長い時間口を塞がれ、息をすることも忘れそうになったとき麻琴の唇がゆっくり離れる。
大きく息を吸って空気を吸えて解放感を感じると共に、私の唇から離れた麻琴の温もりを恋しく思う。
ベッドに背をつけ見上げる私を見て微笑む麻琴の瞳はここから先どうする? と問い掛けてくる。さっきまで口を塞がれ必死に体内に酸素を取り入れてるせいで頭がぼーっとしているのか、離れた麻琴の唇の感触が恋しいのか霞がかった視界で見つめてしまう。
それを肯定とらえたのか麻琴は私の耳にそっと口を近付けゆっくりと咥えてくる。味わったことのない温かさと音の感触に身を強張らせる。そのまま頬から唇に触れられ首筋から鎖骨を沿うように触れられたとき、体が一層強張って跳ねる。
「弥生ちゃんは鎖骨が感じるみたいだね」
そう言って嬉しそうに微笑んだ麻琴が私の鎖骨を指でなぞると、今まで出したことのない吐息が自分の口から漏れてしまう。息を吸う間もなく麻琴の指は鎖骨からゆっくり下へと降りてくる。
「左より、右の方が好き。撫でるよりもちょっと強めの方が反応がいいかなっ?」
弾む気持ちを押えた声で呟いた後、再び唇を重ねてきて私を見つめる麻琴の瞳に映る私。
頬を赤くし、名残惜しそうに小さく開いた口とトロンとして潤んだ瞳。今までしたことのないであろう表情をしている私自身を見て、体の奥底から溶けるような感覚を覚える。
溶けそうな私を崩れないように優しく掬ってくれてそっと触れてくるのに、そのせいで余計にとろけてしまう悪循環。
「意外に自分のことも分からないもの。他人に触れられて、映されて初めて知る自分もあると思うの」
互いに肌の触れる面積が増えていく途中に掛けられた言葉の最後に「だからお互い知り合って教え合おうよ」と囁かれ、ただでさえとろけ自分の体も保てない感じの微睡だが、ここよりももっと深い場所がある気がして、そこ知らない自分がいるかもしれないという確信のない根拠を確かめたくて頷く。
私の唇に優しく触れる麻琴の唇は言葉の代わりで、どんな言葉よりも私のことを肯定してくれた、そんな気がして私は麻琴のことを受け入れようとまだ強ばる体の力を必死に抜く。
そんな私に優しく触れる麻琴との一時は、気持ちいいだけではなく、苦しさも痛みもひっくるめて全てが心地好くて、ただただこの一時に身を委ね沈んでいく。
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