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<かつての親友を>
2024/07/14
目を覚ましたのは、朝七時過ぎの事だった。
窓から差し込む光、僅かに上から聞こえる話し声や鳥の鳴き声。全てに朝を感じ、瞼を開く。
「……んん…」
私はあまり寝起きの機嫌がいい方とは言えない。反対に、悪いとも言えない。つまり、普通ということ。寝たいと思えばすぐにでも寝れるし、起きたいと思えば起きれる。
「…起きなきゃ」
いつもならこのまま二度寝に入るのだが、今日は予定が入っていた為、自分を奮い立たせ半ば無理矢理起こした。
「…………」
いつもと変わらぬ食事を前に、私は手を合わせいただきます、と言ってから食べた。
卵料理が中心なのは別に今に始まったことでは無いし、慣れたから飽きもしない。
でも何故か、最近はこれを食べていると胸が苦しかった。締め付けられるというか、息苦しくなるというか。上手く表現はできないが、どこかで辛いって思っているような、そんな感じだった。
味が不味いわけでも見た目がアレな訳でもない。
「…どうでもいいことなんだけどね」
機械的に食事を済ませ、昨日の夜準備した服を視界の端に捉えた。歩いてそこまで向かう(といっても数歩程度)と、それは 紺色のローブとスカート、真っ白のシャツ、赤色のネクタイ。 アドラ寮指定の制服だった。
「うあー懐かしい…」
数年振りに腕を通したその制服は、軟らかな、春の花の匂いがした気がした。
「シンプルだけどそこがいいんだよなーー…」
汚れが目立たない、黒にも似た紺色のローブ。オルカやレアンとは違い、背中に金色の鷹のプリントがされていること以外は特に特筆すべきこともない、シンプルなローブ。
私からしてみれば楽で好きだから、この先ずっとアドラの寮服はこれがいいとさえ思う。
「えっと、荷物はもう転移したから…私も、そろそろ寮行こうかな…」
時刻は7時半過ぎ。転移魔法を使い、私は地下室にさよならを告げ、これからの住まいとなる寮へと向かった。
✦✦✦
朝の学校というものは、それはもう凄い。
何がって、騒がしさや自由度が昼や夕方に比べて高すぎるのだ。
まだ寝ぼけて居るせいかテンションが高すぎる者も居るし、逆に機嫌が凄く悪い者もいる。
これがあまりにうるさ過ぎて、嫌過ぎて魔法を発動しかけた事が何度もあったのは、今となっては不意に笑ってしまうような、懐かしい過去の思い出話だった。
(なんでこんな人多いの本当に!!!!?、あーもーこんなになるなら最初から変装してくれば良かった!!!)
いや、そう思いたくなるのも仕方ない。
だって、今日が文化祭か体育祭でもありそうな勢いで騒がしい。そしてそれが原因で廊下が人で溢れかえり、私はローブのフードを被りながら歩く羽目になっているのだ。今がまだ涼しい時期だったから良かったものの、これが暑い日や時期だったら私本当に死んでたな。まぁ寮の位置は分かってるんだから、最初から寮まで行けばよかったんじゃないか、なんてことを言ってももうしょうがない。転送ミスをしてしまった過去の自分を恨め。今はただ、寮に早く。
「────────!───…」
(…?なんか、聞いたことのある声)
汗だく、とまでは行かずも、少し顔を汗で濡らした私は聞き覚えのある声を耳にする。
その声の出元を探れば、直ぐに正体は判明した。
「_!!」
私から見て、左前にいる6人組の内の1人。
紫檀色をかなり薄くしたような、薄紫に近い髪色、その髪の隙間から見える白色の瞳、濃緑のオルカ寮の制服。そして極めつけは…目の下に浮かぶ、雫を連想させるくっきりとした2本のアザ。
それは、私がこの学校で1番と言っていいほど会いたくない人物だった。
「……………………っ、」
すれ違う。3秒、7秒、10秒。いくら待っても声は掛けられない。あの声が遠ざかるだけ。魔法は使われてない。つまり、バレなかった。
「…はぁ〜…っ……はぁ…」
…なんか一気に神経使った気がするのは気のせいでないはずだ。
(とりあえず人気のないとこ行って転移しよ…)
_そして私は、この約五分後に寮へと着いた。
✦✦✦
「おお…懐かしすぎる…!!!」
いや本当にもう全てが懐かしかった。
数年前から全くと言っていいほど変わらぬ廊下。木製の扉を開けば懐かしい部屋、家具の数々。まぁといっても、家具は新調されているのかかなり綺麗な見た目。日光が差し込む窓の外には見慣れた、でも少し変わった朝の光景が広がっていた。
変化したものを例として挙げるなら、窓ガラスの強化がされたことぐらいか… いや細すぎるか。
「すご…そっくり前のまんまじゃん…!!」
流石魔法学校のイーストンだ。保存・清掃魔法も完璧ってことか。
「荷解きとかしちゃいたいけど…先に変装魔法掛けなきゃね!バレたら終わるし。」
鏡の前に立ち、杖を自分に向け、呪文を唱える。
すると、一瞬の内にまるで別人のようになった。
普段下ろしている髪は私から見て右側にサイドテールとして全てまとめ、目立つ髪色は深青に。メッシュは黒く染まり、翡翠色の瞳も炭を入れたように段々と黒く滲んでいく。あとは声さえ変えれば完全なる別人の完成である。
でも完全といっても仕草とかもあるだろうし、見る人が見たら速攻で正体がバレるのだろうけど。
まぁ何もしないよりかはこちらの方が気が楽だ。いつも「風の神杖様よー!!!きゃー!!!!」だの「彼奴、風の神杖のライラ・ウィンドじゃないか…!?」だの、廊下の端で最早聞こえすぎて過去が最強だった系主人公が出てくるアニメの第1話みたいなことをされるくらいなら少しくらい魔力が減ってでも変装した方がマシだ。
「…それにしても、びっくりしたなぁ…」
十分ほど前のことを思い出す。
██は_いや、彼がこの学校に在籍している、ということは知っている。確か初等部からだったはずだ。高等部から入学できる編入試験で入った私とは違い、根っからの貴族だったことを覚えている。それも名門中の名門。血を受け継ぐ者は皆超優秀だと謳われる程。実際魔法局に務めている人も結構いるらしい。
「…あの3人の制服、アドラだよね。…███がアドラと関わるなんて珍しいこともあるもんだ。」
まぁアドラなら関わることもあるだろうし、その時になったら色々聞こう。
「…ていうか、あの4人…もしかして、」
前にレインから渡された資料を出す。その資料は全部で十数枚ほどで、そんなに多くは無い。
その中で、5枚の資料が目に付いた。
「…やっぱり。」
そこには、ある5人の生徒の学生証の写真と共に、プロファイリングされてある細かな情報が山ほど載っていた。
肩まで伸ばしてある金髪ストレートヘアの少女、センター分けをしたツートンカラーの少年、水色髪のピアスを付けたイケメン、ツンツン頭のヘアバンドを付けた赤髪の少年…そして、紫檀色の髪色をした彼。
「間違いない。私はこの2人のこと、編入試験の時に見てた。」
その内前者2名は編入試験の時に見ていたことを思い出す。
「名前は…レモン・アーヴィン、フィン・エイムズ、ランス・クラウン、ドット・バレット…そして…、アイル・スローン。」
マッシュ君の近くにいる、現時点で彼の親しき友人だと推察されている人物。
それが、この資料にも載っている5人だった。
学年、クラス、家族構成、寮の部屋番号、身長体重、その他見たら法に触れそうなこと諸々。いやこれあの蜂蜜好きな人の手借りただろと言いたくなるほど、その情報達は細かかった。というか細すぎてもはやプライバシーの侵害だよなこれ…と引いてしまうレベルだ。この人が ストーカーなったら怖いだろうなぁ…
まぁ兎に角、これであの4人の基本情報も記憶できたわけだし、別に怒ってはいないのだが。
「…とりあえず、当面は二人の事だけ観察してたらいっか。あの子は自分で解決しそうだし。」
特に根拠は無い。けれど、今までの経験や勘という不確かな物を頼りにするなら、多分何とかしてくれる、とそう思えた。
「…あ、やばもう授業だ…!!」
自分の中ではほんの数分だった気がするのだが、人間、集中してしまうと時間を忘れてしまうものだ。彼女も例に漏れず、しっかりと時間を忘れて只今遅刻寸前である。
「とりあえず施錠して…鞄持って、…」
行ってきます、と誰に向けた言葉でも無い声を零す。
✦✦✦
「あーやばいやばいやばい…!!」
ライラ・ウィンド_いや、シウ・ルヴィアは廊下を駆けていた。全速力で。
今はあくまでも”イーストンに通うアドラ寮1年生”なのだ。神覚者ではないから、箒で飛ぶと先生に止められそうなので辞めた。が、全力で走るなんて神覚者になってから殆どしていないから体力が落ちている。これなら多少先生に止められても箒で全力…あぁいや全力出したら終わるから3分の1程の魔力を込めて飛ぶんだった、と後悔した。
それにしても、本当にキツイ。確か一時限目は実技だったか。それのお陰でいつもの近い教室ではなくあの広くて遠い森に向かっているのも疲れている原因だろう。
「ぜぇ、はぁ、…も…死ぬ…」
肩で息をする。次第に口にも空気が入り、肺に酸素が回る。思考が冷静になる。
「……えっと、大丈夫かい、?」
膝に手を当て、ぜぇぜぇと息をする少女は、他者から見ればただの疲れている生徒に見えるのか、その生徒に声を掛けられた。
「あ、うん…私は大丈夫…それよ、り…」
言葉を止めてしまった。話していたのに、急に言葉を噤んだ私を彼は不思議そうな目で見つめる。
(…嘘。なんで、だって、今授業じゃ)
その目は見慣れた瞳。白色の瞳。私から見て左が紅、右が紫がかった瞳。_全てが透き通るような、そんな目。
現在困惑一色で塗りたくられた彼の容姿は紛うことなき、アイル・スローン本人だった。
「えっと、大丈夫、…?」
心配するように首を傾げ、紫檀色の短い髪を揺らす。耳元の十字架の耳飾りがふわっと舞う。
「あ…うん。大丈夫。 」
他人行儀な彼を見るのがあまりにも久しくて、思わず冷淡な対応を取ってしまう。
「…えっと、私もう行かなきゃ。授業あるから。じゃあね」
その場から早く離れたくて。彼と居るのが気まずくて。私は足早にその場を去った。
「あ、ちょ…!」
突然走り出した私の全速力には追いつけず、やがて背中に迫る魔力は消える。
私は音速並になるべく早く森に向かい、その授業には何とか間に合ったのだった。
✦✦✦
実技、といっても戦闘面ではそんなに評価されない。
じゃあ何を。答えは単純。この授業で最も加点として目指すべきは、サソリ狩りだ。
もちろんただのサソリ狩りではなく、級硬貨を賭けた、この魔法学校ならではの授業である。
額にある星の色に応じて貰える級硬貨が変わってくるのだが…
「…あわー…」
やってしまった。
いや別に、犯罪を犯したとかではない。
ただ…
「…なんか襲ってきたから倒したら、それが金級硬貨級だとは…」
いやね?確かに確認しなかった私も悪いしら戦ってる時、なんか硬いなーとは思ったよ?でもさ?銀級硬貨と銅級硬貨に相当するサソリしか居ないって聞いてたんだよ私!!(多分聞き逃した)だから金級硬貨なんて思わなかった訳だよ!!
…しかも目の前に落ちている級硬貨の数は3枚。つまり金級サソリを三体倒したということで… 確か試験に参加する条件の一つとして、金級硬貨5枚ってのが入ってたはずなので、神覚者を目指しているのであれば是が非でも取りそうな数である。私は既に神覚者なため、そんなに血なまこになって獲得する必要は無いんだけど。
「…まぁとりあえず持ってようかな…」
ローブの内側にその金色に輝く級硬貨を入れ、森の中を歩く。
もう目的のものは取れたのだから、特に理由は無い。でも勘が歩けと言っているような気がした。こういう時の勘はよく当たるものだ。
「…?」
少し歩いた所で、違和感に気づく。
(…砂埃?それに鉄の…いや、血の匂い?)
あと5mもないくらいの距離。前方からは鉄の匂いが匂う。笑い声と話し声は男のものか。 苦しんでいるような、断末魔のような声も聞こえる。
「…はぁ。」
一応見てみることにした。どうせこのまま終わっても暇だったところだし。
「…え」
草をかき分け、木と木の間から観察する。
そこに広がるは血。先程部屋で資料を見たばかりのツンツンとした赤髪の学生、見覚えのある黒髪のマッシュヘア、どこかで見かけた銀髪の女と眉ピアスの男。
構図は後者1名(眉ピアスの方)が前者2名(といっても受けているのは赤髪の学生だけ)を一方的に傷つけているといったところ。
赤髪の彼は2m以上離れているここからでも分かる多数の打撲に加え、吐血までしているようで、重症なのは見るまでもない。
銀髪の彼女_確か名前はローレン・キャバスだったか_は心配そうにドット君を見つめ、眉ピアスは煽っているのか哀れんでいるのか分からない笑い声で赤髪の彼を見下している。
見覚えのある彼はと言うと、ずっと下に俯いたままで、視線を地面から離さない。
「…どうい」
「4回!!」
「が…ッ!!」
その異質すぎる場面に、私は割って入ろうとする。瞬間、地面から鉄が勢いよく生え、既に傷が見える体を更に壊していく。口からは赤黒い血液が地面へと吐かれる。刺された部分からは薄く血が滲み、それは彼が眉ピアスの魔法によって腹を怪我したというなによりもの証拠だった。
「まだまだ!!」
「ぐぁ、…ぁ…っ…!!」
「5回!」
風が吹き抜ける一瞬、鉄の塊は体を突く。
それと同時に、視界の端には深緑のローブが映り込む。が、あまりにも一瞬すぎたせいでもはやローブかすら分からない。木の葉が舞っただけかもしれない。のに、何故私はローブだと確信したんだろうか。…別に今それを考えても意味は無いのだけれど。気の所為と無理やり自分を納得させ、目の前の状況把握で頭を満タンにした。
眉ピアスに視線を移す。彼の名前はあやふやだが、確かシルバ・アイアンだった気がする。素行不良だが1年の時に金貨2枚を集め、その素質から退学ではなく留年として学校に在籍するクズだ。 その根拠として、今も尚連続でドット君の体を痛めつけている。
「6!!7!!8!!」
学生同士の戦闘は級硬貨の賭け以外禁止されている。となれば、この2人は何か賭けをしているのだろうか。だとしてもこれは可笑しいんだけど。弱者への強者の一方的な弄びにしか見えないし。
「9ゥ!!!」
「ぐぁ…っ!!」
土煙が落ち着き、視界が晴れる。
そこにいるのは、息切れを起こしながらも立つ、彼の姿だった。頭からは血が流れ、制服である白いシャツは汚れまみれだ。
「…バカみたいだろ、…俺だって分かってるぜ」
笑いながら、掠れている声で話す。
こっちからすれば、もう話さないで欲しかった。傷が開く。血がもっと出てしまう。傷が悪化する 。こんなに一方的すぎる状況なら、最悪、死んでしまうかもしれない。ここから出て、早くドットくんの治療をしたい。でも、出れない。今出てしまったら、ドット君のこの傷を受けた意味が消える。それだけは嫌だ。
「でもよ…俺はバカだから…疑いきれねえんだよ……あの子の涙をよ」
その瞳は、真っ直ぐだった。心の底からあの子を守りたいと思っている目だった。
「よく耐えたな…ご褒美に…」
「最後の一発は特大のやつをお見舞いしてやるよォ!!!」
杖を構える。ドットくんに向けられたその先。瞬間、地面から鉄が勢いよく出没する。
「…!!!!」
腹からもろに食らった。見なくてもわかる。あれは学生の賭けの域をとうに超えている。ただの一方的な蹂躙だ。地面にどしゃっと崩れ、そのまま起き上がらない彼。
「残念だった…ァア?」
「嘘…」
私は目を見開く。だって、その事実は。
「10回…終わったぞ」
彼は立ち上がる。頭部からの流血は止まっていない。片目は血で塞がれている。この傷を負って意識を失っていないのが不思議なレベルなのに。
「おい…約束…守ったぞ…」
シルバの方へと歩く。その言葉を言い終わると、今度こそ気絶したのか直ぐさま地面へと倒れる。
「…ハハ、ハハハハハハハハ!!!!」
気分が悪い笑い声だった。その後に罵倒が続く。何となく分かってはいたが、やはり此奴は最初からただいたぶる為だけにドット君と賭けをしていたらしい。何とも悪趣味な人だ。
「キノコ頭…お前はあの子を連れて逃げろ…あとは、俺が何とかす」
「アイアンフィスト」
まだ喋っている途中だと言うのに、彼は人の心がないのだろうか。その魔法はドット君に直撃したようで、地面に赤いシミを増やしていく。
「バカみたい。」
「っ…?」
血を吐き終わったのか、ドット君は息を整えていた。けれど、それが終わった時、ローレンはシルバの横にいた。軽蔑するような表情、蔑んだ瞳。凡そさっきまで守ってくれていた人に対しての態度では無い。
「…………………」
俯くのも無理はない。先程まで身を呈して庇っていた女性から敵意を向けられた挙句、バカにされているのだから。
「ハハハハ…ッ!!」
「っ…は…?」
笑い声が止んだかと思うと、その口にはシュークリームが詰められていた。
「いいかげんにしろよ」
それは、ヒーローが登場する合図だった。
✦✦✦
結果的に、マッシュ君は勝った。
男女平等を掲げた上でシルバとローレン、どちらもぶちのめし、直ぐさま去っていった。
「…マッシュ君」
森を抜ける最中。私は話しかけた。
「…君は…」
シュークリームを食べながら、私の方へと視線を向けてくれる。どうやら会話をしてくれるらしい。良かった。
「あぁ、ごめんね。私はシウ・ルヴィア。マッシュ君と同じ、アドラ寮の1年生だよ。」
偽の名前を教えると、彼も名前を教えてくれた。
「そうだったんだ。僕はマッシュ・バーンテッド。そし」
「あの!!!」
「…えっと、誰かな…?」
敢えて知らないふりをする。本当は名前も寮番号も全て知っているのだけれど。
「あ、俺はドット・バレットと言います!!!」
「…あー、ドット君ね。ありがとう。」
遠慮がちに微笑むと、ドット君は顔面に拳をめり込ませた。
「ツァーッ!!!」
「…????」
「気にしないで。彼は元々こういう人だから。」
いやそれはそれで気になるけど…
「そ、そう…?」
良かった、ちゃんと話せてる。これなら情報も集まりそうだし、友達になれそう。
「あっ!マッシュ君!!お疲れ様ですっ!」
「ん?」
可愛らしい声が聞こえてくる。金髪ミディアムの少女がこちらへと駆け寄ってくるのが見えた。
「あ、レモンちゃん。お疲れ。」
レモンちゃん、と呼ばれた彼女は目をハートにして彼へと抱きつく。彼女いたのか。
「今日もかっこいいですねっ!結婚しましょー!!♡」
しかも結婚前提。
「イケメン死ね3回死ね!!!」
「…えっと、ドット君…?」
「はっ!!!シウさん!!」
私が声をかけると、速攻で機嫌を治すドット君。パッと表情を変える姿は見ていて面白い。
「…あれ?そっちの人はどうしたの?」
黒と金という、つい最近も見た色合いの髪の毛を持つ少年が聞く。
「森を抜ける時に会ったんだ。僕たちと同じ、アドラ寮1年だって。」
「シウ・ルヴィアだよ。よろしくね。」
名前を言うと、その少年に続きその他のメンツも自分の名前を言ってくれた。
「へー!僕はフィン・エイムズ!よろしくね!」
「私はレモン・アーヴィンです!マッシュ君のフィアンセです!きゃー!!」
「俺はランス・クラウンだ。」
「よろしくね、皆。」
私はにこやかに仮面を被る。
「…って、皆さん凄い怪我じゃないですか…!」
全員を見回し、怪我の具合を確かめるレモンさん。
「大丈夫ですか? 」
一応回復魔法も掛けたものの、それでも尚この中で断トツの傷を負っているドット君に駆け寄り、そう聞く。
「……つぁ〜!!!!!!」
その瞬間悶え始める彼。完全に変人のそれだ。
「え!?え!?なんですか!この人!!」
あたふたするレモンさんに助け舟を出そうと、大丈夫かと話しかけた。
「レモンさん、大丈夫ですか?」
「あっ…」
目と目が合い、時間がスロー再生のようにゆっくりと過ぎていく。
(…この人…シウ・ルヴィアさんだったはず…)
(綺麗な髪、目、スタイル…それに加え私にも優しく接してくれて、心配してくれる…清い心の持ち主…)
「結婚してください!!!!!」
体感5秒。レモンさんから出てきた言葉は予想外の上を容易く超えた。
「えぇっ!?!」
「もしくはマッシュ君と私の子供に…!!!」
「えぇえっ!?」
その日から私はレモンさんに求婚&謎の誘いをに受けることになるのだが、今の私にはそんなことを知る由もない。
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