テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
4,882
103
佐野side
初めて見た時、絶世の美女ってこういう人を言うんだと思った。白くて触れるとすぐに壊れてしまいそうな華奢な体、どこか虚ろで儚げな表情、吸い込まれそうな黒い瞳、重たい前髪や綺麗な指先まで…
全てが魅力的で一目惚れだった。
確か、最初に出会ったのは事務所のスタジオで個人練をしてた時。
鏡越しにスタジオの扉から覗く小さな顔に気づいた。
キュルキュルっとした綺麗な瞳は鏡越しでもよくわかった。
集中していた手を止めて、思わず扉を開けていた。
スタッフさんから今度研究生として配属される子だよって説明をされて、自分の事務所ながらすごい逸材を見つけてきたなぁと感心した。
そんな貴方はいつしか、ともに人生を歩むグループの一員になっていた。
抑えきれなくなりそうだった気持ちに重たい蓋をした。
だって同じグループの一員。
絶対に踏み込んではいけない領域だと思ったからだ。
それに加えて絶対に超えられない壁があった。
同性。
これほど悔やむことはなかった。
神様は意地悪だ。
なぜ、これほどにまで愛おしい人を同じ性別にしてしまうのだろうか。
活動を始めて、蓋をしたはずの気持ちが抑えられなくなってきていた。
まだ見た事のなかった彼の一面。
笑うとクシャクシャになる顔、プクプクとした頬にえくぼ
年下だと感じる無邪気な瞬間や年下に見えないアンニュイな表情、年々大人びてきている体や顔にまた一つ好きが加算されていく。
最初は敬語だった。
名前も「佐野さん」としか呼んでくれなかった。
距離を感じて、敬語禁止令を出した。
徐々に言葉がほぐれ、名前もいつしか呼んでくれた。
あの印象的なクールな目が細くなり目尻が垂れる笑顔で今日も柔らかく名前を呼ばれる。
「はやちゃん」
いつしか抑えきれなくなっていた。
この気持ちには嘘をつけない、つきたくない
だから、俺は彼をこう呼ぶことにした
「姫」
この言葉で彼を自分の中で彼女に仕立て、やり過ごしていた。
だけど…もう…。
「我慢したくないなぁ」
コメント
1件