葛葉さんの背景に闇があります、、なんでもお許し頂ける方のみお進み下さい。
直接的な表現はありませんが、🔞を連想させる表現が多いです。苦手な方はお控えください。
『』叶
「」葛葉
叶side
『・・・疲れた。』
つい口に出てしまう。
今日も仕事帰りに繁華街を通って自宅への道を歩く。足元のスーツのパンツにもシワがより、まるで自分みたいに見えた。
今日は金曜日で世間では華金なのだろう、酔っ払いが道で寝ていたり、数人が大声で騒いだりしている。普段ならあまり気にならないが、今日はすごく疲れていたこともあり、どうも耳に障る。
『・・はぁ』
ため息をついてイヤホンをしようとポケットを探った時だった。
十数メートル先に歩道の手すりに腰をかけている白髪の男性が目に留まる。
誰かを待っているような様子でもなく、何かをしているわけでもない、ただ無気力に空を見つめている。
僕はなぜかその男性から目が離せず、耳につけようとしたイヤホンをポケットにしまい、歩き続ける。
少しずつ、少しずつ距離が縮まる。
その間もその男性のまわりだけ時間が止まっているのかというくらい、微動だにせず空を見つめ続けている。
『・・あの』
急にその男性に声をかけてしまった自分に驚きながら、口を開いてしまった手前、続ける。
『・・これから時間ありますか?』
「・・え?」
『いや、あの、飯行きませんか?』
「・・は?」
『あ、誰か待ってるとかなら良いです、暇かなと思っただけなんで、、』
「・・いや、別に、そういう訳じゃねーけど、、」
『焼肉、、奢りますけど、、』
「・・・」
その男性は何も言わなかったが腰掛けていた手すりから腰を上げ僕の隣に立つ。腰掛けていたからよくわからなかったが、僕よりも背が高い。
「・・行く」
『じゃあ、行きましょう』
僕はなぜ他人をご飯になんか誘ってるんだろう。さっきまでため息ついて疲れたとか言ってたのに。
自分でもやっている事の意味がわからないが、奢ると言ってしまったので、たまに行く焼肉屋に足を運ぶ。
僕の隣を猫背で歩きながらも男性は口を開かない。僕も別に何かを聞いたりすることなく、ひたすら二人で歩き続ける。
カランカラン
?「いらっしゃいませー!何名様ですか?」
『2名です』
店員にボックス席に案内され、向かい合って座る。
?「お飲み物先にお伺いします」
『ビールで』
「・・オレンジジュース」
・・その見た目でオレンジジュース?と思いながらも特に何も言わず、メニューを見て僕は口を開く。
『・・どれ、食べたいですか?』
「・・・いや、なんでも、、」
『じゃあこれとこれ、あとこれも頼みますね』
「・・これも、」
『わかりました』
ベルを押し、店員に肉の注文をする。
飲み物で喉を潤しながら、目の前の男性を眺める。
白髪で目は赤く、着ている洋服はちゃんとしているのにどこか虚ろな目で目の前の網を見つめている。
肉が届き、僕がトングで肉を焼くと、肉に合わせて男性の視線が動いている。
『・・肉、好きなんですね』
「・・え?」
『めちゃくちゃ目で追ってるから、、』
「あ、、」
僕が言うと慌てて肉から視線を逸らし、少し下を向く男性。
『結構おなか、空いてます?』
「・・うん」
『良かった、いっぱい食べてください』
「・・・」
お互い特に話もせず、ひと通り頼んだものを食べ、ついでにデザートのアイスまで食べて席を立つ。
二人分の料金を支払い、店のドアを開ける。
『・・じゃあ、付き合ってくれてありがとうございました。僕はこれで、、』
「・・え?」
『え?』
「・・俺何もしてないけど」
『え?だって僕が一方的に誘っただけなんで』
「・・いや、さすがに、、悪いし、、」
下を向いてモゴモゴと話す男性。
『・・じゃあちょっと話しますか』
「え?」
僕はそう言いながら歩き始める。男性はハテナを浮かべながらも僕に着いてくる。
そういったものの、僕もどこに行ったらいいかわからず、気づけば自宅の前に着いていた。
『・・すみません、家なんですけど、』
「えっあ、あぁ、、」
僕は明かりをつけながらリビングに男性を案内する。
男性はキョロキョロしながらリビングのソファに控えめに腰を下ろす。
『・・コーヒーとか飲めますか?』
「・・牛乳入ってれば、、」
・・たしかにさっきもオレンジジュース飲んでたしなぁ。
コーヒーに牛乳と砂糖を入れたカフェオレを作り、男性に手渡す。
「あ、ありがとう、、」
『・・飲めます?』
「・・美味い」
『ふふ、良かった』
僕も彼の隣に腰を下ろし、コーヒーを口にする。
『・・何て呼べばいいですか?』
「えっ、、あ、葛葉」
『葛葉さんか、僕は叶です』
「・・・」
『葛葉さんはどのあたりに住んでるんですか?』
「・・ない」
『え?』
「決まった家とか、ない」
『あ、え、、』
「・・・」
『・・・』
聞いてはいけないことを聞いてしまった様な気がして、僕が焦っていると、
『えっ、な、なに?!』
突然屈んで、僕のズボンのチャックに手をかける葛葉さん。
『ちょっ、、やめてください!!!!』
半ば強引に葛葉さんの肩を押しながらそう言うと、不思議そうな顔をする葛葉さん。
「・・え、これに呼んだんじゃねーの?」
『はぁ?!?!』
「・・てっきり、そーゆーのかと、、」
『ち、ちがいますよ!!』
「・・じゃあなんで飯なんか、、」
『だからっ、普通に一緒に食べたかったんだって!』
「・・・」
『と、とにかく、そこからどいてください』
立ち上がり、僕の隣にまた腰を下ろす葛葉さん。
『あぁびっくりした、、』
「・・悪い、はやとちりした」
『・・そういうの、するんですか?』
「・・・」
『あ、言いたくなかったら別に、、』
「・・求められたら、する、」
『・・・』
「・・・」
『・・今日、泊まるとこどうするんですか?』
「・・また適当に探す」
『・・泊まってったら、どうですか?』
「・・え?」
『良ければ、ですけど』
「・・良いの?」
『・・良いですよ、別に』
「・・・」
『あ、別にさっきみたいなのがしたい訳じゃないですから!!』
「・・ありがと」
『え?』
「・・実際泊まるとこ困ってたから」
そう言いへにゃっと笑う葛葉さん。
その笑顔につられて僕も笑ってしまう。
『お風呂ためるから、ちょっと待ってて』
「・・うん」
急遽人を泊めることになり、部屋着や歯ブラシを準備する。そんなことをしているうちにお風呂が沸く音がする。
『葛葉さーん、お風呂入って〜』
洗面所から大きな声で呼ぶと、スタスタとやってくる葛葉さん。
『はい、これ僕のだけど寝巻き。ここにタオル置いとくし、歯ブラシはこれ使って。シャンプーとかは適当にそのへんのやつ。』
「・・ありがとう」
葛葉さんをお風呂に送り出し、洗面所を出て僕は呆然とする。
・・布団、無いじゃん。
シングルサイズのベッドしかない、来客用の布団もない。リビングのソファで寝てもらうことも考えたが、今は冬でさすがに毛布がないと寒いだろう、、
ガチャ
「わっ」
『ごめんなさい、あの、』
「な、なに、」
『布団が、ひとつしかなくて、、』
「あぁ」
『その、一緒に寝る感じに、、』
「むしろいいの?」
『や、僕は別に、、』
「俺は全然良いけど、、」
『・・じゃあいいか、』
浴室のドアを閉め、リビングで待つ。
僕は何してるんだろう。疲れて帰ってきてご飯なんて食べなくてもいいやって思ってたのに。帰ったらベッドに倒れこもうと思ってたのに。
なに知らない男性に飯奢って、家あげて、一緒に寝ようとしてるんだろう、、、
目の前の何も映っていないテレビの画面にうつる自分の顔を見ると、普段より少し楽しそうな顔をしている。
そんな自分を我ながら不思議に思いつつ、スーツのままぼーっとしていると、リビングのドアが開く。
「・・上がった、ありがとう先に」
『あ、ううん、じゃあ僕入ってくるね』
「うん」
『水とか、適当に飲んでいいからね』
「うん、ありがとう」
僕もお風呂に入り、スキンケアまでしてリビングに行く。葛葉さんはさっきと全く同じ姿勢で携帯をいじっていた。
『・・寝よっか』
僕がそう声をかけると頷いて立ち上がる葛葉さん。
成人男性2人が並んで寝るには狭すぎるベッドに潜り、布団をかけて電気を消す。
『・・葛葉さん寝れそう?』
「うん」
『狭くない?』
「いや別に」
『おやすみなさい』
「・・うん」
・・・
葛葉side
夜中にトイレに行きたくなり、隣で寝ている叶さんを起こさないようにそっとベッドから抜け出す。トイレから戻り、またそっとベッドに戻る。目を閉じようとした時、ふと隣に寝ている叶さんの顔を見ると、寝ているが目から涙がこぼれている。
「・・え」
『・・・』
「・・叶、さん?」
『・・・』
「・・寝てんのか」
叶さんの顔を眺めるように、肘を着いて横向きで横たわる。
叶さんは寝ているが、目からはとめどなく涙が溢れている。
・・嫌な夢でも見ているのだろうか。
俺はなんとなく叶さんの首の下にそっと腕を差し込み、叶さんを自分に抱き寄せた。
叶さんは起きることなく俺の胸で涙を流し続けている。俺もそのまま目を閉じた。
・・・
(翌朝)
叶side
『・・ん、、?!』
目を開けると、目の前に葛葉さんがいて抱きしめられていることに気づく。
・・なんで、、僕なんかしたっけ、、
慌てて昨日の記憶を呼び起こすも、一緒にベッドに入って普通に寝たことしか思い出せない。
下手に動いてまだ寝ている葛葉さんを起こすのもあれなので、僕は謎に抱きしめられたまま目を閉じる。
葛葉さんの体温に包まれて、背中に回された手も温かい。そうしているうちにまた眠たくなり、今日は休日だという安心感と一緒にまた眠る。
・・・
『・・んぅ』
「・・・おはよう」
『・・おはよ、、ってなんでこうなってるんでしたっけ、、僕なんかした、?』
「・・・叶さん、泣いてた、から」
『・・え?』
「・・頑張ってんでしょ」
『・・・』
僕のことなんか何も知らないはずの葛葉さんにそんなことを言われて、なぜか涙が溢れ出す。
・・なんでこんな知らない人の前で泣いてるんだろう、、
『・・ぐすっ、、ごめん、なんか、、』
「・・いいよ、泣いたら」
『・・うぅっ、、うっ、、ぐすっ、、』
自分でも何に泣いてるのかすらわからなかったが、僕の目からは涙が止まらない。
葛葉さんは何も言わずにそんな僕を強く抱きしめている。
・・・
「・・落ち着いた?」
『・・うん、ほんとにごめん、なんか、、』
「いや、、泣くほど頑張ってんでしょ」
『・・・』
「・・・」
『・・朝ごはん食べる?』
「・・いいの?」
『うん、パンでいい?』
「・・うん」
僕はベッドから起き上がり洗面所で顔を洗う。
・・泣いてしまった、それも全然知らない男性の前で。
僕は男性と付き合ったり、そういうことをしたりしたことはない。別に嫌悪感もないが、そういう人もいるんだな、くらいだった。
でも今日葛葉さんに抱きしめられて泣いた時、どんなにお気に入りの歌を聴いたり、お気に入りのごはんを食べたりするよりも僕の心は正直に感情を吐き出していた。
『・・参ったなぁ、』
小声で呟き、キッチンでトーストと即席コーンスープと目玉焼きを準備して葛葉さんを呼ぶ。
『大したものなくてごめんね』
「いや、、、美味そう」
『あとこれ、カフェオレね』
「・・ありがと」
休日の朝と言ってももうお昼前だが、昨日出会った見ず知らずの男性とのんびり朝ごはんを食べる。
何を話す訳でもないが、僕はこの時間がたまらなく幸せだった。この時間がもっと続いて欲しい、、そう思ってさえいた。
葛葉さんが食べ終わり、カフェオレの最後の一口を飲み終わった時、僕は咄嗟に口を開いてしまった。
『あの、葛葉さん』
「ん?」
『今日って予定ある?』
「・・いや、ねぇけど」
『あの、その、、』
「?」
『・・もし良かったら、これからもここに住まない?』
「え、、」
『いや、あの、布団はもう1つ買うし、服とかも買うし、その、、』
「・・なんで?」
『え?』
「・・なんで俺みたいなの気にかけんの?」
『・・・』
「同情?・・だったらやめとけ、」
『・・葛葉さんに、その、そういうこと、して欲しくない、、特に他の人と、、』
「・・・」
『あ、僕がしたいって訳じゃなくて、、』
「・・・」
『・・ごめん、僕、なんか独りよがりで、、葛葉さんの気持ち考えてなくて、ごめん、、』
「・・ふはっ」
吹き出す声が聞こえ、顔を上げると葛葉さんが笑っている。
『えっ』
「おまっ、、素直に俺とヤリたいって言えばいいのに」
『違う!!ほんとに違うんだって!!』
「いいよ?俺は別に、あんたかっこいいし」
『ほんとに違う、、ただ一緒に居て欲しい、、それだけじゃ、ダメなの?』
「・・っ!」
『・・・なんていうか、その、好き?になったと思う、たぶん』
「・・・は」
葛葉さんは口をあんぐりあけて見たことないものを見るような目で僕を見ている。
『僕、男性と付き合ったこともないし、そういうのしたこともないよ、だからほんとにヤリたいとかそういうんじゃない。葛葉さんと一緒にいたい、それだけなんだけど、、』
「・・・」
『・・だめかな?』
「・・変な奴」
『え?』
「・・そんなこと言ってくる奴いなかったよ、今まで」
『・・・』
「ヤッて、金もらって、終わりだった」
『・・・』
「・・いいの?俺こんなだけど、汚いs」
『やめろよ!!!!!』
葛葉side
突然、見た目からは想像できない声量でそんなことを言われ、俺はさらにぽかんとして叶さんを見る。
『なんで、なんでそんなこと言うんだよ、、僕が、好きになっただけで、葛葉さんは素敵な人なのに、、そんな、そんなこと言わないで、、』
俺を睨むような眼差しで涙を流しながら叶さんは続ける。
『・・葛葉さんは、、素敵な人だよ、』
「・・・」
『・・僕のことが嫌だったら、出ていってもらって構わないです、止めませんから、、』
幼子のように目の前で泣きじゃくる男性。
俺が関わってきた奴でこんな奴はいなかった、
俺のためにこんなに泣いてくれる奴は、、、
・・あれ、俺なんで泣いて、、
『・・葛葉さん!!』
叶さんが俺にかけより苦しいくらいに俺を抱きしめる。
「・・叶、さん、、」
自分の中のぐちゃぐちゃな感情を涙として吐露しながら俺も叶さんの背中に手をまわす。
「・・・一緒に居ても、いいの?」
『・・うん、一緒に居てほしい』
「・・・」
『僕、ぜったい大切にするから、、だから、だから二度と自分のこと、汚いとか言わないで、、』
「・・・うん」
・・・
叶side
『じゃあ、とりあえず服とか買いに行こっか』
「ほんとにいいの?」
『うん、背が高いからその寝巻きもサイズ合ってないもんね』
「・・・」
『あと布団も買わなきゃね』
「いいの?一緒に寝なくて」
『・・っ!いや、その、たまには、、』
「あっははは!!!」
葛葉さんが見たことない笑顔で大口開けて笑っている。
『もう、からかわないでよ』
「お前、ウブでかわいいな」
『・・やめてよ』
僕が顔を赤くして俯くと、笑いながら頭をぽんぽんと叩く葛葉さん。
『もう、いつか見返してやるから』
「ほーん、まぁ待ってるわ」
『馬鹿にすんなよ、、』
「www」
『とりあえず、外に出よ』
「おう」
ガチャ
「『眩しっ』」
二人してハモってしまい、笑いながら明るい道を並んで歩く。
『ねぇ、葛葉でいい?』
「いいよ、叶」
『僕まだ呼び捨て許可してないのに、、』
「だめじゃないだろ」
『まぁ、そうだけど、、』
おしまい
コメント
4件
主様の書く文章凄く読みやすくてストーリーに入り込みやすいので、今回も読み進めていくにつれて知らず知らずの内にストーリーにしっかり入り込んでしまっていました…!w今回の社畜knとヒモkzのお話、とっても心がふわふわしました!これからこの2人には幸せに過ごしてほしいなあってつい思っちゃうような…!!(語彙消失)これからも主様の他の色んなもしもくろのわ話、うっきうきで楽しみに全力待機させて頂きます…!✨
口角飛んで行きました😊 ありがとうございます🙇♀️ 次回も楽しみに待ってます!!!!!