テラーノベル
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#5 夜に溶ける
wki side
グラスに溶ける氷の音さえ特別に思える深夜の時間。
深夜営業の喫茶店「セリーヌ」に、いつものように静かに扉が開いた。
「……こんばんは」
ドアベルの音に呼応するかのように、俺は微笑む。
昨日、彼に告白されてからの初めての夜。
胸の奥はまだ熱く、言葉にならない余韻が残っていた。
「こんばんは、若井さん」
彼の声は、少しだけ柔らかく、でも確かな決意を帯びていた。
いつもの席に座る彼を見ながら、俺は普段通りにナポリタンを炒める。
ジュッ、とフライパンの音が店内に響き、ケチャップと玉ねぎの甘い香りが立ち上る。
「お待たせしました、ナポリタンです」
カウンター越しに皿を差し出す。
彼は小さく微笑み、フォークを手に取った。
当たり前のように時間が過ぎてゆく。でも、いつもとは違う。
心の奥に芽生えた想いが、静かに香りに溶け込む。
ナポリタンを食べ終えた彼に、俺は深呼吸をひとつして、いつもとは違うひとさじの幸せを差し出す。
「お待たせしました……コーヒーアフォガートです」
小さなカップにアイスクリームを盛り、熱いエスプレッソを注ぐと、ふわりと甘い香りが鼻腔をくすぐる。
「……アフォガートはイタリア語で、“溺れた”という意味があります」
言葉を選びながら、俺はカウンター越しに彼の目を見た。
「つまり、その……俺は…っ…貴方に溺れています……好きです、大森さん」
彼の目が一瞬、驚きで見開かれる。
しかしすぐに、柔らかい微笑みが広がった。
「……俺も。好きです、若井さん」
その言葉を聞いた瞬間、胸が温かく締めつけられる。
カウンター越しに手を伸ばし、自然と唇を重ねた。
軽く触れるだけのはずが、互いの鼓動が伝わり、息が少し乱れる。
彼の手が頬に触れ、俺の指先が彼の手のひらを抱き込む。
その温もりに、深く溺れていくような感覚があった。
キスの余韻を残しつつ、俺はふと提案した。
「……よければ、少し、うちに来ますか?」
彼は、少し照れながらもうなずいた。
雨の残る夜道を歩き、俺のアパートに到着すると、カウンター越しの距離とは違う、近すぎる距離に少し戸惑う。
「……メガネ、外しますね」
眼鏡を外すと、視界が少しぼやけ、でも心はすっきりと軽くなる。
彼はそんな俺を見つめ、そっと手を伸ばして頬に触れた。
「……かわいい」
その言葉に、自然と頬が熱くなる。
夜はゆっくりと更けていく。
互いの距離はさらに近づき、自然と抱き合う形になる。
彼の柔らかい手が俺の背中に回り、俺も腕を彼に絡める。
カーテン越しに月明かりが差し込み、部屋の中に静かな光と影が揺れる。
その中で、言葉はいらなかった。触れるたび、互いの存在を確かめ合うだけで十分だった。
夜が深まるほどに、互いの体温が溶け合い、心の奥まで溶かされていく。
眼鏡を外したまま、互いの瞳を見つめ合う。
そして静かに、次の朝まで続くような夜を過ごした。
わぉ
いい感じに終わったけど
続き書こうか迷ってます
コメント
9件
え、最高すぎませんか??もうホントに大好きです♡ 続きが読みたい!!((o(^∇^)o))
んゎ好き〜!続き書いてほしいなぁ! 書き方天才っ あと、我儘だけど表紙描いたやつに変えてほs((
うはぁ…😫😫😫 ちゅーしたぞちゅー!!!!!!やばいその瞬間だけでいいから壁になりたい!! 是非続きを書いてくださいぇっちまでしてもいいんでs ((