そうはいうものの――。
休憩中、携帯電話のメッセージを見て眉間にシワが寄った。
「あー……忘年会かぁ」
行儀悪くテーブルにコテンと突っ伏す。
大学時代の仲良し三人組で毎年年末に近況報告を兼ねて忘年会をしているのだけど、その確認連絡だった。
麻耶《まや》は三人の中で一番早く結婚した。もう五歳の子どももいる。綾音《あやね》と私は長く付き合ってる彼がいて、どっちが先に結婚するだろうねなんて話してたけど……。もう私には彼氏はいないしな。今年は綾音の結婚報告でも聞くのかなぁなんて思ったり。
とりあえず私は別れたって報告しなきゃ。
それを思うとなんか急に寂しいというか焦るというか。
あー、そうだよなぁ。アラサーだもんなぁ。
なにもこんなタイミングで別れることないのに。どうせ別れるならもっと早くにしてよ。ほんと、タイミング悪い。事あるごとにそう思う。少し落ち着きたい。
「結子さんどうしたんですか? 体調悪いです?」
休憩の交代で入ってきた陽茉莉ちゃんに覗き込まれた。陽茉莉ちゃんの人を思いやれる気持ち素敵だなぁ。私にもこんな繊細さがあったらよかった。
「ううん、大丈夫。ごめん、時間過ぎてたね。仕事してくる」
「無理しないでくださいね」
「ありがとー」
手をヒラヒラ振って大丈夫をアピールしてからカウンターに戻った。ちょうど焼き立てのシュークリームが並べられたところ。甘い香りに癒やされる。
「渾身の出来」
厨房から長峰がグッと親指を立てる。
だからドヤ顔するなって。
「食べたい」
「売ってください」
冷たくあしらわれた。
もし売れ残ったら買って帰ろう。
私の体はシュークリームの甘さを求めている。
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