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ひより
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#主人公最強
杯雪乃
401
「ママっ!!」
私たちが『水の迷宮』から戻ると、その出口ではリリーが待っていた。
リーダーさんから聞いてはいたものの、本当にずっと待っていたのかな。
……何せ、今日この時間に戻るだなんて、そんな確証はまったく無いのだから。
「ただいま、リリー!
ずっと待っててくれたの?」
「なの!」
リリーは元気良く、私にしがみついてきた。
ああもう、可愛いなぁ。この出迎えだけでも、ずっと頑張ってきた甲斐があるというものだ。
「うわぁ……。本当にずっと待ってたんだ……」
私の後ろから、リーダーさんの驚きの声がした。
しかしそれを気に留める様子もなく、リリーは今なお頬擦りをしてくる。
――ぐぅ。
「むぅ……。ママー、お腹が空いたの!」
「え、えぇ? 待ってたのは良いけど、ちゃんと食べてた?」
私の言葉に、リリーは首を横に振った。
余談ではあるが、リリーはお腹はしっかり減るものの、食べなくても死ぬということは無い。
……でも、食べられるのであれば、しっかり食べておいた方が良いよね。
空を見上げれば、時間は昼過ぎというところだ。
天気も良いことだし、ここはしっかり昼食をとることにしよう。
幸い、この辺りには露店がたくさんあるのだから。
「リーダーさんたちは、すぐに街に戻りますか?」
「話を聞いてたら、ちょっとお腹が空いてきちゃったかな……。
なぁ、みんな。一緒に食べていかないか?」
「おっ、賛成だぜ!」
「良いわね!」
「やったー♪」
……どうやら|紅蓮の月光《クリムゾン・ムーン》の四人も食べていくようだ。
それならリリーとも面識があることだし、一緒に食べていくことにしよう。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「――ダンジョンの中でも思っていましたけど……。
エミリアさんって、たくさん食べる方なんですよね……」
エミリアさんの食べっぷりを眺めながら、メンヒルさんが感心しながら言った。
最近ではエミリアさんも食べる量を隠そうとしないし、私たちにとってはありふれた日常になっている。
「えへへ♪」
エミリアさんは肯定するでもなく、否定するでもなく。
目の前の料理を美味しそうに平らげていく。
「……エミリアさんは、アイナさんの親友……みたいな感じですか?」
「え?
うーん、何でしょうね?」
「何……って、アイナさん酷いっ!!」
「いやぁ……。仲間だし、親友だとも思っているんですけど……。
ちょっと付き合いが深すぎて、それだけで済むのかなーって……」
「なるほど!」
私のふわっとした答えに、エミリアさんは満足げだった。
「はぁあ~……。何て素敵な関係なんでしょう……」
「メンヒルさんには、そういう方はいないんですか?」
「私は|紅蓮の月光《クリムゾン・ムーン》のメンバーとずっと一緒にいますから……。
やっぱりマリモちゃんと、一番仲が良いですね」
「ん?
私だって、メンヒルちゃんのことは仲間だとも思っているし、親友だとも思っているよ?」
マリモさんは目の前の串焼きを食べながら、事も無げに言った。
「そ、それならマリモちゃん! お願いがあるんだけど……」
「……私、エミリアさんほどは食べられないよ?」
「えぇー……?」
……?
良くは分からないが、メンヒルさんとマリモさんの間で、何か話が通じ合っているらしい。
確かにこの言葉数だけでこんなにも伝わるのなら、親友と言っても過言では無いだろう。
……長年連れ添った夫婦のような感じもするけど。
「ママーっ! お代わりを持ってきたのーっ」
「たくさん買えましたぁ……♪」
そうこうしていると、リリーとセミラミスさんが、大きなお皿に大量の料理を乗せて運んできた。
総勢8人で食事をしているから、露店でたくさん買ってきてもらったのだ。
「リリー、ありがとー。
セミラミスさんも、すいません。一緒に食べましょう!」
「えぇー……。わ、私は運ぶ係で大丈夫です……!」
いやいや、セミラミスさん。
あなたはこの場にいたくないだけでしょう。
しっかり話をして、しっかりコミニュケーション能力を磨きましょう。
私は強引にセミラミスさんを座らせて、一緒に食事をすることにした。
いつも通り、はわわっとしていたけど、それもいずれ直っていくことだろう。……多分。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
食事も終わってのんびり話をしていると、遠くからリーダーさんに手招きをされた。
用事があるなら普通に話し掛けてくれれば良いのに……?
何か内緒の話でもあるのかな?
私が立ちあがると、リーダーさんは少し離れた岩陰に走っていった。
ふむ、本当に内緒話ということか。
「――呼びました?」
「ああ、うん! ごめんね、ゆっくりしているときに」
「いえ、大丈夫ですけど……」
私とリーダーさんのいる場所は、大きな岩の裏側。
暗くはないが、周りからは見られない、ちょっとしたポイントになっているようだった。
「えーっと……。
……あの、改めてお礼を言いたかったんだ」
「お礼?」
……そう聞いて、何も思い浮かばないほど呆けてはいない。
命を助けたり、食事の準備をしたり、それなりにはしてきたからね。
「うん。
……俺たち四人、命を助けてくれて、本当にありがとうございました!
誰ひとり欠けることなく戻って来れたのは、アイナちゃんのおかげです!」
「いえいえ。本当に偶然なんで、あまり気にしないでください。
これも何かの縁……ってやつですから」
「あそこで助けてもらったのは、偶然とは言え、本当に運が良かった……。
ガチャでは散々な目に遭ったから、それで相殺されたのかな……。いや、それどころじゃ無いんだけど……」
「あ、リーダーさんもガチャをやったんですか? どうでした?」
……まさかリーダーさんまでガチャをやってくれていたとは!
そして気になる、他人のガチャ結果。
他人の不幸は蜜の味――とまでは言わないけど、やはり気になるのが人の|性《さが》というものだ。
「ははは……。俺たち四人で、一人一回ずつやったんだけど……。
全部D賞だったよ……」
「なむー」
「え?」
「ああ、いえ。私の故郷の、慰めの言葉みたいなものです」
「そうなんだ。へぇ、初めて聞いたなぁ」
厳密には全然違うんだけど、ネットの世界ではそんな感じで使われたりもする。
つまりこれは、慰めの言葉と言っても差し支えは無いだろう。
「ちなみに私はC賞ひとつ、D賞ふたつ、でしたね。
なかなか良いものは出てくれなくて……」
「お互い損をしたねぇ……。
――それで、話は戻るんだけど……、俺にはお礼であげられるものなんて無いから……これを受け取って欲しいんだ」
そう言いながらリーダーさんが出してきたのは、年代物の指輪だった。
「……これは?」
「うん。俺が17階で拾ったものなんだけど……。
あそこではみんな、宝箱を1つずつ開けていたみたいなんだ。
だからそれぞれ、手に入れたものは自分のものにしようって話になってさ」
「えぇー?
さすがに17階で手に入れたなら、貴重なものかもしれませんよ?」
「ははは。自分と仲間たちの命以上に、貴重なものなんて無いよ」
……確かに。
私だって、エミリアさんやルークの命を助けてもらったら、それこそ全力でお礼をするだろう。
「んー……。
……でもこれ、私がもらって良いんですか?」
「え? もちろんだよ!」
一緒に過ごした感じ、メンヒルさんもマリモさんも、リーダーさんのことが好きっぽいんだよなぁ……。
そんな二人をさて置いて、お礼とは言え、拾いものとは言え、他の女の子に指輪なんて、あげちゃっても良いものなのか……。
……まぁ良いか。
問題が起きるようなら、そのときは返してあげよう。
またきっと、そのうち会うだろうしね。
――って、岩陰から誰かの気配がするぞ……。
嫌な予感。……ここはさっさと切り上げることにしよう。
「……そうですね、それではありがたく頂きます。
もし困ったことがあれば、いつでも気軽に相談してください」
「うん、ありがとう!
しばらくはマーメイドサイドにいるから、また会おうね!」
「はい!」
……その後は、みんなで街に向かって、そこで解散。
――はぁ、それにしてもなかなかの長旅だった……。
今日は久し振りに、柔らかいベッドでぐっすり眠りたいところだ……。
コメント
1件
みぅだよ🤍 今日のエピ、めっちゃ良かった……! リリーがずっと待っててくれてて、ママにしがみつくシーン、もう可愛すぎて胸がきゅーってなったよ🥺 あと、リーダーさんが指輪くれたシーンは、ちょっとドキドキしたけど……岩陰から気配がしたの、絶対メンヒルさんかマリモさんだよね?笑 この後のゴタゴタが想像できて、ちょっとニヤニヤしちゃった🌙 セミラミスさんが相変わらずはわわしてて、それもまた愛おしかった……! ゆっくり休んでね、アイナさん。お疲れさま🤍