ここら辺で見える明かりは月光くらい。そんな特に何も無い軽く整備された小さい山に、「あかり」は来ていた。
「あの、こんな夜中に人気もない山で何してるんですか?」
目の前に同年代くらいの子がいたのでつい話しかけてしまった。
「ビクッ!」
あ「すみません、驚かせちゃいました?」
「え、なんでこんな夜中に人がいるんですか」
あ「えー、いたっていいじゃないですか、それより何してるんですかっ♪」
同年代がいると少しはしゃぎたくなるものだけど向こうは随分と落ち着いている。
「いや、特に……強いて言うなら探し物してます。」
あ「奇遇ですね、私も探し物してたんです。同じですね!」
相手はこちらの返答に戸惑っているようで少し怖がられているのが察せる。
あ「……じゃあ、一緒に探しませんか?それ、そしたら私の探し物も一緒に探してくださいよ」
「……いいですよ」
向こうは食い気味に来るあかりに押される形で承諾したようにも見受けられた。
あ「それで……探し物ってなんですか?」
少し間を置き相手は答えた
「死ねる場所です。」
あ「へ〜そうなんですか」
向こうは呆気に取られた様子で戸惑っていた。
「ちなみにあなたの探し物は?」
あ「私は…春を探してます!」
「……春?」
あ「はい!でも、あなたここら辺で死ぬ気なんですか?」
不意に質問しようと意図した訳では無いが向こうは声を震わせながら
「はい」
と答えた。
あ「えー、私ここら辺で春探してるのにあなたが死んだら汚くなっちゃうので辞めてくれませんかー?」
「んじゃあ、桜が散ったらしにます。」
あ「あ、そうですね!そうしてください!」
あ「ならそれまで私と一緒に春探ししましょーよ」
あ「それ終わったら死に場所くらいいくらでも探してあげます。」
月光が雲の隙間から覗いた時、彼の表情が少し明るく見えた。
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