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鳥の歌声、書き手もなく

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鳥の歌声、書き手もなく

45 - 第45話三歳永久エター

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2022年08月03日

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花梨ちゃんは、今にも泣き出しそうな顔で俯いている。

無理もない、自分の未来を聞かされれば誰だってこうなるだろう。

「安心しろ、まだ手はある」

俺は彼女の肩に手を置き優しく語りかける。

「ほ、ほんとうですか!」

彼女は藁でも掴みたいのか、必死の形相で食いついてくる。

「ああ、あるとも。その前に花梨ちゃん、君のステータスを見せてくれないか?」

「あ、はい、わかりました」



ーーーーーーーーーーーー 異世界転生したおっさんの苦悩と成長を描いた作品です。

もし宜しければフォロー、評価などお願い致します。

皆さまの評価が創作意欲となります。



「あの、どうしたら良いんでしょうか? 僕達はこれからどうなるんですか?」

「安心しろ。すぐに消えてなくなるわけじゃない。ただ少しだけこの世界から居なくなれば済む話だ」

「それはどういう意味でしょうか?」

「つまり、今ここで死んで貰うと言うことだ」

その瞬間、少年の顔が絶望に染まった。

俺はそれを無視して【神威】を発動させた。

目の前の空間が歪み始め、そこに一筋の亀裂が入った。

そして徐々に広がっていき、やがて大きな穴となった。

「ああっ!!なんてことだ!」

「おいおい、落ち着けよ。まだ何も始まっていないんだ。今なら間に合う、まだやり直せるさ」

「しかし! どうすれば良いのです? 僕は何をすれば良いのでしょう?」

「簡単だよ。まずは好きなものを探せばいい。それが見つかれば後は芋づる式に出てくるはずだ」

「でも、僕には…………。特に好きと言えるものが無いんです。小さい頃から色々な物を見てきてどれもこれも面白かったけど何か一つだけ飛びぬけて好きだと思えるものがありません。

そもそもこの世界にあるもので僕の興味を引くものはあるのでしょうか?」

「あるさ、あるとも。例えばお前は剣が使えるだろう? それもかなりの腕前じゃないか」

「それはそうですが、それだけでは…………」

「それに魔法の才能もあるみたいだしな。それに錬金術の才能だってあるかもしれない。それがあれば十分だと思うが?」

「確かにその二つは好きですが…………」

「あとはなんだ?お前らは何が得意だったんだ?」

「あーん、この人、意地悪だよぉ~!」

泣きじゃくる幼女を無視して俺は更に問い詰めていく。

「お前らの得意分野を教えろ。今後の参考にする」

「えっと、歴史とかが好きです。後は数学と物理が好きかな?」

「他には? ほれ、言え。今なら何でも聞いてやるぞ」

「わ、私にも教えてくださいまし!」

何故か横にいた姫までもが話に乗ってきた。

「えっと、その…………。実は恋愛小説が好きなんです」

顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしている。

意外だな。もっとエグイのを読んでいると思ったのだが。

「恋愛小説か。それなら書けるんじゃないか? 何せお前ら、ラブコメ好きだしな」

「書きたいけど、でも、書いたらダメだって言われてるの」

「誰に言われた? まさか親じゃないだろうな? おいおい、マジかよ。まだ三歳のガキに何言ってんだよ。そんなもん無視しろよ。

親なんか放っておいて自分の好き勝手にやればいいじゃないか」

「でも、もし書いて失敗したらどうなると思う?」

「失敗なんていくらでもあるさ。大体、成功する人間の方が少ないだろ? それにお前らみたいな奴らは成功しても必ず失敗する。何故なら”自分が満足できないからだ”」

「そうなの?」

「ああ、そうさ。例えばお前は”農業革命”なんて小難しい事をやっておきながら、その後の展開は何も考えてなかったんだろ? どうせまた内政無双でもするつもりなんだろ? 違うのか? その通りなら今すぐ辞めろ。この国には農民だって沢山いるんだぞ!」

「それは…………違います! 僕はただ皆んなが美味しい野菜や果物が食べられるようにと思って!」

「それがダメなんだよ!! 確かに農家の人達にとっては嬉しいだろうよ。けどな、お前の考えた政策のせいで彼等の仕事が増えるだけじゃないか! その結果として人手不足になり、物価が上がるかもしれないんだぞ。それに、貴族の中には農民上がりを嫌っている奴等も多いんだ。そんな連中に睨まれたらどうなると思う? 最悪クーデターが起きる可能性すらある。それとも何か? お前はこの国の民を全て救える程の力を持っていると言うつもりなのか?」

「そ、それは…………。ごめんなさい」

「わかればいい。お前は少し考え過ぎな所がある。もっと肩の力を抜いて生きていくといい。あと、一つ言っておく事がある。これはかなり重要な話だ。心して聞いてくれ。俺は近い将来この国を出て行くつもりだ」

「えっ? どういうことでしょうか?」

「俺は世界を見て回る。色々な場所に行き、そこで見た事を後世に伝えて行く。それが俺に与えられた使命なのだと思っている。しかし、お前らにはまだ無理だろう。何しろ三歳だしな。

だから、お前達にはそれまでにどうしてもやって欲しい事がある。それは──

「お前達に異世界転生者としての知識を使って”内政チート”を行ってもらう!」

この世界では異世界からの転生者が内政チートを行う事は珍しい事では無い。

特に中世西洋風の世界観であればなおさらである。

しかし、ここで一つ問題が発生する。

「無理ですよー! 私達はただの三歳の子供です。どうやって政治なんて出来るんですか!」

そうして今回もまた一人、三歳の子供が消えていく。これは悲しい現実である。

「…………どうして私はこの様な目に合っているのです? 確かに私はチート能力を使い過ぎていたかもしれません。しかし、まだ一文字も書いていないんです。これから書き始める予定なのですが」

「それは無理だな。既にその時期を超えている。あと半年もしないうちにお前は完全に消滅するだろう。残念だったな」

「そ、そんな!! ではどうすれば良いのでしょう?」

「簡単な話だ。今あるネタを全て使い切ればいい。そうして初めて次へと進める。それまではどんな事をしても無駄だ」

「つまり、私に残された時間は半年程と言うわけですね。わかりました。ありがとうございます」

「最後に一つだけ言っておく事がある。俺はお前が嫌いじゃない。出来るなら助けてやりたいと思っている。だからこそ言うんだが…………。頼むからネタ切れだけは起こさないでくれ」

「はい! 必ずやご期待に応えられるよう努力いたします!」

「あー、うん。頑張ってくれ。じゃあな」

こうして彼は消えた。そして、新たな転生者がまた生まれ落ちる。

「よし、誰も居なくなったな。では早速始めようか」

おっさんが一人になった瞬間を見計らい、先ほどまで彼が座っていた椅子に再び腰かける。「さて、どうしたものかね。とりあえず俺はこの世界の知識が無いわけだし、お前らの言う通りまずは勉強しないと駄目だろうな。しかし、お前らと来たら三歳のくせに既に字が読めるとかおかしいよな。しかも、日本語じゃ無いんだろ?」

そうなのだ、この世界の文字は日本の様にひらがな、カタカナ、漢字と3種類の言語体系が存在するわけではない。全てローマ字表記に近い2種類しか存在しない。つまり日本語を書くのに必要な文字数が圧倒的に少ない。よって日本語の様に複雑な表現方法を用いる必要がない。よって日本よりも遥かに書くスピードが上がる。結果、書きたい時に書けるという状態になる。

そしてそれは創作において最も必要なモチベーションの低下を招く。なぜならば、”書いたけど誰も読んでくれないかも”と思うからだ。その不安が更に執筆速度を落とす悪循環を生み出す。

そして読者は作品を読む前にまず作者を選ぶ。作者の技量によっては一話目から面白く読める事もあるが、そうでない場合は最後まで読む事も難しい。また、完結しても次の作品は出てこない。

つまりこの問題を解決するには新たな作品を産み出すしかないのだが、これがなかなか難しい。

何故なら新しいものを作るという事は既存のものの延長線上である事が多いからだ。

例えば主人公が勇者であったり魔王だったりする異世界ファンタジーの場合、その世界で定番となっている設定を使わざるを得ない。

そうなれば当然テンプレートな内容になる為、読者からは飽きられ読まれなくなる。そしてまた別の作品へと移っていくのだ。

しかし、そんな中でも稀に人気が出る者がいた。それは『五歳児』である。何故なら五歳の子供というのは一番多感であり感受性が高い年代でもあるからだ。

故に新しい刺激を求めて新たな作品にハマる可能性が高くなる。更に言えば五歳で親元を離れ独り立ちをする者もいるため冒険者として旅に出る事も出来るようになる。そのため物語の幅が広がりやすいという利点もあった。

つまりは転生者は『三歳』『四歳』『五歳』がチャンスなのだ。この三つの間になんとかしなければ確実に永遠に連載を続けられる事は出来ないだろう。

逆に言うならば三歳以下の幼子に執筆させてはならないという事にもなるのだが…………。

おっさんの場合も例外ではなかった。彼は既にネタ切れを起こしていたのだ。その証拠に最初の頃にあったはずのやる気が今は全く感じられない。

それが彼を悩ませていた問題の正体だった。このままでは間違いなく彼は消えてしまうであろう。

それを防ぐ為におっさんにはある一つの決断をして貰わなければならなかった。

「あの~、それで私はどうしたらよろしいでしょうか?」

「まず最初に言っておく事がある。俺はお前の担当編集ではない」

「えっ? 違うんですか!」

「ああ、違う。確かに担当ではないが、それでもアドバイスぐらいはしてやるつもりはある」

「あ、ありがとうございます。よろしくお願いします」

「うん、素直なのは良いことだ。さて、先ほども言った通り俺はあくまでアドバイザーだ。直接何かをするのは無理だしするつもりもない。なので俺が教える事が出来るのはこの世界の知識と知恵だけだ」

「はい、そうですね。僕は確かにネタ切れ気味です。でも他に何かあるはずです!」

おっさんの必死さが伝わる。しかし残念ながら現実は非情である。彼は既に詰んでいるのだ。

「無い。ネタが無いんだ。お前は既に死んでいて異世界転生という奇跡の上に成り立っている存在なんだ。その奇跡すら失いかけている。そしてこのままでは奇跡ごと消滅するだろう」

「そっ、そんな!! 僕はまだ死にたくない!!」

おっさんは涙目になっている。俺は少しだけ同情するが容赦しない。

「無理だ。ネタが無ければ物語は始まらない。ネタがあれば始められる。どちらも無いのなら消えろ」

「じゃあどうすればいいんですか!? 教えてください!」

「ネタがないのであれば新しい世界を作ってしまえば良い。幸いにしてここは神の世界。なんでもできるぞ。ただし、この世界で得た経験や記憶は持ち越せない。それでも良ければ作るが良い」「わ、私はどうしたら良いんですか? まだ五歳です。今なら間に合うかもしれません!」

「無理だ。既に一万回以上の連載をしているだろう? その経験則上、お前では無理だ。あと十年は掛かる」

「そんな!! それじゃあ、私は一体どうすれば!!」

「安心しろ、一つだけ道はある。この世界で生きていく為に必要な技術を身に付ける事だ。幸いにもお前にはチートがある。後は努力次第でなんとかなるかもしれない」

「私でも出来るでしょうか?」

「才能は無いが努力はできる奴だった。それがお前だ。だからこそ、俺はお前を選んだんだ。これからはひたすら修行の時間だ。まずは基礎体力をつける事から始めるぞ」

こうして主人公は異世界にて本格的な修行を始める事になる。

しかし、この時の彼は知らなかった。自分が永久エタる可能性が高まった事を

鳥の歌声、書き手もなく

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