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それにこの美紅って子、どうも言動が時代がかっているというか浮世離れしているというか……俺、本当にうまくやっていけるのかな?
「まあ、とにかく今日はもう遅いし、美紅もはるばる沖縄から来たばかりで疲れてるだろうし。美紅の部屋の用意をして早めに寝ましょ。話の続きは今度の週末にでもまたゆっくりね」
母さんはそう言って美紅のリュックを担ぎ、俺に向かってこう言った。
「雄二。ベランダにある段ボール箱取って来てくれる?」
「あ、ああ分かった」
そう言ってベランダに出ると確かにでかい段ボール箱が置いてある。俺はそれを両手で持って部屋に戻る。なんか妙にずっしりと重い段ボール箱だった。
俺たちのマンションには物置きとして使っていた四畳半の空き部屋がある。そこを美紅の部屋にしたらしい。俺がその部屋に入ると母ちゃんが予備の布団を床に敷いているとこだった。で俺に段ボール箱を床に置いて開けるように言い、美紅の方を向いてこう言った。
「ドアノブのカギのかけ方は分かったわね。念のためにもう一つ、このスライド式のシリンダー錠つけといたからね」
ああ、二、三日前からこの部屋から金槌の音がしてたのはそれか。俺は段ボール箱を開けて中身を取り出し、そしてなんか嫌な予感がした。母ちゃんが中の物を一個ずつ取り出しながら言う。
「で、それでも押し入って来られたら。まずこの竹刀ね。念のため金属バットも用意したけど、これは最後の手段にしてね。さすがに死ぬと困るから。あと、これがこのボタンを押すと警報音が鳴り響く機械で……」
美紅はそれにいちいちこくり、こくりとうなずいている。
「おい!」
俺はようやく事態を悟って母ちゃんに言った。
「一応念のために訊くけどさ……母上さまあ! あなた様は、母親として息子の俺を一体どういう目で見てるんだ?」
「ええー、だって。この子見なさいよ。あたしの血を引いているだけあってこんなに可愛いでしょ?」
「それは認めるよ。母さんに似たのかどうかはともかくな……それで、その大げさな護身用道具の数々はどういう意味かって訊いてんだけど」
「あら、こんなに可愛い年頃の女の子が突然同じ家に住む事になったのよ。たとえそれが血を分けた実の妹で、許されない禁断の行為とは知りつつも……そんなのお約束じゃ……」
母ちゃんが言い終わらないうちに俺は声を張り上げた。
「いい年こいた大人が! それも女が! かてて加えてチューボーの母親が! そんな特殊なジャンルのギャルゲーにハマってんじゃねえよ!」