テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
⚠︎・実在の国・人物・歴史・団体とは一切関係ありません。
本作には以下の表現が含まれます。苦手な方は閲覧をお控えください。
・歪んだ愛憎・依存・偏った感情表現・独占欲・執着
・監禁・拘束・薬物使用・精神的支配・流血・軽度の暴力描写
・百合/GL要素(♀×♀)
・軽度のブラックジョーク・皮肉を含む表現
あくまでフィクションとして、耐性のある方・なんでも楽しめる方のみ自己責任でお進みください。
アメリカ×日本です。
地雷の方はUターンでお願いします。
ぎゅうっ、と背後から腕がまわされる。
息が詰まるくらい強く。
だけど、どこか甘ったるい仕草で。
米「なあ日本。あたしのこと、好き?」
…………まただ。
その問いは、もう今日で何回目だったか
思い出せない。
一度返しただけじゃ足りないらしい。
でもそれは、二度でも十度でも同じことだった
(…好き?って聞かれてるのはなんだか必要とされてるみたいで嬉しい。…けど、)
(いつでもどこでもっていうのは流石に…!)
(流石に!!…熱意がありすぎるというか…過剰、というか…なんというか、恥ずかしい。)
(しかも今、仕事中だし…)
このようなことは、別にはじめてではない。
むしろ、最初がいつだったかなんて思い出せないくらいだ。
たとえば、数日前。カフェにいた時も。
米「日本。」
「…?はい?」
米「あたしのこと愛してる?」
「っ?!あ、あいして、 」
米「うん。愛してる?」
「…は、はい。」
みたいなやり取りをしたし、
その翌日も、アメリカさんの膝に急に乗せられて
米「ちゃんとあたしのこと好き?嫌いになってない??」
米「ねえ何で黙るの???好きって言ってよ。はやく〜…」
「…すみません。今、会議の真っ只中です…」
「ちゃんと好きですから…おろしてください。」
なんてことをしてG7メンバーの注目を集めてしまった。
何なら昨日の夜も…
《深夜一時・メールにて》
米「好き?」
米「ねえすき?へんじおそい。」
米「………もしかしてねてる??」
〈送信取り消しされました〉
〈送信取り消しされました〉
〈送信取り消しされました〉
〈送信取り消しされました〉
〈送信取り消しされました〉
・
・
・
米「起きたら返事して」
…朝起きると、通知が五十件以上きていた。
(これは流石に怖かったな…)
ぐい、とおもいっきり腕に力がこもって、はっと我に帰る。
米「ねー日本。聞いてるー??」
「…っ!?す、すみませんっ、」
慌てて振り返ると、いつものようにニコニコしているアメリカさんがいた。
米「で、どうなの??好きなの?あたしのこと。好きだよね?ね???」
これではもう、ほとんど尋問…いや、脅しではないのだろうか。
…でも、嫌いではないから一応返事をする。
「…はい。好きですよ。」
微笑んで、なるべく自然に。いつも通りに返す。
米「よかった、…っへへ、あたしも日本のこと大好きだよ。」
そういうアメリカさんは、あんまりに無邪気で子供みたいな笑顔で。
ああ、よかった。ちゃんと返せたんだな。
そう思って、少し体の力が抜ける。
でも、
その直後に響いた大好きだよ。という言葉はどこか変だった。
甘いはずの言葉なのに、心の奥にずんと沈んでくるようなねっとりとした重み。
その声に、なぜか背筋がひやりとした気がして
(なんだか、こわいな。)
(このままじゃ…きっと私もアメリカさんも壊れてしまう気がする。)
(…共倒れに、なってしまう気がする。)
なんて、思ってしまった。
…いや、気付いてしまった、という方が近いのかもしれない。
_________________________
あれから数日が経った。
けれど、心の奥に残った違和感は消えることなく、むしろ大きくなってしまっていた。
仕事にも集中できなくなって、資料をめくっては眺めるだけの日も増えた。
ご飯も、食べているはずなのに味がしないような気がした。
でも、そんな私のことなんかお構いなしにあの超大国様からは一日何十通…ひどい時は何百通もメッセージが来ている。
“すき?”
“すきすきすきすきすき”
“日本ー!ねえ、すきって言って〜!!”
“ちゃんと好き?”
“いま何してるの?”
“誰といるの?”
“ねー、既読なのになんで返事こないの?”
“……嫌いになった?”
“もしかして本当に嫌いになった?”
〈送信取り消しされました〉
〈送信取り消しされました〉
“……なんでもない”
“でも返事して”
“すき?”
“今すき?”
“昨日よりも、すきになった??”
もちろんこれだけではない。
電話なんか少なくとも一日数百件は来ている。
…これはもうおかしい。
いや元から変だったけど。
世界のヒーローとしての行動力をこんなところで発揮されても困る。
というか、アメリカさんが世界を救う前に私の精神がもたなくなってしまう。
(……いや、まあ…たしかに強いが故の孤独なんてものもありますし。)
(アメリカさんなりに不安なんだな、とは思いますが………)
(このままでは!!私の平穏がなくなってしまう…!)
(ご飯を楽しめないのは特にだめだ…!!)
早急に…早急に対処せねばならない。
というわけで。
「お二人とも、今日はお時間をいただきありがとうございます。」
独「いきなり緊急会議だ、と言われて来てみれば…なんだこれは、」
ドイツさんはテーブルの上の資料と、ホワイトボードに書かれた“アメリカさん対策会議”という文字を見比べながら言う。
伊「えー!!なにこれ!!!会議??お菓子ある??」
「えっ、あ、…お煎餅なら…」
伊「えっ、ほんとに!?!?やったー!!」
伊「ありがとう!!にほん!!」
「ふふ、どういたしまして…」
「じゃなくて!!これは非常に深刻な問題なんです!!」
独「……はあ、それで…アメリカ対策会議とはどういう意味だ…??」
「よくぞ聞いてくださいました!!!」
「まあ、…つまりですね…」
「アメリカさんのスキンシップ…と言いますか、愛の伝え方と言いますか……なんというか、それらが過剰でして…」
「私との心と生活に著しく影響を及ぼしているという話なんですよ…」
伊「…要はアメリカの束縛が異常で困ってるってこと??」
「…い、いや、…まあ、はい。端的に言えば…そうなりますね、」
伊「え〜、そっかあ…日本も大変だね〜」
伊「情熱的なAmoreがいて。」
「…あ、あもーれ??」
伊「うんうん!!そっちで言う恋人的な!」
「…………ちょっっっとまってください。」
思わず大きい声になってしまった。
独伊(ビクッ)
「あ、すみませ、…いやでも!!アメリカさんとは!!断じてお付き合いしておりません!!!!」
「いやほんとに、本当にしてないんです!!なんなら告白だってされてませんし!!!」
伊「…???この前の会議中、あれだけぎゅーってされてて…??」
「電話もメールも通知止まらないくらい毎日連続できてて?」
「ほ、ほぼ毎日どっちかの家でお泊まりしてるって聞いたこともあるし、…」
「で、キスもたまにしてるよね…??」
「ほっぺじゃなくて唇にするやつ。」
「っ!?…い、いや、アメリカさんは女性の方ですし…」
伊「いや女の子でもだよ!?!?」
伊「恋人じゃないのにそんなことするの…??」
「ッ、……」
イタリアさんの純粋すぎるナイフが…
思いっきり、心に刺さった。
独「…イタリア。落ち着け。」
独「日本が羞恥で喋れなくなってる。」
「っ、…ち、ちが…ぃ、や…え、え???」
顔がじわじわと熱くなる。
口はパクパクとして、言葉が出てこない。
伊「あっ、…ごめんねにほん…」
伊「いやでもさ…あれで恋人じゃないって言うのは無理あるよ…???」
「…っ、ぐうっ、」
追加で刺すのはやめていただきたい。
というか、告白されてないんだから付き合ってるはずがない。
(…あ、)
「どっ、ドイツさんは!?!?ドイツさんはどう思いますか!?!?!?」
独「………」
ドイツさんは、眉を顰めてちらりと私から目を逸らした。
「い、今のは肯定だったり、しますか…??」
独「…いや、ただ、」
独「まあ…正直に言えばその…少なくとも恋人ではない。…と言い切れる根拠は…乏しい。」
「っ〜〜〜〜〜〜っっっ!!」
本当に、終わった。
顔から火が出るどころか、もはや全身の血の気が引いてしまっている気がした。
そんな私を見て、ドイツさんもイタリアさんもオドオドしてしまっている。
きっと、どう声をかけるべきか迷っているのだろう。
三人が黙って、ただ冷房の音だけが響いている。
そんな中、一番先に口を開けたのはドイツさんだった。
独「……日本、はっきりさせた方がいい。」
「………」
独「君がアメリカの態度を嫌だと思っているのなら、曖昧な態度で受け入れたままにするのはむしろ相手を誤解させるだけだ。」
「…………でも、アメリカさんだって、」
独「…それが、たとえ好意であったとしても、君の負担になっているのなら断るべき理由には値すると思う。」
伊「……うんうんっ!にほんが一番幸せになれる選択をすべきだと思うっ!!」
伊「どっちかが重すぎたら、うまくいかなくなっちゃうから、ね。」
どこか揺れるような笑顔でそう言うイタリアさん
独「…嫌なら、拒否しろ。ちゃんと、言葉にして。」
真剣に、こちらに目を合わせて言うドイツさん
二人に言われた言葉が、頭の中で永遠と反芻する。
誤解、負担、幸せ、拒否。
そんなこと、わかってるつもりだった。
でも、…でも。
「…」
口を開きかけているのに。何も音が出てこない。
(…きっと、好き?って聞かれるのも嫌じゃなかった。)
(必要とされてる気がして、…こんなダメな自分でも、求められてるような気がして。)
(でも、それなのに、なんで私はこんなに悩んでるんだろう。)
(好きって言うたびに、言われるたびに、…胸が張り裂けそうなほど痛くなるんだろう。)
(触れられる所が、冷たかったんだろう。)
(いつの間にか、ご飯も味がしなくなって)
(メッセージがきても、素直に喜べなかったんだろう。)
それは、きっと…
「…………」
「…好き、なんです。」
ぽつり、とこぼれた声は部屋の中に大きくこだまして、自分でも少し驚いた。
独「…」
伊「に、にほん??」
「アメリカさんのこと、きっと好きなんです。私。」
「でも、だからこそ。」
「伝えなきゃいけないことが、あると思うんです。」
私が今、苦しいこと。
伝えるのは怖いけど、それよりもこのまま壊れてしまう方がよっぽど怖い。
「アメリカさんと、ちゃんと向き合います。」
「私の気持ちも、限界も、全部伝えます。」
「このままはきっと、お互い良くないから。」
小さい声でも、ちゃんと言い切った。
すると、イタリアさんもドイツさんも安堵したような顔して頷いてくれた。
「お二人とも、わざわざありがとうございました!!」
私はそう言って頭を下げ、部屋から出ていった。
とまあ覚悟を決めてアメリカさんを呼び出したわけですが…
あった途端から抱きしめられて話が進みません。
米「…んふふ、ふふ、ちっちゃ〜い…かわいい、好き…」
「んっ、ぅ、ぶ、…」
息が詰まりそうになる。力が強いんだから本当にやめていただきたい。
米「日本から呼んでくれるなんて嬉しいなあ…いっつも私からだもんね。」
米「どうしたの?…も、もしかしてプロポーズとか…??」
ちょっと待ってくれ。とりあえず離して欲しい
「ん〜っ、」(とんとんっ、)
なんとかアメリカさんの背中を叩く。
そしたら気づいてくれたのか、パッと手を離してくれた。
「はーっ、はっ、…ぁ、ありがと、ございます…」
「そ、それで…話の本題なんですが…」
「…最近、何度も好きか?って聞かれますよね…??」
米「うん。」
「その、それが少し…過剰で、困っていると言いますか…」
「い、一日に何百件もメールや電話が来たり、会議中も構わず好きと言われるのは…なんというか、対応しきれなくて…」
「すこし、控えてほしいなって、お願いです。」
米「……ぇ、」
「あっ!?その、嫌いになった、…とかではなくて…私は…あの、アメリカさんのこと好きだと思っていますので…そんなに、確認されなくても気持ちは変わらないんです。」
なんとか、説明し切った。
きっと顔は真っ赤だし、しどろもどろだったけど。
その達成感で、少し満足感に浸ってしまう。
でも………
そんな満足感もすぐに途切れてしまう。
米「…でもさ、急に嫌いになるかもしれないじゃん。」
????何を言ってるんだこの国は。
でも、そんなふうに言われると自信がなくなってしまう。
「ぁ、えと、…その、」
「……可能性としては、ゼロではない………ですが、」
「でも、私はそう簡単に誰かを嫌いになったりしないので!!」
米「…可能性はあるじゃん。」
米「嫌なんだよね。そういうの。」
米 「というか、日本の態度が変わっちゃうのがやだ。」
「??」
米「そんなつもりなくても、いつもより目を合わせてくれないとか…返事が遅いとか。」
米「そうなったらあたしほんとに、…ほんとに無理なの。」
米「…なんというか、すっごく不安になって心臓ぐわーってなって、頭も痛くなって、目眩もして…」
米「で、そのまま泣いちゃう。無理。きつい。」
思ったより深刻だな…
というか、そこまできたら病院に行くべきでは…???
米「だから聞かないのは無理。」
米「一時間に一回は確認しないと頭おかしくなる。」
アメリカさんは、妙に真剣な表情でそう言う。
「ぇ、ああ……でも、」
(でも、…というか)
(それなら尚のこと、距離を置くべきではないのかな…)
(…というか、お互いのためにって話してるんだから…ちゃんと最後まで言うべきだよね…)
「で、でも!!」
アメリカさんが細めた目をもう一度こちらに向け直す。
米「…うん?」
「…やっぱり、少し時間をおくべきだと思います。…このままじゃ、だめな…気がするので…。」
お互いの間に、沈黙が流れた。
部屋の空気が一瞬止まったような気がした。
アメリカさんの顔を見るのが怖かった。
米「……そ、っか、…そうだよね、」
米「うん、わかった。」
そう言うアメリカさんの声は、思っていたよりあっさりしていた。
納得してくれて嬉しいはずなのに、…
なんだか、こわかった。
米「…じゃあさ、」
米「あたしが不安にならなきゃいいんだよね。」
「……え、」
どうやら、納得してくれたわけではないらしい。
何を言っているか、全く理解できなかった。
米「そうすれば、何度も好きかどうかなんて聞かなくて済むし。…日本も、困ったりしない。」
米「…うん、そうだね。それが一番いい。」
勝手に納得したような顔をしている。
正直、話が通じない化け物みたいな怖さを感じた。
そして、アメリカさんは一拍置いてまた話し出す。
米「………あたし、いい案思いついたかも。」
その目は、笑っているはずなのに。
いつもの陽気な笑顔のはずなのに。
声だけが、すごく冷たい気がした。
_________________________
あれから数日が経った。
…だけど、不思議なくらい何も起こらない。
あれだけ来ていたメッセージも、電話も来ていない。
いつもなら一時間に十回は「すき?」という通知がなるはずなのに。
それに、アメリカさんに会うことも無くなった。
どちらかの家に泊まる…なんてことも無くなったし、そもそもアメリカさんの姿を見ることすら稀になった。
はじめは、わかってくれたのかなって思った。
でも、それにしては会わなさすぎて。
必要なことすら直接伝えられなくなって。
なんだか、自分から距離を取ったはずなのに。
本来の距離はこんなものなんだと少し悲しくなった。
_________________________
米「日本っ!!…元気してた? 」
ぎゅーっ、と背後からきつく抱きしめられる。
久しぶりに、アメリカさんから話しかけられた
一週間ぶりくらいだろうか。
米「最近全然話せてなかったね〜…ほんと寂しかったよ〜 」
アメリカさんは、全くと言っていいほど変わっていなかった。
前話したとき、あんな別れ方をしたのに。
まるでそのことがなかったみたいに関わってきて、少しびっくりした。
「ぁ、えと、お久しぶり…です。」
米「…あれ、日本…緊張してる?」
米「もっと肩の力抜いていいんだよ〜?」
米「まーでも久しぶりだもんね!…仕方ないかあ…」
米「……ていうか日本、顔色悪いね〜…」
心底心配そうにそう言うアメリカさん。
そう、見えるのだろうか。
…確かに、最近は寝付きが悪かったかもしれない。
「…あ、あはは…そうですかね…??」
米「うん。かなり真っ青。…大丈夫?」
「は、はい。…だいじょうぶ、です。」
米「えー?ほんとにー?……あっ!…そういえばさっき自販機で飲み物買ったんだ〜!!」
米「めちゃくちゃ甘いやつ!…疲れてる時は糖分摂るといいらしいからさ!!」
米「はいっ!これあげる!!」
そう言ってアメリカさんは、何かのペットボトルの封をあけてこちらに差し出してきた。
…どう考えても、青すぎる。
蛍光ペンをそのまま溶かしたみたいな色をしていて、明らかに不健康そうだった。
「…あ、ありがとうございます…」
でも、人の好意を無碍にするのはなんとなく失礼な気がして
少し躊躇したけど、一口だけ飲んでみた。
米「どう?美味しい??」
「…ん、…少し甘いけど、ブルーベリーみたいな味で美味しいです…」
米「へへ、口にあったみたいだね…よかった。」
そう言ってアメリカさんは明るく笑う。
よかった、変なものじゃなかっ、
そう思った瞬間、頭の中でぱんっと何かが弾けたような気がした。
「ぁ、え、…?」
体の力が抜けて、立っていられない。
呂律も回らなくて、声を出そうとしても意味のない音しかでてこなかった。
米「…あれ、…やっぱり限界だったんじゃん。」
米「早く言わなきゃ。そういうの。」
そう言って優しく支えてくれるアメリカさんの言葉を、否定できなかった。
なんで、こんなに優しいふりができるんだろ。
そんな疑問も持てないまんま意識はぷつんと途切れてしまった。
_________________________
目が覚めると、見覚えのない天井があった。
布団はふかふかで、部屋はまるで高級ホテルの一室みたいだった。
立ちあがろうと思って体に力をこめると、
どこからかがしゃ、と妙な金属音がした。
「…へ、?」
音の鳴る方を見ると、そこには手錠が付いていた。
「…なに、これ、?」
よく考えると足も動かせない。
なんで、なんでなんでなんで、
一気に眠気が吹き飛んで、混乱が頭を支配する。
なんとか部屋を見渡すと、
壁には大きなテレビと飾り棚。
サイドテーブルにはグラスとお茶。
窓には分厚いカーテンがかかっていて、陽の光は入ってくるのに景色は見えない。
部屋の隅には、まるでこちらを見下ろすように防犯カメラのようなものがついていた。
「…?…??…と、とりあえず、ここからでなきゃっ、」
そう思って起きあがろうとした。
けど、拘束具が邪魔で起き上がれなかった。
逃げなきゃ、ここから離れなきゃ、
そんな焦りだけが降り積もって、
ガシャガシャと手錠を鳴らしていた時
がちゃ、とドアノブがゆっくりと回った。
米「Good morning. 日本!」
米「爆睡だったね〜。やっぱ疲れてた〜??」
米「っていうか、そんなに腕動かしちゃ危ないよ?…怪我しちゃう。」
目の前に現れたのは、いつもと変わらない笑顔の、わたしが知っている通りのアメリカさんだった。
でも、目だけがまるで深海のように真っ暗で
そのアンバランスさが少し…いや、とても怖かった。
「…ぁ、あめりか、さん?」
「な、なにこれ、…なんですか、これ?…どういうこと、ですか」
「手錠とか、これ、なんでっ、」
「ていうかここどこですかっ、…アメリカさんの家じゃない…ですよね?」
「何が…何が目的ですか、」
米「あは、たくさん喋るね?……そんなに急がなくてもいいよ。ちゃーんと一個ずつ答えるからさ。」
アメリカさんはそう言って、まるで世間話でもするかのようにわたしの隣に身を寄せた。
米「えーっと、…まずは…。
ここがどこか、って話だっけ。」
米「ここはね〜…えっと、…」
米「…まあ、日本とあたしの愛の巣♡…的な?」
何を言ってるんだこの国は 本当に
…こっちは真剣なのに。
米「あははっ、ちょっとふざけすぎた?」
米「ま、ここがどこかなんてどうでもいいじゃん。…どうせ出られないんだから。」
なんでもないようにそう言うアメリカさんが、あまりに怖かった。
米「で、えっと…次の質問ってなんだった?」
「……な、なんで…こんなことしたんですか?」
米「…あー、えっとね…まあ簡単に言えば…」
米「これが一番、お互い幸せになれるから…かな?」
「…??」
米「だって日本、恥ずかしがり屋だからさあ…人前であたしのこと好きかどうか聞かれるの嫌なんでしょ?」
米「でもあたし的には聞かなきゃ不安になるから聞かないってのは無理な訳。」
米「だから日本のことここに閉じ込めた!」
米「そうしたら、あたしも不安にならないし!日本とずっと一緒にいれて幸せだし!!」
米「てか、そもそも日本もあたしのこと好きなんだよね?…じゃあいいじゃん。」
米「あたしのとこに嫁いできたってことにしよーよ!!」
米「…あ、一応プロポーズとかして欲しい? 」
勝手に全てを進めるアメリカさん。
そこにはわたしの感情なんて、少しも考慮されてなかった。
「……」
米「…あ、やっぱして欲しい??そうだよねー、日本も女の子だもん!」
米「かわいいなあ、じゃあ指輪取ってくるね。」
無言すら肯定と受け取るアメリカさん。
嗚呼、なんかもうだめだ。
ここから、どうにかなる気がしない。
(…そもそも、わたしもアメリカさんの方が好きだからあれだけ悩んでたんだよね。)
(なら、いいかもしれない。…お互い不安にならない、ずっと安心して生きていけるなら。)
(きっと、アメリカさんほどの超大国に守ってもらえるなんて、好きになってもらえるなんて…これ以上ない幸せなんだろう。)
(なら、もういいかな。…無駄な抵抗は破滅を呼ぶだけだ。)
(…というか、元々アメリカさんがいないと生きていけなかったし。)
そう思ったところで、アメリカさんがにこにことしながら戻ってくる。
手には、赤い薔薇の花束と小さな箱。
わたしは、無言でそれを見つめる。
すると、アメリカさんはわたしの手錠を外して床に跪き、指輪を差し出した。
米「へへ、…日本。」
米「…Will you marry me?」
英語か…なんで返せばいいんだろう。
「…いえす?」
とりあえずそう返すと、アメリカさんは目をキラキラさせて、思いっきり抱きついてきた
どうやら正解だったそうだ。
米「…っ、…っっ!!…やったーー!!!!
日本大好きっ!!愛してるっ!!」
米「一生一緒だよ、…離れないでね、……あたしのこと、不安にさせないでね。」
「…もちろんです。」
嗚呼、なんか。
もう、どうでもいいや。
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