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キーンコーンカーンコーン
そのチャイムの音で重い空気からガラッと解放される 。
帰りのHRの終わりを告げ 、私達は放課後に入った 。
「あ”あぁ ~~~~ … 疲れたぁーっ 」
そう言って私の横で机に突っ伏している人がいる 。
コイツは 、照火 紅蘭( てるひ くれら ) 。
私の親友であり 、小中高との幼馴染 。
「相変わらずですねぇ 、くれ 」
「 だって疲れるじゃん ? 」
カバンを取って 、持ち帰る教科書を詰め込みながら話す 。
あ 、ちなみに「 くれ 」っていうのは 、紅蘭のあだ名というか愛称ね 。
私は黙々と教科書を詰めていると 、くれが「 ん ? 」と声を上げた 。
「 どーかしました? 」
「え 、いや … めも って今日 、委員会の仕事 なかったっけ? 」
くれが黒板の日付を見ながら言う 。
たしかに今日は 火曜日で 、今はその放課後 …
「 … って !? ほんとじゃないですかぁ !? 」
忘れていたことと 、もう既に HR終了後から 5分経ってしまっている驚きで 、
思わず大きな声を上げてしまう 。
図書委員会の仕事は 、図書室の開室・貸し借り・本棚整理を週に一人一回 10 ~ 20分程度行わなければならない 。
私の担当は毎週火曜日放課後 。
つまり今日ってこと 。
本来ならば 、HR終了 5分以内 に図書室についておかなければならないんだけど … 。
その時間も現在時点で2分オーバーしちゃってる 。
「 やっばいので 、お先行きまぁーすっっ!!!! 」
「 なぁーにやってんの、苦笑 まぁ 、また明日 」
くれの声が背後から薄っすらと聞こえたけど 、その声にも構わず図書室へ全力ダッシュした 。
図書室に着くなり 、既に図書室が開いていたことにびっくりする 。
急いで図書室に入ると 、
「 紗緒ぉ !? 」
中にいた意外な人物に再び大きな声を上げてしまう 。
この人は 、桜翡 紗緒( おうひ さお )。
知り合ったのは 高校からなんだけど 、何気しっかりしてて超頼れる 図書委員の委員長 。
紗緒が本の貸し借り場所にいるのを見て 、代わりに仕事をしていたことがわかった 。
「 めもさん 、やっときましたかぁ 。私返したい本があって来てたんですよ 。やっぱり … 仕事忘れてましたね ? 」
「 ほんとすんませんっ … !! 続きは私がやるので … 」
代わりにやってくれてた感謝と 、忘れてしまってた申し訳なさ が込み上げてくる 。
すぐさまカバンを置いて 、紗緒に近づく 。
「 せっかくなんで 、このまま貸し借りやりますよ !! 代わりに本棚整理だけお願いしたいんですけど … 」
「 えぇ … そんな 、でも … 。わ 、分かりました!お言葉に甘えて 。 」
最初は申し訳なく思ったけど 、逆に断るほうが
かえって迷惑な気がしたから言われた通り本棚整理へ向かう 。
本棚の中で横に倒れている本を立てたりとか 、きちんとした場所に直せているかの確認 。
基本的にめっちゃぐちゃぐちゃ 、とかいうのは相当なことがない限りないから 、
特に大変とかはないんだけど 、正直もっときれいに直してほしいっていう呆れはある 。
「 え 、なんでこんなとこに本 ? 」
図書室の奥の方へ行くと 、床に一冊の本が落ちてあった 。
しかも本棚からすこーし離れているため 、わざと置いたりとかしない限りそこには落ちないはず 。
どうして 、こんなところに?
疑問はあったけど 、仕事という義務がある 。
その本を手に取り 、本の背の部分に貼ってある数字のシールを見る 。
えぇ ~ っと 9類だから 、向こう側だっけ …
なんて見ながらゆっくり歩いていると 、
パラッ
一枚の紙が本の隙間からひらりと落ちた 。
「 … しおり ? 」
私の足元近くに落ちた紙を見て呟く 。
本の間に挟まってたってことはしおりかな ?
こういうのも返却前に取っておいてほしいんだけど … と内心呆れつつ紙を拾い上げる 。
拾ってから気付いたけど この紙 、何回かに折られていてしおりとは思えない気がする 。
と疑問と好奇心が湧き出てくる 。
興味本位のあまり 、私はその紙をゆっくり一枚一枚開いていく 。
開いた紙の先はまさかのものだった 。
「 こんにちは 。
お元気ですか ? 」
丁寧な文字で そう書かれている 。
これは … 手紙 ?
文脈的にそう読み取れたけれど 、どうにもおかしな点がある 。
書いた人の名前と 、誰に宛てているのかが書いていない 。
それにこの明らか読みやすいように書かれた文字 …
私がどんどんと推測を立てていくうちに 、ある考えが浮かんでくる 。
でも私はそれについて深く考えることもなく 、すぐに行動に移した 。
「 こんにちは 。
私は元気ですよ 。
あなたも元気ですか ? 」
私なりに精一杯丁寧な字でシャーペンを必死に動かす 。
そう 、お返事を書いてみた 。
私の推測違いだと申し訳ないけど 、この手紙 、宛先は誰でもよかったんじゃないかな 。
だから 、書いても問題はないと思ったけど 。
いいですよね?
書いてからだけど 、少しばかり心配と不安が込み上げてきた 。
けど 、明日や明後日未来のことを想像してみる 。
これから先また手紙が書いてあったら 、楽しいんじゃないかな … ?
秘密でここに通って 、秘密でお手紙を交わす 。
なんかすごいロマンチックで現実味がないけど 、その少ない期待と希望で
さっきまであったであろう心配と不安もサッと消えていったような感覚 。
私は再度紙を本に挟んで 、ちょっと申し訳ないけど不自然なように本を棚に置く 。
これで手紙書いてくれた人に気付いてもらえるかも
そう思ってそっとその場を離れようとした途端 ──
「 めもさぁん 、そろそろ今日の当番終わりまーす!! 」
丁度タイミングを見計らったかのように紗緒が声をかけてくれる 。
図書室に奥の壁にかかっている時計を見ると 、もう図書室に来てから15分近く過ぎている 。
ふと歩きながらも 図書室を見渡すと 、辺りに生徒さんらしき姿はなく
見た感じ室内には 、私と紗緒だけらしい 。
「 紗緒 、今日はほんとにありがとうございました … !! 」
「 いえいえ 、でも次からは忘れないでくださいね! 」
紗緒に言われ 、次こそは忘れないと念を入れて 、カバンを背負う 。
紗緒がカバンを背負い 、鍵を取っているのを見て 、
「 あっ 、色々やってもらったので … 鍵くらいはやらせてください! 」
私は焦って紗緒に近づく 。
私の当番の日なのに本の貸し借りやってくれたし 、私が来れなかったとき開室してくれてましたしから 。
流石に全部任せっきりは申し訳ない 。
「 … そうですね 、お言葉に甘えて!お願いします 。 」
紗緒は少し悩んだ素振りを見せつつも 、頷いてくれた 。
そのまま私達は図書室を出て鍵を締める 。
「 今日はほんとにありがとうございました! 」
「 いえいえ 、それでは鍵お願いしますね! 」
「りょーかいです!!」
そうして 紗緒と別れ 、私は職員室へ向かった 。
鍵を職員室へ返却して 、学校を出た 。
放課後になってから結構経っているので 、下校する周りは人が少ない 。
別に多かろうと少なかろうと別に気にしないからいいんだけど 。
そう考えつつも 、今日の “ 手紙 ” について考える 。
せっかくだし 、明日から放課後 毎日通ってみようかな ?
明日になって書かれていない可能性もあるし 、正直続きが楽しみ 。
毎日秘密で図書室に通って 、秘密の相手との文通 … なんてロマンチックなんだろう 。
なにわともあれ 、明日も放課後に図書室に行こう !!
私はそう心で決めて 、家に向かって走り出した 。