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「紺野さん…1つ聞きたい事があったんです」
駅に向かって、ひたすら黙って歩いていると、葵さんが何かを思い立ったかのように口を開いた。
「何ですか?」
「紺野さんの家に、これくらいの大きさの“木の箱”ってありませんか?」
葵さんは手を使って“木の箱”の大きさを示してくれた。
「木の箱?」
「大きさは大体、縱×5㎝ 横×10㎝ 高さ×5㎝位の直方体です」
「どこかで見たような気はするんだけど…どこだっけ?」
子供の頃に、どこかで見た事があったような…。
間違いなくどこかで見ていると思うけど思い出せない。
「わかりませんか?」
葵さんは、真剣な表情で僕を見ていた。
その様子から、ただ事ではないとわかった。
「すいません、前にどこかで見たような気がするんですけどわかりません…。でも、その“木の箱”って何なんですか?」
「茉奈ちゃんを助けるカギになると思うんです」
「その箱が見つかれば茉奈ちゃんが助かるって事ですか?」
「もしかしたら…‥」
茉奈ちゃんが助かるかもしれないという微かな光が射し込んできたにも関わらず、葵さんの表情は冴えなかった。
「それより何で僕の家にあると思ったんですか?もしかして何か見えたんですか?」
「断片的にですけど…ハッキリ見えないんです。もしかすると能力者が絡んでいる可能性があります」
「能力者?」
「能力者は自分の痕跡を残さないように、ガードをかけるんです。そうすれば他の能力者に嗅ぎつかれずに力を使う事が出来るからです」
「だとすると、能力者が葵さんの言っていた“木の箱”を僕の身近などこかに?」
「たぶん…」
葵さんの表情から、僕に言えないような映像を見てしまっている事はわかった。
「葵さん…本当は何か見えてるんですね?」
「えっ!?」
「見せて下さい」
「駄目です。また、意識を失うかもしれません」
葵さんは合わせた目を決して離そうとしなかった。
「それでもいい。茉奈ちゃんを救うカギが見つけられるなら多少のリスクは背負うつもりです。僕にしかわからない事があるかもしれません。だから見せて下さい!」
僕は、返事を待たずに葵さんの手をそっと握った。
ドンッ!?
すると以前と同じように、体中に衝撃が走った。
そして…僕の目に飛び込んで来たのは、見た事のある街並みと、小さい頃よく母さんと一緒に歩いた田舎の田んぼ道だった。
これって…もしかして母方の祖父母が住んでいる実家の風景…。