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この作品大好きです!!
シヴァじゃぱめっちゃ好きだから感動した!
レストランを出てしばらく歩くと、
空気がひんやりと変わった。
風が強くなり、
どこからか“波の音”が聞こえる。
「……海?」
遊園地の真ん中に海なんてあるはずがない。
でも、目の前に現れたのは――
荒れ狂う海を模した巨大なプール。
中央には、黒い帆を張った巨大な海賊船が浮かんでいた。
「ここ……シヴァさんとの記憶か?」
胸が静かにざわつく。
船に乗るための桟橋を渡り、
ゆっくり足を踏み入れると――
コン……コン……
硬い靴音が甲板に響いた。
「来たな、じゃぱさん。」
重めの声が、静かに背後から届く。
振り返ると、
深緑色のコートを羽織ったシヴァさんが立っていた。
「シ、シヴァさん……!」
シヴァさんは欄干にもたれ、
ゆるく笑った。
「じゃぱさん、絶対ここで俺の記憶拾うって思ってたろ?」
「……まぁ……似合いすぎてて。」
「だよなぁ。」
シヴァさんは海を見下ろしながら、
指先で風を切るように動かした。
「この場所は、俺とじゃぱさんが……
“帰り道を見失った時”の記憶だ。」
「帰り道を……?」
「ああ。」
船がゆらりと揺れる。
空が曇り、強い風が吹いた。
「俺ら、昔……
遊園地で迷って丸一日歩き回ったことがあったんだよ。」
「うそだろ……そんなこと……」
「覚えてねえよな。」
シヴァさんは苦笑する。
「でも、仕方ない。お前は記憶を失ってるんだし。」
じゃぱぱの胸に、静かな痛みが走った。
「俺……その時、どんな感じだった?」
「心細そうだった。」
シヴァさんは即答する。
「だけど、お前は泣かなかった。
代わりに、ずっとこう聞いてきた。」
海風に揺れる声で、ゆっくりと言った。
“シヴァさん、迷ってもさ……俺たちって帰れるよね?”
その言葉が、胸の奥で強く跳ねた。
「……俺……言ったのか。」
「ああ。」
シヴァさんは柔らかく笑う。
「だから、俺は答えたんだよ。」
ゆっくりとじゃぱぱに視線を向けて、
“帰れなくなるわけねえだろ。
お前がいる限り、俺は迷わねぇよ。”
海風が、一瞬止まった。
その瞬間、
じゃぱぱの脳裏に稲妻のように記憶が走る。
――夕暮れの遊園地。
――迷った二人。
――シヴァさんの落ち着いた背中。
――笑って“怖くねぇよ”と言ってくれた声。
――暗くなる前に見つけた出口のゲート。
――安堵した瞬間、シヴァさんの横顔が泣きそうで。
「……思い出した……」
じゃぱぱがつぶやくと、
シヴァさんは静かに目を細めた。
「それでいい。」
「シヴァさん……俺……」
「言うな。」
シヴァさんは手を軽く上げて止めた。
「まだ全部思い出してねえんだろ?
なら、ここから先は――」
足元が光り始める。
海も空も静まり返る。
「一人で行け。
じゃぱさんはもう、迷わねぇよ。」
「シヴァさん……!」
「俺の言葉、覚えてるか?」
じゃぱぱは強く、頷いた。
“帰れなくなるわけねえだろ。
お前がいる限り、俺は迷わねぇよ。”
「そうだ。」
シヴァさんは満足そうに頷いた。
「じゃぱさんは、 “戻る場所”を知ってる。
だから――」
手を甲板に置き、静かに言った。
「必ず帰ってこい。」
光がシヴァさんの姿を包み、
潮風のように消えていった。
甲板の上には、
古びた羅針盤だけが残されていた。
「……絶対帰るよ。みんなのところに。」
じゃぱぱは羅針盤を握りしめ、
次の記憶へと歩き出した。