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伊織
22
#マフィア
ゆあ
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ころさな
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いるまとなつは、昔から相棒だった。活動を始めた頃から、何をするにも一緒だった。
練習のときも、収録のときも、自然と隣にいる。
なつが笑えば、いるまも笑う。
なつが困っていれば、いるまが先に気づく。
それが二人にとっては当たり前だった。
けれど最近、少しだけ変わったことがある。
「らん、聞いてほしいことがあるんだけど」
なつが、らんに向かってそう言った。
「いいよ。どうしたの?」
「俺、らんならなんでも話せる気がするんだよな」
なつは、安心したように笑っていた。
その言葉を聞いた瞬間、いるまの胸がざわつく。
らんといるまは仲がいい。
くだらない話もできるし、相談をすることだってある。らんが大切な仲間であることに変わりはない。 それでも、なつがらんにだけ見せる表情が気になった。
自分には話してくれないことを、らんには話している。
自分ではなく、らんを頼っている。
その事実が、いるまには苦しかった。
「いるま、今日一緒に帰らね?」
帰り際、なつが声をかけてきた。
いつもなら、すぐに頷いていた。
けれど、なつの隣にはらんがいた。さっきまで二人で話していたことを思い出して、いるまは目をそらす。
「悪い。俺、こさめと配信のことで話したいことあるから」
「….そっか」
なつの声が、少しだけ沈んだ。
いるまは気づかないふりをして、こさめのほうへ歩いていった。
それから、いるまは少しずつなつを避けるようになった。
話しかけられても短く返す。
隣に座らない。
なつがらんに相談していると、別の場所へ移動する。
自分でも、幼稚なことをしていると思っていた。
でも、嫉妬を止められなかった。
「いるまくん、なつくんと何かあった?」
ある日の休憩中、こさめが尋ねた。
「何もねえよ」
「でも、最近ずっと避けてるじゃん」
「避けてねぇって」
強く言い返したものの、こさめは困ったようにいるまを見つめた。少し離れた場所から、すちが心配そうに2人を見ている。
「まにきは、なっちゃんのこと好きなん?」
みことがすちの後ろから顔を出して聞く。「….は?」
心臓が跳ねた。
「何言ってんだよ」
「だって、なっちゃんがらんらんに相談してるとき、すごく気にしてるじゃん」
「気にしてねえ」
「他のメンバーと話してるときも、ちょっと怖い顔してるよ」
「……」
何も言い返せなかった。
らんは、いるまにとっても大切な仲間だ。
仲がいいし、くだらない話もできる。らんのことを嫌いなわけでは絶対にない。
だからこそ、なつがらんを信頼していることが嬉しいはずだった。
「俺は、なつの相棒だったんだよ」
気づけば、声に出していた。
「ずっと隣にいた。なのに、今はらんに何でも話せるって言って、こさめ達とも死ぬほど仲良くて…俺のことなんか、もう必要ねぇのかなって」
言葉にすると、情けなくて仕方がなかった。
「そんなこと、本人に言えばいいのに」
らんの声がして、いるまは勢いよく振り返った。
いつからそこにいたのか、らんが廊下の入口に立っていた。
「 …聞いてたのかよ」
「ごめん。でも、聞こえちゃった」
らんはゆっくりと、いるまの隣まで歩いてくる。
「いるま、俺はなつの相談相手ではあるけど、なつの一番になりたいわけじゃないよ」
「なつが俺になんでも話せるって言うのは、たぶん、いるまのことを相談してるから」
「俺の…?」
らんは小さく頷いた。
「なつは、いるまが最近自分を避けている理由を知りたいって悩んでた」
いるまの呼吸が止まる。
「俺、嫌われたのかなって。何かしたのかなって。 ずっと気にしてたよ」
「なつが..?」
「うん。いるまのことが大事だから、余計に不安なんだと思う」
信じられなかった。
なつは、いるまから離れていったわけではなかった。
いるまが勝手に離れただけだった。
「それに、俺がいるまに相談されてるのも、なつは気にしてたよ」
「え?」
「いるまが俺と話してると、なつも少し寂しそうな顔をするんだ」
らんは、どこか呆れたように笑った。
「二人とも、相手のことばっかり気にして、自分の気持ちを全然言わないんだよね」
その言葉が、胸に刺さった。
その夜、いるまは一人で帰ろうとしていた。
玄関を出たところで、後ろから名前を呼ばれる。
「いるま!」
振り返ると、なつが走ってきた。
「 …..なつ」
「やっと見つけた」
「何だよ」
「話したい」
なつは息を整えながら、いるまの前に立った。
その顔は、いつもの明るさがなかった。
「最近、俺のこと避けてるだろ」
「避けてねえよ」
「またそれ言うのかよ」
なつは苦しそうに笑った。
「俺、何かしたなら言ってくれ。いるまに嫌われるのが一番きつい」
その言葉を聞いた瞬間、いるまの中で何かが崩れた。
「 ….嫌ってねえよ」
「じゃあ、なんで離れるんだよ」
「…お前が、らんに何でも話せるって言ったから」
堪え切れない涙が溢れる。
「それに、俺以外のメンバーともめちゃくちゃ仲良さそうだから…お前の隣には、もう必要ねえのかと思った」
なつが目を見開く。
「いるま、それは…」
「分かってる。らんは俺にとっても大切だし、メンバーが大切なのも知ってる。だから、そんなことで嫉妬する俺がおかしいんだよ」
止めようと思っても、涙と言葉が次々とこぼれていく。
「でも、嫌だった。お前が俺じゃない誰かに一番大事な話をしてるのが。俺が知らない顔で笑ってるのが。…ずっと、俺だけがお前の特別だと思ってたから」
なつは、しばらく黙っていた。
やっぱり、引かれたのかもしれない。
そう思って、いるまが視線を落としたときだった。
「俺は、いるまが好きだ」
あまりにも真っ直ぐな言葉だった。
「 ….え?」
「相棒としてだけじゃない。俺は、いるまのことが好き」
なつの耳が赤くなっている。
それでも、目だけはそらさなかった。
「らんに相談してたのも、いるまのことだ。
…最近、いるまが俺を避けるから。嫌われたのか、何かしたのか、どうすれば前みたいに戻れるのか…. ずっと聞いてた」
なつは苦しそうに眉を下げる。
「俺、いるまに何でも話せると思ってた。でも、いるまに嫌われるのが怖くて、本人には何も言えなかった」
「….馬鹿だな」
「お前に言われたくねぇよ」
2人の間に少しだけ静かな笑いが生まれた。
「みんな大切な仲間だ。メンバーとして一緒に過ごすのも楽しい。けど、いるまは違う」
「どう違うんだよ」
「いるまが隣にいないと…不安になる」
なつは、ゆっくりといるまの手を取った。
「いるまとなら、何も話さなくても安心できる。どれだけ離れても、最後には戻れるって思ってた。でも、実際に離れられたら、怖くて仕方なかった」
握られた手が熱い。
昔から何度も触れてきた手なのに、今は全く違うものに感じた。
「俺も…なつが好きだよ」
いるまは、ようやく言葉にした。
「相棒としてだけじゃなくて。なつ自身が好きだ」
「….本当か?」
「こんなことで嘘つくかよ」
なつの表情が、ゆっくりとほどけていく。
「じゃあ、もう避けんなよ」
「お前も、俺にちゃんと話せ」
「分かった」
「…らんに相談するなとは言ってねえからな」
「分かってる。らんにはこれからも相談する」
「それはちょっと嫌だな」
「…え、いるま?」
「冗談だよ」
そう言いながらも、いるまはなつの手を離さなかった。
そこへ、少し遠くから声が聞こえた。
「なつくん、いるまくん、まだ帰ってなかった
の?」
こさめだった。
その後ろには、らんたちもいる。
らんは二人の繋がれた手を見ると、すぐにすべてを察したように笑った。
「ちゃんと話せたみたいだね」
「らん、お前…」
「俺は何もしてないよ。二人が勝手にすれ違って、勝手に仲直りしただけ」
「仲直りっていうか….」
なつが言葉を濁す。
いるまは、つないだ手を見られていることに気づいて、少しだけ顔を背けた。
すると、こさめが目を輝かせる。
「えっ、もしかして二人とも一ー」
「こさめ!」
「はい、言いません!」
こさめは慌てて口を両手でふさいだ。
みこととすちが顔を見合わせ、嬉しそうに笑っている。
らんは、いるまの肩を軽く叩いた。
「いるま。なつの一番近くにいるのは、たぶん最初 からいるまだよ」
「 …..らん」
「ただ、ちゃんと言葉にしないと伝わらないけど ね」
その言葉に、いるまはなつを見る。
なつも同じように、いるまを見ていた。
これからも、なつはらんに相談するかもしれない。
メンバーと楽しそうに笑うこともたくさんあるだろう。
そのたびに、いるまは嫉妬するかもしれない。
けれど、もう勝手に距離を置いたりはしない。
「なつ」
「ん?」
「帰ったら、今日のこと全部話す」
「おう。俺も話したいこと、いっぱいある」
二人は、並んで歩き出した。
昔から変わらない、相棒としての距離。
でも今は、それだけではない。
誰よりも近くにいたいと思う気持ちを、もう隠さなくていい。
すれ違って、傷ついて、ようやく分かった。
なつの隣は、いるまが勝手に決めるものではない。
なつと二人で、これからも選び続ける場所なの
だ。
コメント
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読み終わりました。いるまの嫉妬の描き方がすごくリアルで、胸がぎゅっとなりました。「相棒なのに、自分じゃない誰かに頼るのが苦しい」って感覚、すごくわかります。でも実はなつも同じように悩んでいて、お互いが「相手の一番でいたい」って思ってたのが切なくて愛しかったです。最後の手を繋ぐシーン、最高でした。二人がちゃんと向き合えてよかった…!