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こんちゃま。主のさばしおです。
今回の過去編の主役は~~~~颯利ちゃんです。
颯利ちゃんがなぜ寧衣家に入ったのか、そのお話です
では、どうぞ
鈍い音が連続して部屋に響き渡る。
その音の正体は子供が親に殴られ、蹴られている音だった。
子供を虐待している親は「お前なんか生まれてこなければよかった」「役立たず」など叫んでいる。
子供はうずくまりながら声を出さないよう唇を噛んでいる。声を出すとさらに殴られるからだ。
子供が気がつくと親はいなくなっていた。どうやら気を失っていたようだ。多分、パチンコにでも行ったのだろう。
親が出かけている隙に子供は家を飛び出す。
家にいたところで食べるものもない。親が帰ってきたらまた殴られる。そう思い、自分だけが知っている隠れ場所へと向かう。
……………………
隠れ場所につくと、老人が座っていた。
「おや、今日も来たのかい」
子供はコクリと頷く。
老人は子供にパンを渡す。それを受け取り、無言で食べ始める子供。
この老人は子供が親から隠れていた時にいつからかここにいた。名前は知らない。ただ、ご飯をくれるので何も言わない。
「今日も殴られたのか」
子供の傷をみて、老人がつぶやく。打撲痕だけだが、顔や体についた痕は痛々しい。
パンを食べ終えると、老人の隣に座る。ここにいると居心地がいい。
老人は何も言わない。子供も何も言わない。ただただ静かな空間は子供が落ち着ける唯一の場所だ。
「そうだ、これをやろう」
老人は手のひらにものを落とす。それは、手のひらサイズの猫のぬいぐるみだった。
「知り合いに押しつけられたんでな。おぬしにやろう」
子供は手のひらのぬいぐるみを見つめる。初めて人から物をもらった。
老人は子供の表情を見て安堵する。
「うれしいか?」
「((コクリ」
「そうか」
老人が顔をほころばせる。子供の頭をくしゃりと撫で、その場を去っていった。
……………………..
家の前に立つ。帰りたくないが、帰らないと殴られる。
恐る恐るドアを開けると親が立っていた。
「どこに行ってた!!?」
「ぁ…」
「こい!!」
「…!」
…………………
痛い、苦しい。
痛みに耐えるため歯を食いしばる。脇腹を蹴られ、体が転がる。
転んだ拍子に老人から貰ったぬいぐるみが落ちる。
「!」
ぬいぐるみに手を伸ばす。だが、親が拾うほうが早かった。
「あ?なんだ?」
「やっ…」
必死に取り返そうとするが、軽くあしらわれる。
ぬいぐるみをまじまじと見ると、不機嫌な顔になる。
「なんだこれは!?」
大声でそういうと、近くにあった何かの破片を拾い上げぬいぐるみに刺す。
何度も何度も刺し、子供が止めようとするも気づけばぬいぐるみはボロボロになっていた。
親は落ち着き、床に投げ捨てる。
子供が拾い上げるとあちこちから綿が飛び出て、可愛かったぬいぐるみは跡形もなくなっていた。
「…」
大粒の涙がポロポロ落ちる。声を出して泣きたいが、声が出ない。子供はただただボロボロになったぬいぐるみを握りしめていた。
「なんだ、まだ泣いてるのか」
「…」
「そんなもんもう捨てろ!」
「…!((フルフル」
「チッ」
子供からぬいぐるみを奪い取り、窓の外へ投げ捨てる。
いきなりのことで子供も動けなかった。
「ふん、お前もこれで大人しくなるだろ」
自分の部屋へと戻っていく親の後ろ姿を見ていると、何かが切れていく音がする。
なんで私はこいつのために我慢してきた?
なんで私だけがこんな目に遭う?
なんで私はこいつを親と認識していた?
いろんな疑問が頭の中を駆け巡る。
そうだ
壊してしまおう
わたしが不幸になるのなら
…………………
気づけば家の中は赤かった。
足を動かせばぐちゃりと何かが音を立てる。
窓の外に投げ捨てられたぬいぐるみを取りに玄関へ向かう。
気味の悪い音を立てながら歩みを進める。
「だいぶ派手にやったのう」
ここにいるはずのない声が頭上から聞こえてきた。頭を上げるとあの老人が扉の先に立っていた。
老人の手には老人がくれたあのぬいぐるみが握られている。
「嫌な予感がしておぬしにこれを渡したが….」
老人が子供越しに家の中を覗く。
子供は老人の手の中にあるぬいぐるみを見つめている。ボロボロになったぬいぐるみからは黒い箱のようなものが飛び出ていた。
「このまま放っておくのはもったいないしのう」
顎に蓄えられた髭を撫でながら何かを考えている。
そして、何かを思いついたのか子供に手を差し伸べる。
「おぬし、うちに来い」
「…?」
「その力を多少世の中の助けになるように手助けしてやろう」
何もわからない子供はただただ差し伸べられた手にすがることしか出来なかった。
まだ乾いてもいない赤は老人の手を染める。
老人は己の手に乗せられた赤く染まった手をしっかりと握る。
子供は老人に連れられ、この家を去っていく。
どこに行くのかは全く分からない。だが、自分の身に何が起こるのか、少し楽しみにしている無邪気な子供がいた。
はい、お疲れ様でした。
結構話のテンポが早いのでそこを気を付けて書くことが課題ですかね。
書いているときはよくても読み返すとおかしい気がします。
頑張ろう…
では、おつちゃまー