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第二話「記憶の損傷」.
ー注意ーー
前話参照の為割愛させていただきます。
苦手な方は予めご了承ください。
この腕の噛み跡が、shpをこんなにも深く傷つけている。
そして、この傷が、shpを守ろうとした結果なのだという事実が、rbrの心をさらに締め付けた。
彼を守りたい、彼を傷つけたくない。
その強い思いが、彼の心臓を締め付けた。
天使化は、ゆっくりと、しかし確実に進行していった。
夜中にふと目が覚めると、背中に異様な感覚がある。
むず痒く、まるで何かが生えてくるような違和感。
それは、羽が生えてくる前触れだと言い聞かせても、恐怖は募るばかりだった。
自分の体が、自分のものではなくなっていく。
人間から、別の何かへと変質していく。
その事実に、rbrは震えが止まらなかった。
記憶もまた、少しずつ曖昧さを増していった。
昨日の晩飯は何だったか、shpといつ出会ったのか、共に過ごした楽しい思い出の数々が、まるで霧のように消えていく。
大切な記憶が失われるたびに、彼の心は空っぽになっていくようだった。
ある日、rbrはshpに詰め寄られた。
彼の顔には、焦燥と、そして深い悲しみが刻まれていた。
shpは、rbrの腕を掴み、彼の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「お願いします、rbrさん。ワイも噛んでください。一緒に天使になります」
shpの瞳は、切望と恐怖で揺れ動いていた。
彼は、rbrが自分を忘れてしまうことを、何よりも恐れていた。
愛する人が、自分の存在を認識できなくなる。
それは、彼にとって耐え難い地獄だった。
rbrは、そんなshpを強く、そして優しく抱きしめた。
彼の震える肩に、自分の顎を乗せる。
「アホなこと言うな。俺は、お前を天使になんかさせへん」
rbrの声は、震えていた。
shpを天使にすることなど、彼には考えられなかった。
shpには、人間として生きてほしい。
自分のような、記憶も感情も失う存在にはなってほしくない。
ましてや、自分を庇ったせいでこの運命を背負うことになった彼を、さらにこの呪われた道に引き込むなど、耐えられなかった。
それが、rbrの最後の、切なる願いだった。
「でも、このままじゃ……っ、あんたは俺を忘れるんすよ!? 一人ぼっちになるのは、あんただけじゃないんすからね ッ !」
shpの言葉は、rbrの胸に突き刺さった。
彼の言葉の重みが、rbrの心臓を鷲掴みにする。
しかし、それでも首を縦に振ることはできなかった。
shpには、人間としての生を全うしてほしい。
この醜い運命に、彼を巻き込むわけにはいかない。
それから、rbrは感情を失っていくようになった。
shpが面白い話をしてくれても、楽しいと感じない。
声を出して笑うことも、微笑むことすらできなくなった。
悲しい出来事を聞いても、涙が出ない。
まるで、自分という存在から、色が抜け落ちていくようだった。
彼の言葉は単調になり、表情は常に無機質だった。
「rbrさん、これ、覚えてます?」
shpが差し出したのは、二人が出会ってからずっと書き続けてきた日記帳だった。
それは、二人の思い出が詰まった、かけがえのない宝物だった。
ぎっしりと文字が埋め尽くされたページには、他愛のない日常の出来事や、喧嘩したこと、笑い合ったこと、二人で見た美しい景色が綴られていた。
shpは震える手でページをめくり、あの時こんなことがあった、あの場所でこんな話をした、と語りかける。
しかし、rbrの表情は変わらない。
彼の瞳は、ただ一点を見つめているだけだった。
「……覚えてない」
rbrの口から出たその言葉は、まるで他人事のようだった。
感情のこもらない、ただ事実を述べるだけの声。
その言葉が、shpの心を砕いた。
shpの顔が、絶望に歪む。
彼の瞳からは、とめどなく涙が溢れ落ちた。
「そんな……っ。俺たちが、一緒に書いたんすよ……っ」
shpの震える声は、rbrの耳には届かなかった。
彼の中の「shp」という存在は、もはや薄れ、消えかかっていた。
日記帳は、shpにとって唯一の支えだった。
rbrの記憶が薄れても、これさえあれば、二人の軌跡は残る。
そう信じていた。
しかし、rbrがそれを覚えていなければ、何の意味があるというのだろう。
彼の心は、深く深く沈んでいく。
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コメント
5件
1500余裕ー 続きが楽しみ!