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毎日少しずつ彼について新たな事を見出している
北斗さんはまるでタマネギだ、皮を一枚めくるたび新たな発見があり、それによってアリスを驚かせる、いづれ芯までたどり着くことになるのだろうか
彼が日頃何を思って、何をどう感じているのか・・・・
う~ん・・・とアリスはペンを置いて、腕を組んで眉を寄せた
完全に行き詰った
彼に近づきたいのに・・・・宝箱をパカッと開けるように、彼に心を開いてもらうにはどうすればいいのか・・・
アリスは書く手を止めて、雲一つない青空を見渡した、頭上を優しく風が吹いていく
ここは彼が生まれ育った所・・・幼いころの彼はどんな子だったのだろう
ここで彼は何を見て、どう感じていたのだろう
空を仰いで深呼吸する、木々は春がもうすぐそこに来ているとばかりに、冬の栄光をまとって葉っぱがまだらな樹木を揺らせている
遠くの方で連なっている梅の木が、濃いピンクの綿菓子のように見える
どこかでホトトギスの鳴き声が聞こえる
その奥のトトロの森は陽が射さないので寒そうだ
空気は薄く冷たかったが、少し冷えて来た背中に明るい冬の陽射しが染み渡る
まわりの自然はとても穏やかだ、私も無理しないでいいのかもしれない
自然が教えてくれる
だって私はここを去るつもりも無いし、今夜も北斗さんと愛を交わしたい・・・
自然でいいのだ、北斗さんとはゆっくりやっていけば・・・・
そこでたった今思いついたことだけを便箋に綴った
―北斗さんへ―
好きな季節はいつですか?
..:。:.::.*゜:.
:.*゜:.
北斗は成宮牧場の入場ゲート横の事務所でじっと考え事をしていた
小さな音で流れている有線放送の音楽は80年代の、ポップス音楽が流れている
こまごまとした雑務や、牧場主の揉め事を処理しないといけないのに考えが集中しない
境界地の従業員から大量の竹の子を植えられた場所を発見したと報告が入った今は数人で撤去作業をしている
竹が伸びる工程は恐ろしく速い、奴らはそうして土地と成宮の土地の境界線に筍を植えて生やし、土地の境界線をうやむやにして、徐々に成宮の土地に侵入しようとしてきている
さらには緊急のメールにも、返事をしなければいけないし、町の商工会議所と近隣の牧場主達は折り合いが悪い
どっちの言い分も北斗は理解できた
ここを発展させたい若者と伝統を守りたい中堅とで、いつも小競り合いが勃発している
なのでいつもお互いの小さな土地を守るために、よその土地を外敵扱いし、なんとか出し抜こうとしている
そんなことをして自分の土地を守ったとしても、今度は仕返しに自分の土地を奪われるのではと、また心配し夜も眠れぬ時が続くだろう
奪い合いは何も残らない、どうしてお互いに協力し合えないのか
北斗は思った
この村と町を上手くまとめてくれるリーダーがいないのだ・・・
その時北斗は顔を上げて、ドアの前にいる明に気が付いた
北斗は明を見て乱雑に置かれてた書類の山の上に、ペンを置いて胸の上で手を組み、にっこり笑って椅子にもたれる
「さては・・・俺が持ってるの嗅ぎつけたな?」
北斗は野良猫でも見るように、片眉を釣り上げて意味深に明を見た
北斗が作業ジャンバーのポケットから(ハリボーゴールドグミ・お徳用)を取り出した
明はたちまち笑顔になる
「ぜ・・・全部・・食べる」
コピー用紙の紙の上にグミの袋をポンツと置く、すると明が喜んで手に取って歯で袋を破った
「よくばりめ、全部食べたら腹が痛くなるぞ」
フフッと北斗が明を見て微笑む、可愛くて仕方がないといった顔だ