いつも相手をする女社長たちより、 ミハルのような女の気持ちを高めることは、いとも容易かった。突き放したり、捕まえたり、嫉妬してみたりすればいいだけだ。
感情の振り幅が大きくなればなるほど、俺への依存が強くなる。それは幼稚園児に信号を教えるより簡単なことだった。
たまに返事をしない。心配になったミハルはきっとサイトの中で俺のことを確認する。他の女とはやり取りしていることを見せつける。そうすれば“何故私には返事をしないのにその女にはコメントするの?”なんて嫉妬する。
そうだ、女の感情を操るには嫉妬が大事なキーワードだ。だが、嫉妬しているという事実をあからさまに告げると、離れていくかもしれない。その女なりのプライドがあるから。
そこそこに嫉妬させて、軽く追い詰めて、そして優しい言葉で包むようにコメントをする。
そうやって個人的な連絡先を手に入れて、あとはじわりじわりと俺のことを好きにさせる。
今で言う『沼る』ということか。
こちらからは写真を送ったのに、ミハルからは結局写真は送られて来なかった。
それでも、サイトで知り合って会ったこともない俺のことを(おそらくだが)好きになったらしい、ミハルという女に興味が湧いた。
思惑通り、実際に会うことになった。
___まぁまぁだな
数日後。
約束した駅でそれらしい女を見つけた。なんとなく緊張しているらしいオーラが見える。
飾り立てた女ばかり見てきたから、どこかホッとする見た目だった。毎日ご馳走だとお茶漬けが食べたくなる、あの感覚と似てる。
「翔馬です」
「ミハルです」
まずはコーヒーからと、コーヒーショップに入り簡単に自己紹介をする。それから何時までいられるか時間の確認。
「4時まで?」
頭の中で時間を計算しても、大丈夫だ、そこのホテルなら余裕がある。
初めて会った女に、時間がないからと手抜きのおもてなし(セックス)はできない。きちんと敬意を表して、丁寧に対応しなくては。
恥ずかしそうに俺についてくるミハル。期待してなかったとは言わせない、が、それだけが目的だとも思わせない。
部屋に入っても、カチカチに緊張しているのがわかる女は珍しい。パーティーの夜の女は、酒のせいもあるが自分から服を脱ぐのに。
そんな違いも俺には新鮮だった。