過去編
『まぁ…話しますね』
《聴きたい…》
【俺も、ずっと気になってた】
『じゃあ…』
『time reap』
ずっと昔、13年前。
『お母さん!競技場…行ってみたい!』
昔の自分は、無邪気で、年相応の子供、という感じだった。
競技場で、魔法を出している人に心を惹かれた。
競技がない時はフリーで使用できる為、母親にせがんで、グラウンドに降り立った。
ずっと観ていたアニメのように、呪文を唱えた。
誰も、俺には興味がない。当たり前だ。だってこんなにも幼い子供が魔法を出せるなんて、思ってもみないから。
でもその瞬間、最大火力の雷が、轟音と共にグラウンドに落ちた。
落ちた所だけ、現実離れしたパラレル空間のように、抉れていた。
この時は知らなかった。
この能力のせいで、後悔する事を。
大人に称賛される毎日。別に嬉しくもなかった。周りの子供とも、上手く仲良くなれなかった。
でも、母さんに褒められるのは、嬉しかった。
小学校に上がり、何もない、平凡な日々を過ごしていた。母親の為に、土日は競技場に通い詰めていた。
忘れもしない、3年の春。友達もできて、平凡だけれど、少し楽しい日々だった。
でも、あの日、俺は変わってしまった。
先生〔おんりー君…言いづらいんだけど…貴方のお母さんが…〕
『は…?』
空気が凍りつく。その空気感を掻き分け、ランドセルも持たずに、先生に止められても全速力で教室を、学校を出た。
ひたすら走って、病院に向かう。医者と警察官に告げられた事はただ一つ。
〔お母様は、残念ながら…〕
もう聴きたくない。嫌だ。母さんは…居なくなっちゃうの?
警察官が言っていた…あの警察署に行けば…殺せる?
あの頃には、純粋な子供ではなく、狂った子供へと、変わってしまっていた。
警察官の静止を振り切って、走って病院を出て、近くの警察署に。
この事故は、とても大きな交差点で起き、沢山の人が怪我をした。
でも、亡くなったのは母さんだけだった。
警察署の周りには野次馬、レポーター、警察官が集まっていた。
鬱陶しい。
『全員死ねばいいのに。』
口から出た言葉に驚く。
『warp』
そう唱え、犯人が1人の部屋に向かう。外には警備も居たが。
犯人〔お前は…?〕
『あは、名乗るわけないじゃないですか。だって名乗ったら…』
僕も犯人になってしまうので。
そう言って、
『poison』
と呟く。奴は目の前でのたうち回る。
『お前は…俺から何もかもを奪ったんだ‼︎』
『母さんを…返せよっ‼︎』
思わず手が出る。奴は拳に当たり、そのまま倒れる。
『あれ…?あはは、こいつ…死んだ…?』
警察官〔誰か居るのか⁉︎〕
まずいっ‼︎大急ぎでワープする。
『warp』
屋上に出て、ホッとして座り込む。
何もせず、3分くらい座っていた。
警察官〔は…?少年?〕
『あ、警察』
警察官〔こういう者なんだけど、ちょっと君さ、着いてきてくれない?〕
嫌っ…母さんに…会わないとなのに…
空を飛ぼうとすると他の警察官に取り押さえられる。
『痛った⁉︎』
警察官〔君…?〕
『っ…離せよっ‼︎』
そう言った瞬間に、屋上に雷が落ちる。
轟音と共に、焦げ臭い匂いが充満する。
警察官〔何っ⁉︎お前…〕
怯んだ隙に逃げ出し、柵を飛び越える。瞬時に翼が生え、空に浮く。
あれ…?魔法唱えてないのに。あれ…使おうと思っていないのに。
屋上。少年がいた。深緑の所々はねた髪、黒縁のメガネという、おとなしそうな子供だった。
でも…犯人が居た部屋にいた少年と、完全に一致している。彼は犯人を殺したのだ。それを、防犯カメラが捉えていた。
応援を呼び、押さえつける。少年はひどく抵抗する。
でもどうせ子供の力…そう舐めていられるのも、一瞬だった。
瞬時に雷が落ち、轟音と共に、焦げた匂いが充満する。
そして、床は酷く抉れていた。驚いた隙に、少年は柵を飛び越える。
そして、彼の背中に瞬時に翼が生える。
彼の瞳は、大人しそうな、美しい深緑の瞳だった。ただ、空にいる、今の少年は…
片目が、赤く光り輝いていた。
表情もなく、ただこちらを見つめて、そのまま空へと上昇していった。
自分達は、少年相手に敗北し、唖然とするしかなかった。
快晴で、あたり一面真っ青な空。
『母さん…』
上には、雲がある。あれ、地上からは見えなかったのに。
母さん…?いるの…?
疑問が頭を回る。今の高度は約200m。地上がかろうじて見えるくらいだ。
鬱陶しいな。人々はこちらを見つめてくる。周りにはヘリが飛んでいる。
その中でも、ただ1人。孤独。
あーあ。全員、この世から消え去ってくれないかな。
そんな事を思っていると、快晴だった空が一気に曇り始め、自分の周りにはよくわからない物体が取り憑く。
一瞬で大雨が降る。
あはは。惨めだなぁ…苦しんでほしいなぁ…
雷が激しく鳴り、また街に落ちる。
風もとても強くなる。
あれ…?体が濡れない。周りに紫色の、魂のような物が取り憑く。手を前に出し、降ってきた雨粒が手にかかる。それを引き寄せる。
『片眼が赤い…?』
雨粒が反射し、自分の顔が映る。そう。普段は深緑色の瞳が、紅のような色に輝いているのだ。
ずっと昔に読んだ本。
『異能力を持つ人は、本当に心が揺るがされる事が起きた時、覚醒しますーーーー』
覚醒…?なぁんだ、そういう事か。くだらない。
上昇をしようと、風を蹴る。すると、誰かの声が。
警察官〔おい!そこの少年‼︎投降しなさい‼︎〕
はあ…鬱陶しい。
『なんなの?嫌だよ。鬱陶しいなぁ。』
自分の気持ちを表しているかのように、遠くで雷鳴がする。
〔いいから…こっちにきなさい!〕
『煩いっ‼︎静かにしてよっ‼︎』
怒鳴ると、また近くでこれまででも一番大きい雷が落ちる。ビルが、炎で包まれる。
『なんなんだよ…みんな俺から全てを奪うくせに…‼︎』
『なんで…俺のせいになるんだよ…』
『母さんを…俺の大切な人を返せよっ‼︎』
その瞬間に強風が起こる。警察官達が乗ったヘリは風によってどこかへいってしまった。
1人。涙がこぼれ落ちる。母さん。母さん。母さん。必死に探して、探し続ける。
居ないと、わかっているのに。
前を向く。遥か遠くに、黒い髪の、ワンピースを着た人がいた。母さんと一緒だ…すると、その人は、ふふっと笑った。その瞬間に、大きな声で泣いてしまった。
ごめんなさいっ…心の中で、ずっと謝っていた。
その後俺は警察に向かい、全てを話し、解放された。あの日から、魔法が使えなくなった。
『って感じです。』
「なんか…人間離れした人生だなあ…」
【ニュースになってたよね〜】
《お母さん想いなんだな。》
〈おんりーの事、教えてくれてありがと‼︎》
『あははっ…まあ面白くなかったと思いますけど…』
いや何が面白くないだよ。そう思う昼過ぎだった。
いぇい⭐︎続けようか完結しようか考え中w