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先程の呪いを解くことができたので、小屋へ帰ることにした。すると途中に一つの桜の木を見つける。一気に疲れた二人は少しそこで休んでから帰ることにした。すると、彰久が一言発する。
「烏丸とは過去に何があったんだ..?」
その言葉に鷹矢は衝撃を受け固まる。
「何故そんなことを聞く」鷹矢が声に怒りを滲ませながら返すと、彰久は真剣な眼差しで
「鷹矢が時々見せる憂いのある顔を見ていると心配になるんだ。だからもっと鷹矢の事を知って、辛い時は寄り添いたい」そう伝えると鷹矢は渋々口を開く。
時は平安時代の初期。鷹矢はまだ若い天狗だった。若き日は無邪気で他の天狗たちとも競い合いに明け暮れる日々を送っていた。だが人間と接することはほとんどなく、山を守るという使命を全うすることが最も重要なことだった。
だがそんな平穏な日々は突然破られる。
その日、鷹矢と他の天狗たちは山の北端にある神社の守りを強化するために出かけていた。その神社はかつて、人々が精霊へ祈りを捧げるために建てられた神社だったが、現在はその神社を訪れる者がいなくなり無人の状態が続いていた。
山の中間に差し掛かった時、突然空が赤く染まり風が吹き荒れた。異変を感じとり、鷹矢は急いで神社へ向かった。辿り着くと中には見知らぬ男が立っていた。その男は鷹矢が今までに見たことがない異様な気配を纏っていた 。
「お前がこの山の守り神か?」男が冷たく言い放つと、手に持っていた古びた書物を開き、何かを呪文のように唱え始めた。すると、周囲の空気が凍りつくように広がり、鷹矢はその場に立ち尽くした。
その男、名を「烏丸」と呼ばれる存在だった。彼は人間とも天狗とも違う存在で、山の精霊の力を奪おうとしていた。彼の目的は山の精霊の力を使い、不老不死を手に入れることだった。
「山の力は天狗にしか引き出せない。だが君の力を借りればもっと大きな力を手に入れることができるんだ」
鷹矢は拒否した。山の力は個人的な目的のために使うべきではないと信じていたからだ。しかし烏丸は冷たく言い放つ。
「君が拒むなら、私は君の仲間を奪い、山を呪うとしよう」
鷹矢が今までに大切にしていた者―山の精霊、そして共に過ごしてきた天狗たち―全てが消えてしまうのではないかという恐怖に襲われる。
鷹矢は烏丸に立ち向かうが、力の差は圧倒的だった。鷹矢の攻撃を軽々とかわし、次第にその力を増していく。
そして、烏丸は冷徹な口調で
「君が拒否するなら、他の者がその力を使うだけだ」
その瞬間、鷹矢は強烈な痛みを感じ、体が震え始めた。彼の目の前に、同じ天狗たちが次々と倒れていく。彼らは烏丸の呪いによって力を奪われ、動けなくなっていた。
鷹矢は涙を流しながらも、最後の力を振り絞って烏丸に立ち向かおうとするが、その力はすでに限界だった。烏丸は笑いながら、鷹矢に向かって呪文を唱え続け、彼を次第に追い詰めていった。
「君の力は、すでに私のものだ。」
その瞬間、鷹矢は心の中で誓った。もし、どんな犠牲を払ってでも、仲間を、山を守ると。自分の力が失われても、すべてを取り戻すと誓った。
数ヶ月後、鷹矢は目を覚ました。すでに山の精霊の力を完全に失っていた。仲間たちは皆、烏丸に呪われ、力を奪われていた。烏丸の呪いは、山全体に広がり、鷹矢はその呪いを解くために、自らの命を賭けて戦う決意を固めた。
だが、その代償は大きかった。鷹矢は烏丸に一度敗れ、力を奪われ、孤独な時を過ごすこととなった。その後、烏丸は姿を消し、鷹矢は一人で山を守り続けた。
その後、鷹矢は過去を忘れ、孤独に生きる道を選んだ。だが、心の中で彼は常に自分を責め続けていた。もし、あの時、もっと力を振るっていれば、仲間を救えたのではないかと。
そして、彰久との出会いが彼の心を再び動かすこととなった。彰久は、彼にとっては初めての存在だった。過去を背負い、孤独を感じる鷹矢にとって、彰久との絆は、再び力を取り戻すきっかけとなった。