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第5話「あれはずるい」
「……はあ」
帰り道。
隣にぷりちゃんがいる。
でもさっきから、会話ほぼなし。
(そりゃそうか)
さっきの教室。
(……あと少しだったのに)
思い出して、思わず口元押さえる。
「なんやねん」
隣からじとっとした視線。
「いや別に」
「絶対なんか思い出しとるやろ」
「なんのこと」
とぼけると、
ぷりちゃんが少しだけむっとする。
「……最悪や」
ぼそっと言う。
(最悪って、)
「俺はよかったけど」
「は!?」
すぐ反応するの、ほんとわかりやすい。
「何がやねん!」
「だってさ」
少しだけ近づく。
「逃げなかったじゃん」
「っ……!」
一瞬、言葉止まる。
「逃げようと思えば逃げれたでしょ」
「……机あったやろ」
「言い訳」
「ちゃうわ!」
でも、
(ほんとは、わかってる)
あのとき。
ぷりちゃん、動かなかった。
一瞬だけ、迷ってた。
(あれずるい)
「なあ」
「なんや」
「なんで止めなかったの」
少しだけ真面目に聞く。
「止めようとしたわ!」
「でも止めてない」
「っ……!」
また詰まる。
顔、少し赤い。
(やっぱり)
「……知らん」
目逸らして、小さく言う。
その答えで、確信する。
(あ、これ)
「ぷりちゃん」
「なんや」
「次は止めないでよ」
「は!?」
一気にこっち向く。
「何言うてんねん!!」
「だって」
笑いながら言うけど、
「さっきの、途中だったし」
「途中とか言うな!!」
完全に照れてる。
でも、
(俺もだろ)
さっきの距離。
息、かかるくらい近くて。
目、閉じるか迷ってた顔。
(……可愛いと思っちゃうじゃん)
「……はあ」
小さく息吐く。
「あっきぃ?」
「んー」
適当に返す。
でも頭の中はさっきのことでいっぱい。
(なんであんなことしたんだろ)
軽い気持ちじゃない。
からかいでもない。
(……キスしようとしてた)
そこまで考えて、
少しだけ止まる。
(……あれ)
今さら、気づく。
「……俺」
「なんや」
「結構、本気かも」
「は?」
ぽろっと出た言葉。
ぷりちゃんが、固まる。
(あーあ)
言っちゃった。
「今のなしね」
「なしにできるか!」
すぐツッコまれる。
「何がやねんそれ!」
「なんでもないって」
「さっきからそればっかやな!」
でも、
「……ほんとにわからないの?」
少しだけ、真面目に言う。
「何がや」
「さっきのとか」
少しだけ近づく。
今度は、さっきよりちゃんと意識して。
「……キスしようとしてたやつ」
「っ……!」
また顔赤くなる。
「言うな!!」
「なんで」
「恥ずいやろ!!」
その反応で、少し笑う。
でも同時に、
(やっぱそうだ)
って思う。
「……そっか」
「何がや」
「いや」
少しだけ間。
「俺だけじゃなかったんだなって」
「……は?」
「なんでもない」
家の前。
「じゃあな」
「……おう」
少しだけ、いつもより名残惜しい感じ。
(……変だな)
背を向けて歩き出す。
でも、
さっきの距離も、
表情も、
全部頭に残ってる。
(……あれは、もう)
からかいじゃない。
「……やば」
小さく呟く。
(俺完全にぷりちゃんのこと好きじゃん)
今さらすぎる自覚。
でも口元が少し緩む。
(次は、邪魔されないといいな)
そんなこと考えてる時点で、
もう終わりだと思った。
コメント
4件
最高やぁ~
akくんが自覚したー!!! 続き楽しみです💕