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第十一章
邪神の右腕
―静かなる絶望―
「初めまして……四神の巫女達」
男は静かに微笑んだ。
「俺は邪神さまに仕える右腕……。」
漆黒の闇に溶け込むような美しい黒髪。
何も映していない硝子玉のような澄んだ瞳。
そして、慈悲深く、どこまでも柔らかな声。
「……っ……(穏やかで、優しい声……なのに……っ)」
呼吸をすることさえ赦されない。
その場に存在することすら否定されているような重苦しい空気が、四人を包み込む。
圧倒的な威圧感に押し潰されそうになり、立っているだけで精一杯だった。
男は四人をゆっくりと見渡す。
まるで品定めをするかのような静かな視線。
「なるほど……。」
小さく呟くと、男はわずかに目を細めた。
「朱雀、青龍、白虎、玄武……確かに四神の力を宿している。」
その一言だけで、四人の背筋が凍りつく。
「安心してください。」
男は変わらぬ穏やかな笑みを浮かべた。
「今日は、貴女達を殺しに来たわけではありません。」
その言葉に、一瞬だけ張り詰めていた空気が緩む。
――しかし。
「邪神さまからの伝言を届けに来ただけです。」
柔らかな笑みは変わらない。
それなのに、四人の背筋を這う悪寒だけが、より一層強くなっていく。
静寂が辺りを包む。
誰一人として口を開くことができない。
男は静かに四人を見据え、穏やかな口調のまま言葉を続けた。
「世界は、もうすぐ終わります……。」
その一言は、まるで未来を告げる事実のように静かに響いた。
「!!……っ、何を言ってるの……!」
煉華はやっとの思いで声を絞り出す。
だが、その声は震え、かすかに上擦っていた。
「そうよ! そんなこと、あたし達がさせないから!」
琥珀は双剣を構え、男を真っ直ぐ睨みつける。
しかし、その手は微かに震えていた。
「……ふっ。」
男は小さく息を漏らすように笑う。
「思い上がるな。」
その一言と同時に、空気が凍りついた。
男は柔らかな笑みを浮かべたまま、静かに右手を上げる。
周囲の闇がゆっくりと集まり、その手のひらへ吸い寄せられていく。
禍々しいはずの闇。
それなのに、不思議なほど静かで、美しかった。
「貴女達は、まだ何も知らない。」
男は穏やかな声で続ける。
「世界がどれほど脆く、邪神さまがどれほど慈悲深い御方なのかを。」
その瞬間――
ズンッ――。
目には見えない重圧が四人を襲う。
「……っ!」
膝が笑う。
息が詰まる。
身体が言うことを聞かない。
それでも四人は、誰一人として膝をつかなかった。
男はその姿を見て、ほんの少しだけ目を細める。
「……なるほど。」
その一言には、僅かな興味が滲んでいた。
「終わらせない……私達が、そんなことさせない!」
凛とした空気を纏い、毅然とした眼差しで蒼紫は男を見据えた。
「そ、そうです! そのために私達がいます!」
錫杖を強く握りしめ、声を震わせながらも、詞葉は真っ直ぐ男を見据える。
「巫女さま……
(あぁ……やはりお美しい……。彼女達こそ……本物の……)」
恍惚とした表情を隠すように口元へ手を添え、羅刹は少し離れた場所から四人を静かに見つめていた。
「……楽しみにしていますよ。」
穏やかな笑みを浮かべたまま、男と魔獣達は闇の中へ、音もなく姿を消していった。
重たく冷たい空気を残してー。
コメント
1件
わああ最新話読み終えたよ〜!!😭✨ 邪神の右腕、めっちゃかっこいいし怖いし…!「♡♡♡に来たわけじゃない」って言いながら空気が重すぎて息できんかった…。でも煉華ちゃんたち全然折れないの熱すぎる!!🔥 特に蒼紫の「終わらせない」って決意の台詞がエモすぎて胸きた…。次回どうなるの!?早く続きが気になる〜っ💕