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今日は珍しく綾斗さん視点です
もう付き合ってます
「…」
最悪だ。
夏だから大丈夫だろと油断してた。
喉もいたいし、頭が痛いせいで寝られない。
もう三日くらい寝てる気がする。
大学は二日間は奇跡的に休みだったけど、今日に関しては完全に無断で休んでいる。
単位大丈夫かな…いつも出席してるし、レポートとかも出してるし大丈夫か。
「ゲホッ、…」
咳をしても、一人。
なんて俳句を、中学生の時ぶりに思い出した。
こういう時、身に染みて孤独が感じられる。
ピーンポーン
ん?
誰だ?
「綾斗さーん、お邪魔します!」
「いちろー…?」
ダメだ、喉腫れ過ぎて声がカッスカスになってる。
今のちゃんと一郎に聞こえたか?
「綾斗さん?あっ、いた」
「何の連絡も無しに大学休むからびっくりしちゃいましたよ…って、体調不良だったんですか?!」
小さく首を縦に振ると、一郎が慌てて部屋から飛び出した。
ドタドタと慌てるような足音が聞こえ、一郎が一瞬だけ顔を出して言った。
「えっと、軽いものなら食べられますか?あ、あと薬と冷えピタ買ってきます!すぐ戻ってくるから絶対大人しくしてて下さいね!!」
それだけ言うと、玄関の扉が「バンッ!」と大きく音を立てて閉じた。
騒がしい奴だな…
けど、不思議と嫌な感じはしない。
一郎が来てくれて、少し安心できた。
頭痛は酷くなった気がするけど。
程なくして、一郎がまた勢いよく玄関のドアを開けて入ってきた。
急いで走って来たのか、息切れしているのがこっちにまで聞こえて来た。
「はー、はー、綾斗さ、すぐお粥作るんで…いやまず冷えピタ、、」
服で額の汗を拭いながら、冷えピタを持ってきて貼ってくれた。
正直それくらい自分でできるのだが…体がしんどいのでありがたい。
「よし…俺お粥作るので、綾斗さんは大人しく横になってて下さい。スマホとかも目が疲れちゃうので。何かあった時は声出すの辛いと思うので、その時はスマホ使って電話かメッセージ下さいね」
俺の頭を撫でてから、にっこり笑って台所まで歩いて行った。
これが押しかけ女房って奴か…
いや、確か押しかけ女房は合意なしに一方的に相手の家に住まう事だったか。
じゃあこの場合は何て言うのが正しいんだ?押しかけ一郎とか?
どうでも良い事を考えていると、台所から良い匂いがしてきた。
ほんのりと甘い香りが、鼻孔をくすぐる。
一郎って料理上手だよなぁ。いつも持参してる弁当も見た目色とりどりで味も確かだし。
あー、そういえばあんまり会った事ないけど、一郎には2人弟が居たんだったか。
弟君達にも毎日ご飯食べさせながら勉強もしてるのか。
偉いな…一郎。
「綾斗さん!お粥出来ましたよ~!」
そう言って部屋のドアを開けて、お粥を置いた。
可愛いくまのエプロンを着ていて、もうそっちに目が行ってる自分が居る。
「?どうしまし…うぁ?!」
「ごっ、ごめんなさいっ!!いや、ごめんなさいって言うか、違うんです!!いつもこんな可愛いの着てる訳じゃなくて!!いつもはレッドドラゴンとかカッコイイの着てますし?!!?!…その、えっとあの、」
後半からもごもごしながら急いでエプロンを脱いだ。
「いんじゃない?可愛いし」
掠れ声で頭を撫でると、露骨に嬉しそうな顔をする。
俺の恋人可愛いな。心底そう思う。
「はっ、違う、お粥食べられますか?」
頷くと、一郎がお粥を口元まで運んでくれた。
おぉ、恋人っぽい。
「あー…」
「へ?」
目を開けると、一郎が意外そうな顔をしてこちらを見ている。
?
あーんしてくれるんじゃなかったのか?
「あれ、違う?」
「あっ、いえ!違う訳じゃなくて!その、ほんとに食べてくれるんだなって。あとなんか、」
なんか?
「めっちゃ恋人みたいだなぁって、」
そうやって、照れるのをごまかす様に笑っていた。
かわいいな。
「可愛い」
「へっ?そんなことないですよぉ!」
照れながら俺の口にお粥をねじ込んで来た。
ん…美味い。
優しい味で、ふんわりと口の中に卵のまろやかさが広がる。
「…うまい」
「ほんとですか?よかったです!食べきれなかったら無理せずに言ってくださいね。後々気持ち悪くなっちゃいますから」
「ありがと。もう一口頂戴」
「はいっ!あーんっ!」
そんな流れで、お粥をすべて一郎に食べさせて貰った。
薬も口に放り込まれて、水も飲ませてくれた。
「ちゃんと全部食べれましたね!よかったです、食欲十分あって!俺お皿洗ったらもうお風呂頂いちゃいますね!」
満足そうな顔をした後、お盆を持ってまた台所へそそくさと去って行った。
正直あんまり食欲はなかったけど、一郎のお粥は美味しかったから全部食べれた。
お腹いっぱいになったらなんか眠くなって来たな…
「…」
あ、一郎のエプロン。
…一郎の良い匂いがする。
安心して、ぽかぽかする匂い。
「一郎の匂い…」
視線を感じて目が覚めた。窓の外はもう暗くなっている。
目が覚めたといっても、体がまだ寝ぼけていて、少し目を開けるくらいしかできない。
薄く目を開くと、一郎の顔が目の前まで迫っていた。
「…いちろ、なにしてんの?」
「うひょぁ?!あ、ああ綾斗さん?!いつから?!」
「今起きたとこ。キスしたかった?」
目を擦りながら一郎の方に視線を合わせると、恥ずかしそうに顔を隠す所が見えた。
いつも自分からはキスしたいなんて言わないし、ほんとに恥ずかしいんだろうな。
「いいよ、こっちおいで」
ベットの隣をトントンと叩き、一郎を呼んだ。
一郎は少し遠慮しながら布団の中に入ってきた。
整った顔が、俺の隣で横になっている。
この世の誰より、愛おしい恋人が。
「…」
気が付いたら、自分からキスしていた。
やっちゃったか?と思ったが、一郎も嬉しそうだし良しとしよう。
そのまま一郎を胸の方に抱き寄せて、抱き枕代わりにしてまた眠った。
深夜三時くらい。
ド深夜に目が覚めた。
首元に一郎の寝息がかかってきてくすぐったい。
最近ヌいてなかったのと、一郎が近くに居る反動で勃起した。
しばらく経ったら治まるだろうと思っていたが、いつまで経っても治まる気配がない。
流石に一郎の目の前でする事はしたくないし、別にそんな気分ではないから眠りに落ちるまで目を瞑っていた。
寝たいけど、寝すぎて寝られない状況になっている。
羊でも数えてみようかな。
羊が一匹。二匹。三匹…
…なんだか、一郎の様子がおかしい気がする。
息遣いが荒くなっているし、妙に汗ばんでいる。
もしかして?
「一郎、シてんの?」
「ふぁッ…?!ン”っ…♡♡」
今イったなこれ。
え?俺の恋人エロくない?
俺の事オカズにしてたのかな。
俺の恋人かわい。
「ごめ、なさ、、」
「別に怒ってないよ。我慢できなかったの?」
「綾斗さんの寝顔可愛いくてカッコよくて、最近全然できてなかったから、我慢できなくて、」
「一郎かわい…我慢できなかったの?ははっ、かわいー…」
まだ頭がぽやぽやして、あんまり頭が回ってない。
確かそのまま一郎にキスして寝た気がする。
朝起きたら一郎は隣に居なくて、帰っちゃったのか…と寂しくなった。
俺はすっかり良くなったみたいで、洗面台で顔を洗おうと思って立ち上がった。
台所をちらっと見たら、一郎が冷蔵庫にもたれかかってぐったりしていた。
「一郎?どうした?」
「あ…、綾斗さん、なんか体調悪くて…」
「一郎も風邪か」
多分俺が移したんだと思う。
次は俺が看病してやらないとな。
一郎看病パートに続いたりするヨ☆