月の『水蒸気』……それぞれが完全に連携し、アカネの身体を捕獲するための『捕獲陣形』を組み終えていますね」
「捕獲陣形……」
「ええ。アカネがどれほど風の扱いを滑らかにしようとも、正面から突っ込めばイワドの重力で叩き落とされ、カムラの闇電で経絡系を破壊されます。……ですが」
サエ先生は僕の目をまっすぐに見つめた。
「ミズキ。あなたが『コンマ一秒の遅れもなく』、アカネの風の軌道に合わせて敵の点穴を突き、チャクラの連携を断ち切る未来……それだけが、彼女たちを救い、彼岸を全滅させる唯一の『勝ち筋』です」
「……僕が、あの野蛮な少女の『掩護』を?」
「いいえ。掩護ではありません。……あなたと彼女のチャクラを、完全に『噛み合わせる』のです」
僕の胸の奥で、カッと熱いものが込み上げてきた。
(あの不格好で、無茶苦茶で、自滅寸前だった風使いと……僕の洗練された柔拳を噛み合わせろ、だと……!?)
「ミズキ! 迷うな!」
ロイスが僕の肩を強く叩いた。
「青春とは、時に反発し合う熱と熱が交ざり合い、巨大な爆発を生むものだ! 彼女の情熱を、君の情熱で受け止めてやれ!!」
「そうだよ、ミズキ! 私も新開発の『磁気遮断爆風苦無』でテッサの砂鉄を止める! カムラの闇電はロイスの幻術で散らす! 道を作るのは私達の役目だよ!」
二人の言葉に、僕はふっと息を吐き出し、眼鏡……ならぬ白眼の焦点を深く合わせた。
「……まったく。どいつもこいつも、暑苦しいことばかり言いますね」
僕は苦無を引き抜き、前方の暗闇を見据えた。
(たつまきアカネ……。大蛇丸の影を追う抜け忍どもに、あなたのその泥臭い風を奪わせはしません)
万華鏡写輪眼の忍——うちはナラクの存在。
世間を揺るがす『暁』の暗躍。
そして、大蛇丸すら到達し得なかった『未知の仙術』を巡る狂気。
全ての糸口が絡み合う地下塩湖へ向け、僕たち第九班は、白き瞳に絶大な決意を宿して駆け出した。
「行くぞ、第九班! 僕たちの洗練された柔拳と情熱で……あの嵐を、勝利へと導く!!」
「「「応!!!!」」」
暗闇を切り裂く足音が、決戦の大広間へと響き渡っていく——。
**ドォォォォン……!!**
崩れ落ちる岩塩の天井。
暗闇を抜けた先に広がっていたのは、見渡す限り広大な地下塩湖だった。塩の結晶が怪しく白く輝き、静まり返った水面が私たちの足音を不気味に反射している。
「来おったな……」
ナラク先生が日傘をすっと閉じ、鋭い視線を地下塩湖の中央へと向けた。
そこにいたのは、あの四人——『彼岸』だ。
「ククク……よく来たね、たつまきアカネ。わざわざ自分から解体されに来てくれるとは、実に殊勝な心掛けだ」
暗闇から一歩踏み出したのは、鏑木カムラ。指先には、どろどろとした黒い『闇電』が不気味に蠢いている。
「へ〜、マジで来ちゃったんだ? 相変わらず勢いだけはあるね〜、ドラゴンちゃん♡」
砂鉄の波に乗って浮かぶ、チャラ男のテッサ。
「ヒャッハー! 待ちくたびれたぜぇ! 龍の肉体を重力で潰して、仙術のチャクラを絞り出してやる!!」
狂気全開で高笑いする、パリピのイワド。
「あー……だりぃ。早く終わらせて寝たい……」
気怠そうに灼熱の水蒸気を吹き出す、蒸月。
「カムラ……ッ!!」
父ちゃんを傷つけ、たつまきの里を踏みにじった奴らの顔を見た瞬間、私の胸の奥からカッと熱いものが込み上げてきた。
「アカネさん、熱くなってはダメです……! 敵はあなたを狙っている。僕の命にかえても、あなたを守りますから……だから、僕と……」
「マキナ! 後ろ!!」
ガキィィィンッ!!
マキナが私に伸ばしかけた手を遮るように、上空からすさまじい勢いで「砂鉄の槍」が突き刺さった。
「おっと、そこの根暗くん。俺の獲物に気安く触らないでくれる〜?」
テッサが前髪をかきあげながら笑う。
「マキナ、シズク! 奴ら、本気で私を殺し(捕まえ)にきてる! 散りなさい!」
ナラク先生の声が鋭く飛ぶ。
「ふふっ♡ 砂鉄に重力に水蒸気……そして黒い雷……! あぁん、なんて凶暴で破滅的な合奏(アンサンブル)なんだろう……♡ ゾクゾクしちゃう! 食べちゃいたい♡」
「シズク、遊んでる場合じゃないでしょ!!」
「無駄だ」
カムラがメガネの奥の目を冷たく光らせ、手をかざした。
「イワド、蒸月、テッサ。素体以外の雑魚は殺せ。アカネの経絡系は、私の闇電で完全に破壊する」
ズズズズズ……ッ!!
その瞬間、超巨大な重力の領域が地下塩湖全体を覆った。イワドの重力忍術だ!
「くっ……重い……! パワーが段違い……!?」
膝が折れそうになる。砂漠で戦った時以上の、押し潰されるような超重力。さらに蒸月の水蒸気が広がり、視界と酸素が奪われていく。
「これで終わりだ、竜の生贄よ」
カムラが指先から、極太の『闇電』を解放した。逃げ場のない黒い雷が、動けない私に向かってまっすぐ襲いかかる——!
(動け……! 動け、私の足……!!)
ナラク先生の修行を思い出せ。力むな、風になれ。チャクラを爆発させるんじゃない、流すんだ……!
「秘術——……竜神化(りゅうしんか)の兆(きざし)!!」
フッ……!!
私の身体から、重苦しい爆音は消えた。
代わりに生まれたのは、静かで、澄み渡った、滑らかな風の渦。
背中に現れたのは、実体を持たない半透明の『風の龍影』。
重力の圧力を風の回転で外側へ逃がし、私は滑るように塩湖の水面を跳んだ。
「なに……!? 重力を流しただと……!?」
イワドが驚愕の声をあげる。
「そこだ、カムラァァァッ!!」
私は最高速度でカムラの懐へ肉薄し、風の爪を振り下ろした。
「甘い!!」
だが、カムラは冷酷に嘲笑った。
カムラの全身から、防御不能の『闇電』が全方位へ爆発する。至近距離。どれほど風で受け流そうと、この全方位の雷撃を完全に殺すことはできない——!
(しまっ……!?)
死が頭をよぎった、その瞬間。
シュバッッ!!
「——遅いですよ、野蛮な風使い」
横合いから飛び込んできた白と紺の影。
無駄のない美しすぎる足さばき。
「柔拳法・八卦六十四掌(じゅうけんぽう・はっけろくじゅうよんしょう)!!」
ドドドドドドドドッッ!!
「グハッ……!?」
カムラの体内の点穴を、寸分違わぬ精度で突き穿つ連続攻撃。
カムラから放たれようとしていた『闇電』のチャクラが、点穴を塞がれたことで瞬時に霧散していった。
「なっ……木ノ葉の『白眼』……!?」
カムラが血を吐きながら吹き飛ぶ。
私の隣に着地したのは——汗一つかいていない、澄ました顔の日向ミズキだった。
「ミズキ……!? なんで……あんたが……!」
「言ったはずです。あなたのその不格好で荒削りな風……僕の柔拳で正しく叩き潰すと」
ミズキは白眼を怪しく光らせ、前方のカムラたちを見据えた。その背後からは、情熱のチャクラを滾らせるカール・ロイスと、巨大な巻物を構えたアイネ・チェン、そしてお汁粉の缶を持った未来サエが降り立っていた。
「ミズキ! 援護するぞ! 青春の……情熱!!」
「テッサの砂鉄は私の『対・砂鉄磁気遮断苦無』で止めるよ!」
さらに、ナラク先生が日傘を優雅に開いてミズキたちの隣に並ぶ。
「いやあ〜、ええタイミングで登場するやんか、木ノ葉のボッチャン。……よし、アカネ!」
ナラク先生の万華鏡写輪眼が、カッと真っ赤に燃え上がった。
「たつまきの風、日向の柔拳、うちはの雷……彼岸の不気味な奴らに、全部ぶち叩き込んでやるで!!」
「……うんっ!!」
私はミズキと背中を合わせ、苦無を強く握りしめた。
「行くよ、ミズキ! 足引っ張ったら承知しないからね!」
「ふん、それはこちらの台詞です。……行きましょう、アカネ!」
泥臭い風と、洗練された白眼。
今、宿命のライバルと仲間たちが勢揃いし、地下塩湖で最終決戦の火蓋が切って落とされた!
コメント
1件
第11話、めっちゃ熱かったです…! アカネが竜神化の兆しを掴んで、ミズキとまさかの背中合わせで戦う展開、胸アツすぎました🥀 ナラク先生の「全部ぶち叩き込むで」の台詞も痺れるし、マキナのプロポーズがまた華添えてて笑った(笑)。それぞれのキャラの個性が戦闘中にもしっかり生きてて、読みながら「次どうなるの!?」って止まらなかったです。キュルノさんの描くバトルの疾走感と仲間の連携が本当に好きです…🌙