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リン@元リオ
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雛
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かは
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10
――嘘も真実も、選ぶのは僕ら。
この国には、六人の王子がいた。
紫、桃、赤、青、黄、緑。
それぞれ違う色の衣装を身にまとい、毎晩、豪華な城の舞台に立つ。
観客は彼らを見て笑い、歓声を送る。
「今日も最高のショーを!」
「六人の王子様!」
「もっと笑って!」
六人は、いつだって笑っていた。
笑うこと。
手を振ること。
決められた場所に立つこと。
決められた言葉を言うこと。
それが、彼らの仕事だった。
「……なぁ」
舞台裏。
紫色の髪の青年――いるまが、小さく呟いた。
「俺たちって、本当に王子なのか?」
誰も答えなかった。
赤い髪の暇72が、壁にもたれながら目を細める。
「さあな」
「……なんだよ、それ」
「俺らが王子だって言われてるから、王子なんじゃね?」
暇72は笑った。
けれど、その笑顔はどこか寂しかった。
その隣で、青い髪のこさめが舞台の方を覗き込む。
「でもさ……」
「ん?」
「王子様って、もっと自由じゃない?」
その言葉に、六人は黙った。
自由。
その言葉を、彼らは知っていた。
けれど、知らないふりをしていた。
六人の控室には、六つの椅子が並んでいる。
その椅子には、それぞれ名前が刻まれていた。
「いるま」
「LAN」
「暇72」
「雨乃こさめ」
「すち」
「みこと」
けれど、その名前の下には、もう一つの文字が刻まれている。
JOKER
それが六人に与えられた役だった。
この世界では、王子ですら駒。
国を盛り上げるための駒。
観客を楽しませるための駒。
笑顔を作るための駒。
そして――
命令された通りに動く、操り人形。
ある夜。
いつものように六人は舞台へ向かった。
扉が開く。
眩しい光。
大きな歓声。
「王子様ー!」
「こっち向いてー!」
「笑ってー!」
六人は笑った。
いつものように。
けれど。
その瞬間だった。
舞台の天井から、何かが落ちてきた。
カラン――。
床に落ちたのは、一枚のカード。
黒いカードだった。
そこには大きく、
JOKER
と書かれていた。
みことが拾い上げる。
「……これ、何?」
すちが覗き込む。
「裏、何か書いてあるよ」
カードを裏返す。
そこには、たった一言。
『お前たちは、本当に自由なのか?』
六人の笑顔が止まった。
その夜。
誰も眠れなかった。
「自由……」
みことが呟く。
「僕たち、自由じゃないのかな」
すちは答えなかった。
こさめが窓を開ける。
外には、広い街が広がっている。
けれど。
城の外へ出たことは、一度もない。
「……出てみたい」
こさめが言った。
「外に?」
みことが聞く。
「うん」
こさめは笑った。
「僕たちが知らない世界を見てみたい」
その言葉に、LANが立ち上がった。
「だったら、行こう」
「……え?」
「一度くらい、自分たちで決めてもいいだろ」
その瞬間。
部屋の扉が開いた。
六人は振り返る。
そこに立っていたのは、王国の支配者だった。
「どこへ行く?」
低い声。
誰も答えない。
「お前たちはJOKERだ」
「この国を盛り上げるために存在する」
「それ以外の生き方など、必要ない」
その言葉を聞いて。
いるまが初めて、笑った。
「……ふざけんな」
「いるま?」
「俺の人生を、勝手に決めんなよ」
空気が変わった。
暇72が立ち上がる。
「俺も同感」
こさめも続く。
「僕も」
すちが笑う。
「僕だって、自分で決めたい」
みことも頷く。
「僕たち……ずっと誰かの言う通りにしてきたもんね」
最後にLANが前へ出た。
「だったら、ここで終わりにしよう」
その瞬間。
城中の鐘が鳴り響いた。
「反逆者だ!」
「王子たちが逃げたぞ!」
無数の足音が近づいてくる。
六人は走った。
廊下を。
階段を。
誰も使わない古い通路を。
そして、たどり着いたのは城の一番高い場所。
そこには、大きな扉があった。
その扉には、
『一度出れば、二度と戻れない』
と書かれている。
こさめが扉に手を伸ばす。
けれど、止まった。
「……怖い」
「そりゃ怖いだろ」
暇72が言った。
「今までずっとここにいたんだから」
「戻った方がいいのかな」
こさめが俯く。
すると、みことが手を差し出した。
「一人じゃないよ」
こさめが顔を上げる。
「六人いる」
すちも手を重ねる。
「うん」
暇72も。
いるまも。
LANも。
最後に六人の手が重なった。
「行こう」
LANが言った。
「僕らの人生を、僕らで選ぶために」
扉が開いた。
外は、驚くほど静かだった。
城の中とは違う。
歓声もない。
音楽もない。
誰も彼らを見ていない。
誰も彼らに笑顔を求めない。
ただ、風が吹いていた。
「……なんか変な感じ」
みことが笑う。
「誰も俺らを見てねぇ」
いるまが空を見上げる。
「でも……」
暇72が続けた。
「悪くないな」
六人は歩き始めた。
王子としてではなく。
JOKERとしてでもなく。
ただの六人として。
しばらく歩いたところで、こさめが立ち止まった。
「ねぇ」
「どうした?」
すちが振り返る。
こさめは、城を見つめていた。
「僕たち……本当にこれでよかったのかな」
その問いに、誰もすぐには答えられなかった。
城に戻れば、何も考えなくていい。
言われた通りに生きればいい。
失敗することもない。
嫌われることもない。
けれど。
自分の人生を生きることもできない。
LANが静かに言った。
「たぶん、正解なんてないんだと思う」
「……正解?」
「うん」
LANは笑った。
「誰かに決めてもらった正解より、自分で選んだ道を正解にしていくんだよ」
六人は顔を見合わせた。
そして――
歩き出した。
何年か経った。
あの城は、もうない。
正確には、建物自体は残っている。
けれど、そこに六人の王子はいない。
街では今でも、時々こんな噂が流れる。
「昔、この国には六人の王子がいたらしい」
「すごく人気だったんだって」
「でも、ある夜突然消えたんだって」
「どうして?」
「さあ……」
誰も知らない。
六人がどこへ行ったのか。
何をしているのか。
ただ。
ある小さな町の劇場では、毎年同じ日に六人の青年たちが舞台に立つ。
王子の衣装ではない。
決められた台本もない。
誰かに命令されることもない。
六人が自分たちで作った舞台。
最後の曲が終わる。
観客から大きな拍手が起こった。
六人は顔を見合わせる。
そして笑った。
昔のような、作られた笑顔じゃない。
心からの笑顔だった。
「なぁ」
いるまが言う。
「俺たち、あのとき城を出てよかったな」
「うん」
こさめが頷く。
「だって今は、自分でここに立ってるもん」
みことが笑う。
「誰かに選ばれた場所じゃなくてね」
すちが続ける。
「僕たちが選んだ場所」
暇72が空を見上げる。
「……JOKERって、悪くないかもな」
LANが笑った。
「でも、もう誰かのJOKERじゃない」
六人は舞台の中央に並んだ。
それぞれ違う色。
それぞれ違う声。
それぞれ違う人生。
だけど。
同じ場所に立っている。
誰かに決められた運命じゃない。
誰かに作られた物語でもない。
自分たちで選んだ、たった一つの未来。
六人は観客へ向かって手を伸ばす。
そして、最後にこう言った。
「――次の物語を決めるのは、僕らだ。」
幕が下りる。
暗闇の中。
六つの光だけが残った。
まるで、もう二度と誰にも操られないと誓うように。
JOKER×JOK3R。
それは、
「偽物の王子」だった六人が、
本当の自分になるまでの物語だった。
コメント
1件
ああ、もう、めっちゃ良かった……! 六人の王子が「操り人形」から抜け出して、自分たちで人生を選ぶ話、すごく心に響きました。特に「一度出れば戻れない」って扉の前で、こさめが怖がったときにみことが「一人じゃないよ」って手を差し出したシーン、泣きそうになった。あの六人の絆が一気に感じられる瞬間だった。 最後の舞台、自分たちが選んだ場所で、心からの笑顔で立ってる姿が本当に美しくて。JOKERはもう誰かのための偽物じゃないんだって思えた。 この作品、好きです。ゆあさんの紡ぐ言葉、ちゃんと受け取らせてもらいました。🌙