桃side
俺は苺ヶ丘病院で外科として働く桃。
今日は数少ない休日だが医院長直々に小学校の健康診断のボランティアへ行けと頼まれたので渋々向かっている。
依頼をしてきた学校はまさかの俺の母校だった。
親戚の赤が同じ学校へ通っているため、かなり久しぶり会える。
俺は医学部で勉強三昧な日々を送っていたため赤とはかれこれ5年ほど会えていない。
会うのが楽しみだ。
・
学校につき職員室へ顔を出すと保健室へ案内された。
保『この度は急なお願いを受けていただいて本当にありがとうございます』
話を聞く感じ元々頼んでいた医師が病欠になって俺のことを呼んだらしい。
桃『いえいえ、実はここ俺も通ってたんですよね』
保『そうなんですね!』
桃『校舎も校庭も結構リニューアルされていて驚きました』
そんなたわいのない話をしているとチャイムが鳴りぞろぞろと生徒達が並びにくる。
保健の先生が説明をして生徒達の身長体重を測り簡単な外見のチェックをする。
桃『ここどうした?』
生『5日前にブランコから落ちました、』
桃『そっか、後4日経っても色が変わらなかったら病院いきな』
生『はぁい、』
・
保『次3年生いきますね〜』
桃『わかりました』
3年生、赤がくるはず。
俺の事覚えてるかな。
ぞろぞろと並ぶ列を見渡すが赤い髪の奴は居なかった。
さっきと同様身長体重を測り簡単な外見のチェックをする。
保『これで終了です』
保『お疲れ様でした。本当に助かりました!』
桃『お疲れ様でした。いえいえ』
桃『1つお聞きしたいのですが、』
桃『赤って子は元気ですか?』
保『あぁ、赤くんですね』
保『お知り合いなんですか?』
桃『親戚なんです。久しぶりに会いたいなと思ってたのですが欠席だったので』
先生の少し困ったような悲しげな表情に不安になる
保『最近登校できてないです。久しぶりに来たと思ったら帰りたくないと下校時間になってもぐずってしまって、』
桃『そうなんですね、』
保『本人は転んだの一点張りですが顔を合わせる毎にどこかしら怪我をしていて、考えたくはないのですが虐待を疑っています、』
桃『…なるほど』
桃『この後少し家寄ってみます』
保『お願いします』
大きな不安を胸に俺は母校を後にして赤の家へ向かった。
・
赤side
朝起きると頭がすごく痛かった。
お父さんが呼んでる、
起きなきゃいけないのに体が動かない、
<ぐっ>
赤『ぃ゙…ぅぁッ』
髪の毛を持って起き上がらされる。
痛い。
父『いつまで寝てんだ』
赤『ごめ、なさッ…』
父『俺は出掛ける。家に居ろよ』
赤『はい、』
そう言ってお父さんは外へ出ていった。
多分パチンコ。
最近の日課になりつつある自傷行為ってやつをする。
お父さんに殴られたり髪の毛を引っ張られたりするのは痛いのに自分で傷付けるのはそんなに痛くない。
いつかこの傷を見て誰かが助けてくれないかな、なんて甘い期待を背負いながら今日も切っていく。
長袖を着て傷を隠し、ふらつく体を壁で支えながらゆっくりとリビングへ向かう。
時計を見るともう12時半だった。
何か食べれるものはないか冷蔵庫を開けると少し芽が出たじゃがいもと腐った食材が入っていて食べる気になれないが俺はじゃがいもを手に取った。
じゃがいもなんか料理したことないけど芽を取らなきゃいけないことは知ってる。
赤『…ッ』
指切っちゃった。
包丁を使うのは苦手なんだよね。
下手だけど皮を向けたからお皿に入れて電子レンジで温める。
<ピピピ>
<ぴんぽーん>
完成の合図がなったと同時にチャイムが鳴った。
危ない人だったら怖いから無視しよう。
そう思い電子レンジの中に入ってるお皿を持つ。
赤『ぁっ!』
凄く凄く熱くて思わず床に落としてしまった。
ぱりーんッ!と音がして地面に破片が散らばる。
お父さんに怒られちゃう。
急いで破片を集めていると玄関の方から『がちゃっ』と音がした。
・
桃side
赤の家に着きチャイムを鳴らすが返事は無い。
少し待っていると微かに物が割れた音がした。
桃『大丈夫かー!』
声を上げるがこれまた返事がない。
無意識にドアを捻ると不意にも開いてしまった。
ドアを開き部屋を見渡すとそこは酷い環境で思わず顔を顰める。
ゴミが散乱し食べ物の腐った匂いが気分を悪くする。
奥の方を見るとしゃがみながら怯える子供が居た。
桃『あかっ!』
赤『ッ、』
びくっと肩を震わせ俺の顔を見る。
痩せこけていて確かに傷だらけだ。
桃『桃だよ、覚えてる?』
赤『もも、にぃ、ッ』
桃『しゃがんでどうしたんだッ、』
靴を脱いで赤に近付くと落ちた皿の後処理をしていたのだろう、赤の手元は血で染まっていて今も尚出血している。
赤『ッ、お父さんに言わないでッ!』
赤『お願い…ッ、なんでもするからッ!』
桃『とりあえず血が出てるから手当しよ』
赤『お父さんに言わない…、?』
桃『この事は言わない。約束するよ』
赤『…ふぅ、ッ』
赤の手を洗うためキッチンの洗い場に向かうが汚すぎて衛生面的に辞めといた。
桃『赤、ちょっと外来れる?』
赤『だめだよッ、お外でたら怒られちゃう!』
桃『俺が無理やり出したって言ったら赤は怒られないよ』
赤『でも、桃にぃ、おこられちゃうよ…』
桃『桃にぃは強いから大丈夫』
赤『んぅ、わかった、ッ』
桃『ん、いい子』
赤を抱っこして車に乗させる。
車を走らせ近くの自動販売機へ着いた。
水を買って赤の手を水で洗った。
赤『ぃ゙ッ、』
桃『ごめんなぁ、痛いよなぁ、』
ぽろぽろと涙を流す赤を慰めながら車に積んである医療バックに入っているガーゼやテープを取り出し手際よく赤に付けてやった。
桃『ん、これで大丈夫』
桃『じゃあ、これからどうしようか』
赤『帰りたくない…、怒られちゃうよッ、』
桃『赤はお父さんによく怒られちゃうん?』
赤『うんッ、』
桃『そっか、その痣もお父さんがやったの?』
赤『こ、これは、転んだの…』
桃『ほんとに?』
赤『ぅ、うん、』
虐待は確定だろう。
桃『赤は帰りたくないんだよな?』
赤『うん、でも今すぐ帰ったら怒られないかも…ッ』
桃『じゃあ、俺の家くる?』
赤をあの家へ帰らせる訳にもいかないので俺は警察に連絡して一旦引き取ることにした。
俺の家までは片道25分ほど。
桃『さっきなに作ろうとしたん?』
赤『じゃがいも…ッ、食べたかったの、』
桃『そっか』
桃『じゃあ今日は何も食べてない?』
赤『ぅ、ん、、』
桃『じゃあコンビニ寄ろっかね』
桃『何か食べたいものある?』
赤『わかんッ、ない、』
なんだかさっきからふあふあしているような、
桃『赤おでこ触るよ』
赤『びくっ、』
熱い、37度後半はあるんじゃないか。
桃『赤熱あるね、しんどかったでしょ』
桃『どこか痛いところある?』
赤『ぁ、あたま…ッ、いたい、』
桃『頭ね、』
やっぱドラッグストアにしよ。
それから近くのドラッグストアに着き小児用の風邪薬と冷えピタとポカリ、そして小さめのおにぎりを買ってあげた。
桃『おにぎりゆっくり食べな』
赤『ぁ、ありがと…ございます、』
桃『いいえ』
よそよそしい会話が目立つ、そりゃ5年も会ってなきゃそうなるか、。
その後は座席を後ろに倒して寝かしてあげた。
可愛い寝息を立てた後、車に積んである小さめのブランケットを赤にかぶせる。
・
家に着きぐっすり眠る赤を起こすため声をかけた。
桃『あかー、起きて』
赤『んぅ、ッ、、』
桃『あかー、』
体に触れると一気に目ざめ顔が青ざめる。
赤『ごめなさッ、はぁっ、はっ、』
桃『どした、大丈夫大丈夫』
赤『ぁ、ッ、ももに、』
桃『そう、桃にぃだよ』
フラッシュバックというやつだろうか、俺はそっち系の知識は無いためよく分からない。
一息ついたら一応アイツも呼んどくか。
桃『家着いたからゆっくり部屋まで行こ』
赤を連れてマンションの中を歩くがさっきから人にすれ違う度に息を潜めてびくびくしている。
エレベーターに乗り俺の部屋の玄関まで来た。
桃『鍵探すからちょっとまってて』
赤『こくっ、、』
繋いでた赤の手を離し鞄を漁る。
鍵を見つけ玄関のドアを開けた。
・
赤side
桃にぃがたすけてくれた、。
もうあの家には帰らなくていいって言ってくれた。
お父さんは警察の人に連れていかれちゃったんだって。
手を繋いでマンションの中を歩く。
手を繋ぐなんて初めてですごく嬉しかった。
お外行ってる時に小さい子達がお母さんお父さんと手を繋いでて羨ましかったんだ。
桃『ソファーに座ろっか』
赤『ぅ、うん、』
部屋が綺麗、臭くない、俺の家とは大違いだ。
みんな部屋が汚いのかと思ってた。
綺麗なのはホテルだけだと思ってた、。
<とんとん>
桃『赤?大丈夫?』
赤『ぁ、大丈夫、です、』
桃『なんかあったら言ってな』
赤『ぅ、うん、』
桃『とりま体の手当したいから服脱げる?』
どうしよう、傷見られちゃう、
赤『えっ、と、、ッ』
桃『うんうん』
なんて言えばいいのだろう、
ちゃんと答えないと桃にぃに怒られちゃう
赤『んぅ、っ、はぁっ、はっ、』
桃『大丈夫大丈夫…、体見られたくない?』
赤『はぁっ、けほっ、はっ、』
頷くと桃くんが俺の背中を摩ってくれた。
赤『ぃ゙、』
桃『あ、ごめん、背中も痛い?』
赤『…、こくっ、』
桃『体は見ないからさっき怪我した手だけ手当してもいい?』
赤『ぅ、うん、』
桃『ありがと』
桃『ちょっとまってて』
リビングから出ていった桃にぃは少しして救急箱のようなものを片手に俺の元へ戻ってきた。
桃『消毒するからちょっと痛いかも』
俺の手をガシッと掴んで消毒液を垂らす。
痛くて目に涙が溜まった。
赤『…ッ、』
桃『終わったよ、えらいえらい』
撫でようと上からくる腕がそのまま殴ってきそうで怖さからつい目を閉じてしまう。
桃『ごめんな、怖かったか』
赤『…だいじょぶ、ッ、』
桃『赤っていままでこーゆう薬付けたことある?』
見せてきたのはチューブの塗り薬。
赤『保健室の先生が…塗ってくれたことある…』
桃『そっか、その時痒かったり痛かったりした?』
赤『してない、』
桃『ん、わかった』
ガーゼに塗り薬をつけて俺の手に貼りテープで固定してくれた。
桃『指先の方は絆創膏付けような』
ぺたぺたと傷の大きさにあった絆創膏が付けられていく。
桃『はい、おしまい』
赤『ぁ、ありがとう…』
桃『どういたしまして、お礼言えて偉いじゃん』
桃にぃはそう言って俺の手を優しく握って俺の目に映るように頭を撫でてくれた。
なんだろう、この感覚。
心がほわほわする。
赤『んッ、ぅう、ッ、、』
涙がでちゃう。
怒られちゃう。
桃『泣いていいんだぞ。』
泣いて、いいの、?
・
桃side
家に着きソファーに座らせ一息つく。
傷の具合を見たいな。
体を見ていいか聞くと嫌とも言わず固まった後、呼吸が上がってしまった。
やはり見られたくないのだろうか。
とりあえず目に見える傷を手当しようと救急箱を取り赤の手を消毒した。
消毒が染みるのか静かに涙を溜める赤を褒めて頭を撫でようとすると目をぎゅっと閉じ怯えてしまう。
精神面が心配だ。
ガーゼに薬を塗り貼り付けテープで固定する。
今度は怯えないように褒めながら赤の目に入るように頭へ手を伸ばして撫でてやった。
そこで初めて赤が涙を流す。
声を殺し唸るように泣く姿が痛々しくて声を出して泣いていいと声をかけると今度は声を上げ子供っぽく泣き出した。
赤『ぅゔッ、ぐすっ、けほっ、ん゙ぅ~』
桃『大丈夫大丈夫、頑張ったなぁ』
小さい時、泣いてる時は何をしてもらったか思い出すとハグをされてた記憶が微かにあるのでそれをしてやろうと声をかける。
桃『おいで、抱っこしてあげる』
赤『んっ、んぅっ、ゔぅ~』
そういえばこいつ熱があるんだった。
俺の胸元にすっぽり収まった赤の頭を優しくとんとんするとだんだん寝息が聞こえてきた。
虐待を受けた赤の状態を知れるように小児の精神科へ連れていきたいがおそらく病院は無理だろう。
こうなったらアイツを呼ぶしかないか、、
同い歳な精神科医の親友へ電話をかけた。
桃『あー、お疲れ』
青『んぅ、おつかれ…』
桃『寝起き?笑』
青『夜勤終わってそのまま爆睡…』
桃『もう20時だけどな』
青『え、っ?嘘だ』
桃『ほんとでーす』
青『まあ、明日休みだし…』
いいこと聞いた。
明日休みなら今日無理やり来させても明日休めるな。
桃『お願いがあるんだけど』
青『なにぃ』
桃『青って小児も行けたよな?』
青『いける。何かあったの?』
一気に声色がしっかりした。流石やな。
桃『親戚の子供が訳ありなんよ。見てやってくんね』
青『詳細は?病院これないの』
桃『対人への恐怖心が強いから行けるけど診察にならんと思う』
桃『今腕の中で寝てるからLINEで詳細送る』
桃『出来れば今すぐ来て』
青『了解』
電話を切ってもう一度赤に視線を戻すと気持ちよさそうに眠っていて安心した。
青がくるのを待ちながらスマホを開くと警察署の人から何件かメールが来ていた。
目を通してゆっくり返事をしているともぞもぞと胸元に居る赤が起きてきた。
赤『ぅ、』
桃『ん、起きたんおはよ』
赤『んぅ、、ッ、ぐすっ、』
桃『どした、大丈夫大丈夫…』
頭をそっと撫で声をかけるが中々落ち着かない
赤『ぅっ、ゔぅ~!、』
泣きながらスタスタと歩き何処へ行くのかと目で追うと部屋の隅っこへ言ってしまった。
キャットタワーの柱の裏で体育座りになり頭を抱えている。
桃『赤どうした、怖い夢でも見た?』
赤『ごめなさッ、ごめんなさいッ、…』
声をかけるが声が届いてないのかずっと怯え俯きながらぶつぶつ呟いている。
赤『…なぐらないでッ…』
桃『…ッ』
いままで赤はどんな辛い思いをしてきたのだろう。
殴らないでと怯える赤を安心させたいが下手に行動してより怯えさせたら元もこうもない。
対応に悩んでいるとインターホンが鳴った。
鍵を開けるため1度玄関の方へ行く。
桃『あ、ごめんないきなり』
青『いいえ、今どんな状況?』
桃『寝て起きたら怯え始めて今隅っこにいる』
青『そっか、』
・
赤side
怖い夢を見た。
お父さんが桃にぃの家に来て俺を連れてっちゃう夢。
殴られて、
蹴られて、
すごく苦しかった。
目が覚めたら優しい桃にぃも怖くなっちゃって。
もうどうしたらいいのか分からないよ。
お父さんが来ちゃうかも。
桃『怖い夢でも見た?』
そう、怖い夢みたの。
でも言えない。
怖くて怖くて仕方がないの。
<ぴんぽーん>
インターホンが鳴った。
お父さんが来ちゃったのかも。
赤『はぁっ、やだッ、はっ…ッ』
誰かが近ずいてくる。
青色の髪…、?
青『赤くーん、大丈夫かな?』
お父さんじゃ、ない、
・
桃side
青『フラッシュバックしちゃってるね』
青『桃くんには慣れてるの?』
桃『たぶん、?』
青『この状態が起きてから触れること拒絶された?』
桃『まだ触ってない』
青『わかった』
青は赤に近ずき目線を合わせるため正座をする。
青『赤くーん、大丈夫かな?』
赤『はぁっ、かひゅっ、やぁッ、』
青『ここは桃くんのお家だよー』
青『誰も来ないからねー』
赤の耳に入るようにか、少し大きめな声でハッキリ伝える青。
青『赤くん聞こえるー?』
赤『はぁっ、はぁっ、こくっ、ッ』
青『ん、良かった』
青『大丈夫だよ、赤くんのこと傷つけないからね』
深呼吸しよっか と赤の指先に触れ青が一緒に呼吸をするとみるみるうちに呼吸が安定した。
流石としか言おうがない。
青『落ち着けたね、』
赤『ぅ…っ、』
桃『ッと、』
だらんっと脱力した赤を慌てて支える。
青『フラッシュバックは沢山のエネルギーを使うからね。そっと休ませてあげて』
桃『また悪夢を見るかも、』
青『その時はその時だよ。今起こしたら赤くんの体はずっと疲れちゃう。』
桃『そっか、』
赤を抱えソファーの上に寝かせてあげた。
青『赤くんのこと引き取るの?』
桃『まだそこまで考えてない、俺忙しいし』
青『そうだよねぇ、忙しいもんね僕ら』
桃『今から警察の人がここへ来て虐待の証拠を撮りにくるんだけど、また赤苦しむよな』
青『体、見てないの?』
桃『あまりにも嫌がるからまだ見てない』
青『そっかぁ、』
<ぴんぽーん>
桃『丁度来たか、』
インターホンのモニターを見ると見覚えのある男が立っていた。
桃『あれ、笑』
青『どうしたの?』
青『あ、笑』
がちゃっとドアを開け警察官と見合う。
紫『あれ、桃ちゃんじゃん笑』
桃『紫ーくんやん笑』
紫『桃ちゃんが引き取ってるの?』
桃『そう親戚なんよ』
紫『じゃぁ、上がらせていただくね、』
・
リビングへ戻ると赤が起きていた。
桃『あれ、赤起きたの』
赤『ぃゃ、っ、うぅっ、』
紫ーくんのことを見て泣き出してしまった。
紫『やっぱ怖いよね、』
青『紫ーくんその服脱ぐことってできる?』
紫『ほんとはダメだけど2人がこの服を盗んだり悪用すると思えないから大丈夫だよ』
そう言って堅苦しい制服を脱ぎ始めた。
紫『よし、』
赤『…ッ!』
急に赤が立ちだし玄関へ走る。
桃『ぉっと、どうした?』
廊下で赤の腕を握りその先へ行けないようにした。
赤『やだッ、やだぁっ、!』
ぽろぽろと涙を流しながら嫌だと伝えてくる。
察してくれたのか2人はここへ来なかった。
桃『何が嫌なの?』
赤『俺ッ、帰りたくない…ッ!』
きっと紫ーくんが赤を保護して家へ連れていこうとしてるんだと勘違いしているのだろう。
桃『大丈夫だよ。帰らさないよ。帰らなくてもいいように赤が傷つけられてしまった所を見にきたの』
赤『ぐすっ、ぅう、ッ』
桃『赤の傷を見て少し写真撮っておしまいだよ。』
赤『おこられない、ッ?』
桃『誰も怒らないよ』
桃『向こう戻れる?』
赤『ももにぃ、いっしょ、ッ』
桃『おう、一緒に居てやる』
赤を抱っこしリビングへ戻った。
・
紫『赤くん、はじめまして』
赤『こくっ、』
警戒心MAXな赤を膝の上に乗せ紫ーくんと向かい合わせにさせる。
紫『赤くんがここに居れるようにお写真を撮りたいんだ。』
紫『傷見せてくれるかな、?』
赤『…っ、』
桃『俺と青居ない方がいい?』
赤『…ッ!』
ぶんぶんと首を振って俺の服を掴む力を強める。
赤『ふぅッ、はぅっ、』
覚悟が決まったのか赤から服を捲ってくれた。
紫『ん!ありがとね、』
赤の体は酷い状態だった。
あちらこちらに青あざがあり、タバコで付けられたような火傷も何個かあった。
紫『じゃあ少しだけ傷撮らせていただくね、』
静かなリビングにシャッター音が響く。
赤『…ッ』
桃『大丈夫大丈夫、えらいな』
膝の上でコアラのように俺に抱きつく赤を撮影の邪魔にならないように撫でてあげた。
お腹、背中、足、を撮り終えた。
紫『じゃあ最後に腕だね』
赤『…ッ、』
赤の表情が一変する。
赤『ゃ、ッ、』
青『腕見られるの嫌かな?』
赤『…おこるっ、』
桃『赤怒っちゃうの?』
赤『…!』
ぶんぶんと首をふる。
桃『あー、怒られちゃうって思うの?』
桃『大丈夫、誰も怒らん』
赤『…、』
恐る恐る腕をまくってくれた。
そこには痛々しい切り傷がびっしりと付いていた。
紫『これは、自分でかな、?』
赤『…こく、』
紫『ん、わかったよ。お写真撮らないからしまって大丈夫』
紫『よく頑張ったね、もうおしまいだよ』
青『赤くん頑張ったね〜!』
桃『お疲れ様』
終わって安心したのか俺の方へ体を預けてきた。
紫『じゃあ、任務完了なので俺は行くね!』
桃『紫ーくんありがとね』
紫『いえいえ、お邪魔しました!』
・
赤『…、』
桃『あか』
赤『びくっ、』
桃『頑張ったな、』
赤『んっ、ぅ…ぁ、ッ』
青『とりあえず、桃くんに懐いてくれて良かった』
青『今日は僕帰ろうかな』
桃『まじありがとう助かった』
青『いいえ〜、なんかあったらいつでも連絡して』
桃『そうするわ』
青『じゃあねぇ、赤くん』
赤『こくっ、』
・
夕飯を作ろうかと思ったが家に何も無かったためUVERを頼むことにした。
桃『赤何食べたい?』
赤『…、?』
桃『なんでもいいよ、好きな食べ物なに?』
赤『…おむらいす、』
桃『おっけ、オムライスな』
スマホを開きオムライスを注文する。
デミグラスかケチャップかどっちが好きなのか分からんからどっちも頼んで好きな方を食べさしてやろう。
桃『好きな物言えて偉いね』
赤『んぅ、っ』
赤をなでながらスマホをいじっているとインターホンがなった。
桃『取ってくるからここで待ってて?』
こくっと頷いたのを確認して玄関へ向かう。
オムライスを受け取りリビングのダイニングテーブルに置いた。
桃『こっちおいで一緒に食べよ』
赤『っ、』
声をかけるととてとてと歩いてきた。
椅子に座ってオムライスを赤の目の前に開ける。
赤『…!』
目をきらきらさせて手を合わせる赤が可愛くて口角が上がりそうになる
赤『食べていいの…?』
桃『いいよ、沢山食べな』
もぐもぐと口いっぱい頬張る赤を眺めながら俺もオムライスを食べる。
桃『おいしい?』
赤『…おいしいっ』
桃『良かった』
・
少し経つとスプーンを運ぶ手が止まった
桃『お腹いっぱいだったら残していいからな』
赤『…こくっ、』
桃『俺食べるよ』
赤『ごちそうさまでした…ッ』
桃『はいよ』
・
桃『風呂1人で入れる?』
赤『…こくっ、』
見る感じ何日も風呂に入ってないのだろう。
桃『上手く洗えなかったら呼んでな』
赤『わかった、っ…』
とてとてと歩きながら風呂場へ向かう赤を見送ってリビングのソファーに座りスマホをいじる。
20分程経つと風呂から戻ってきた。
桃『ん、おかえり』
俺の家には子供服なんてないから引き続き同じ服を来てもらった。
桃『服速達で適当に買ったから明日の昼には届くと思う』
赤『ぁ、ありがとう、ございます…』
桃『タメ口でいいからな笑』
頭を撫でてやると目を細めたが怯えから来るものじゃなさそうで安心する。
桃『腕の手当してもい?』
赤『こくっ、』
ガーゼに薬を塗り腕に乗せテープで固定する。
桃『今日は寝るか』
赤『ぅ、ん…』
寝室へ赤を連れていきベットに寝かせる。
桃『俺も一緒に入っていい?』
赤『こくっ、』
・
赤side
桃『俺も一緒に入っていい?』
そっと頷くと桃くんが同じ布団に入ってきた。
ハグも、
手を繋ぐのも、
頭を撫でられるのも、
全部初めてだった。
俺がいつもは怒られちゃうようなことをしても桃にぃは嫌な顔しないでしくれた。
桃にぃと一緒にいたい。
いつか追い出されちゃうのかな。
桃『あか、?』
赤『ぁ、ぅ…』
桃『体に力入ってるけどどした、怖い?』
赤『ぅぅ、ぐすっ、』
桃『大丈夫大丈夫…』
赤『ももにぃ、ずっといっしょ、?』
桃『…』
やっぱり困らせちゃう、。
赤『ごめ、なさッ、』
桃『一緒だよ。一緒に居よう。』
桃『この先もずっと一緒。』
赤『ほんと…、?』
桃『ほんと』
嬉しくて嬉しくて涙が止まらない。
嬉し涙ってやつかな。
嬉しくて泣いたの初めて。
桃『これから一緒に生きような。』
赤『…こくっ、』
俺の第2の人生がスタートした。
コメント
3件
がちでぴゃさんの作品神過ぎる(´;ω;`)大好きですほんとに()
赤くん良かったね! 最高すぎました!ありがとうございます!!