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僕の名前はBroooock。中学3年生になったばかりだ。クラスでは特に目立たぬ一般人。クラスにはとても仲の良い友達のきんときが居た。
きんときはいつも真面目で頭も良く、スポーツもできる。いわゆる優等生って奴だ。まぁ僕も負けては無いけど、リーダーシップを張るようなことはやっていないから、特に目立ちもせず、受験生になったばかりの日々を謳歌していた。
「Broooock〜?」
ちょうど噂の本人様の登場だ。
「どしたのー?きんとき。」
「今日帰りBroooockの家遊び行ってもいい?」
「もちろん!」
ただ、きんときはなにしも欠点が無いという訳ではない。彼の母親は彼が2年のとき、交通事故で死んだ。それはきんときに精神的ダメージを多く与えた。きんときの父親はあまり他人に興味があるタイプでなく、普通の生活はさせてくれるが、人を慰めたりはしない。
精神的に孤独なきんときを、僕は救いたかった。それが彼の…彼と僕の願いだから。
そんな擦り減らした精神でも学校に来て、笑顔を絶えず見せるきんときと、僕は積極的に話した。
きんときが家に来たいというのも、自分の家に帰っても、悲しくなるだけだからだろう。
「じゃあ帰ろっか。」
「うん!」
「…!ねぇ!Broooock!」
とても嬉しそうなきんとき。その本心からの笑顔を見ると、僕も嬉しくなる。
「どうしたの?きんとき。」
「お父さんが!」
「…!上手くいったの?」
満面の笑みで頷くきんとき。
何のことかというと、きんときが、きんときの父親にしてもらいたいこと。伝えたいことを、直接は恥ずかしいからと、メールを送ったのだ。思いはちゃんと伝わったらしい。
「それで!今からこっちに迎えに来てくれるって!」
いつも電車一駅の距離を歩いて帰っていたきんとき。はじめての父親からの迎え。まだ治りきってない彼の精神にはいい薬だろう。
「良かったね!早速帰る準備しよ?」
そういって帰りの準備を始めた。手を動かしているきんときの顔は、青空のように澄み渡っていた。
ピーンポーン
片付けが終わる頃とほぼ同時刻にチャイムが鳴る。玄関まで送ろうと、共に降りる。
「お父さんっ!」
ドアの前にはきんときと同じ位置にほくろを持つ、父親がいた。
「きんとき…忘れ物はないか?」
あぁ邪魔になりそうかな。そろそろ戻ろう。そう思ったときだった。
キキィーッ!
大音量が響きだし、きんときの父親の左半身が照らされる。
「お父さんっ!!!」
「きんとき!駄目!」
足を踏み出そうとするきんときの腕を掴み、こっちに引き寄せる。
ドォォンッ!
目の前で鮮血が飛び散る。僕が手を握っていた彼は、膝を突き、体の力を抜く。
冷静さを欠く彼を一度無視し、電話をかける。
「っぁ!もしもし!緊急で———」
その後直ぐに到着した救急車に、親子は運ばれていった。呆然としているきんときの代わりに、僕の母親が説明役として、救急車に乗った。
僕は、食事を喉に通さず、そのまま寝た。
次の日は学校だった。ぼうっとしながら支度を終え、帰ってきた母親の作った朝食に口をつけようと思わず、学校に向かう為にドアを開いた。
「きんとき君のお父さん、意識不明の重体。いつ目が覚めるかは分からないけど、命に別状は無いらしいわ。」
そんな母親の言葉に頷きもせず、ドアを通った。
…酷い物語だ。なんでそうもしてきんときを苦しめる?神がいるのならば、殴りつけてやりたい。きんときが何をしたというのか。きんときの幸せを、感じたばかりの瞬間に奪って……
そんなことを考えているうちに学校に着いた。上靴に履き替え、階段を登る。流石にきんときはいないだろう。
教室の扉を開けると案の定きんときは居なかった。優等生のきんときがいないことに、出欠確認が終わった後の生徒達は騒いでいた。担任はきんときの欠席理由を公開しなかった。
四時間目を終えた後、彼が来た。
予想外の出来事に僕は呆然としていた。クラスの人々が彼に話しかけようとする前に、給食を給食室から運ぶ、当番が来た。
「給食先分けよ?」
そんなきんときの一言で、皆が配膳の列に並び始めた。
その群衆に紛れようとする彼は、こちらを一度見た後、直ぐ反対を向いた。
そんな彼の目は、黒く、濁り果てていた。
給食が終わり、昼休みとなった。
【彼を救いたい】
そんな思いを胸に抱え、彼に向かって歩みを進めた。
こちらを向かない彼の正面に立ち、口を開こうとした。
「ね……」
「お前のせいで……」
「…っ?」
「お前のせいで…!お前のせいでっ…!」
視線が合う。彼の目からは、水が溢れだしていた。
…そっか
僕は救おうとしただけなのにな。
でも君を苦しめてしまうなら
僕はここから去ろう。
彼に向かって一度だけ微笑み、廊下へ飛び出した。