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×××が猫になっちゃった⁉︎
朝、キルアが目を覚ますと、布団の上に見覚えのない小さな猫がいた。
白っぽい毛に、きょとんとした大きな目。
「……誰だよ、お前」
そう言いながら近づいた瞬間、
猫が小さく「にゃっ」と鳴いて、キルアの指にすりっと頭をこすりつける。
「……は?」
その仕草、表情、間の取り方。
嫌な予感がして、キルアは目を細める。
「……×××?」
名前を呼ぶと、猫は一瞬止まってから、
分かりやすくしっぽをぶんぶん振った。
「……マジかよ」
ため息をつきつつも、キルアはそっと猫を持ち上げる。
暴れないし、むしろ安心したみたいに丸くなる。
「昨日まで普通だったよな……。
なにやったら猫になるんだよ」
猫の×××は、小さく「にゃぁ」と鳴いて、
キルアの服の袖をちょいちょい引っ張る。
「……甘えんな」
そう言いながらも、
キルアは自分の膝の上に猫を乗せてやる。
「仕方ねーな。
戻るまで、俺が面倒見るしかないだろ」
指でゆっくり背中をなでると、
×××は気持ちよさそうに目を細めて喉を鳴らす。
「……ほんと、猫になっても変わんねーのな」
小さく笑って、キルアはぽつり。
「ま、悪くないけどさ。
ちゃんと戻れよ。
話せないのは、ちょっと寂しい」
そう言って、
膝の上の猫をもう一度やさしくなでた。
キルアは一度深呼吸してから、ベッドを整え始めた。
猫の×××を休ませるためだ。
シーツを直して、枕を動かして――
そのとき、ベッドの端に畳まれた服が目に入る。
「……ん?」
手に取って、すぐに気づく。
「……これ、×××のだよな」
上着、制服、靴下。
そして一番下に、見覚えのあるインナー類。
「……は!?ちょ、待て待て待て」
一気に顔が赤くなるキルア。
「ってことは何だよ、
今……着てないってことか!?」
慌てて部屋を見回すけど、
いるのはベッドの上で丸くなってる猫の×××だけ。
「……マジかよ……」
猫の×××は、きょとんとした顔でこちらを見る。
何も分かってない様子で、しっぽをぱたぱた。
「いや、違う、怒ってるわけじゃなくて……!」
意味不明な言い訳をしながら、キルアは視線を逸らす。
「と、とりあえず!
俺は見てないし、気づいてないし、
なかったことにするからな!」
服をそっと元の場所に戻して、
猫の×××の方を見ないように背を向ける。
「……ほんと、心臓に悪いことばっか起こすなよ」
でも、少し落ち着いてから小さく付け足す。
「……無事なら、それでいいけどさ」
猫の×××が小さく「にゃぁ」と鳴いて、
キルアの背中にすりっと寄ってくる。
「……もう」
照れたまま、キルアはぽんぽんと軽く撫でる。
「早く戻れよ。
そのほうが……俺が落ち着く」
キルアは、さっき見てしまった服のことを思い出して、
内心ずっとそわそわしていた。
「……落ち着け、俺。
今は猫。猫だから」
そう言い聞かせていると、
ベッドの上にいた×××(猫)が、ちょこちょこと近づいてくる。
「にゃー」
小さく鳴いて、キルアの服の裾をくいっと引っ張る。
甘えるみたいに、すりっと体を寄せてきた。
「……っ」
キルアは一瞬固まる。
(待て。
今、近い。
しかも状況的に、俺が一番冷静でいなきゃいけないやつ)
でも、×××は何も分かっていない顔で、
安心しきった様子で丸くなろうとする。
「……もう」
ため息混じりに、キルアはそっとブランケットをかけてやる。
「寒いだろ。
ほら、ここなら安全だから」
距離を保つつもりだったのに、
×××はそのままキルアの腕に顔をうずめて、喉を鳴らす。
「……なんでそんなに信頼してくんだよ」
心臓がうるさくなるのを感じながらも、
キルアはゆっくり背中を撫でる。
「安心しろ。
ちゃんと守るから。変なことしねーし」
指先は優しく、動きは慎重で、
×××が落ち着くのを待つみたいに一定のリズム。
「……甘えたいだけなら、今はそれでいい」
猫の×××は、満足そうに小さく鳴いて、
そのままキルアの腕の中で目を閉じた。
「……ほんと、反則」
そう呟きながらも、
キルアは離そうとはしなかった。
「早く戻れよ。
……そのほうが、俺の心臓がもたない」
キルアはキッチンから戻ってきて、小さな袋を振った。
「……これなら大丈夫だよな」
中身を出すと、猫用のおやつ。
それを見た瞬間、×××(猫)の目がきらっと輝く。
「にゃっ!」
「そんな分かりやすく反応する?」
思わず笑いながら、キルアは床に座って少しだけ差し出す。
×××は慎重に近づいて、くんくん匂いを嗅いでから――
ぱくっと一口。
「……はは」
夢中で食べて、しっぽをふりふりしてる姿に、
キルアの表情が自然とゆるむ。
「喜びすぎだろ。
……でも、悪くないな」
気づいたら、スマホを手に取っていた。
音を立てないようにそっと動画モードにして、
おやつを食べる×××を映す。
「……これ、戻ったら見せたら絶対恥ずかしがるやつだ」
そう言いながらも、止めない。
×××は食べ終わると満足そうに顔を上げて、
キルアの方を見て「にゃー」と鳴く。
「おかわりはダメ。
……でも、よくできました、はアリ」
そう言って、指でちょんっと頭を撫でる。
×××はすぐにゴロゴロ喉を鳴らして、近くに寄ってくる。
「……ほんと、見てるだけで落ち着くな」
動画を止めて、スマホを置く。
キルアはそのまま床に座り込んで、×××を膝の近くに招く。
「今は猫でも、
戻っても、どっちでもいいけどさ」
小さく笑って。
「こうやって安心してる顔、
嫌いじゃない」
×××はそのまま丸くなって、
キルアのそばで目を閉じた。
「……よしよし」
静かな部屋に、
ほっこりした時間だけが流れていた。
キルアは引き出しを探って、猫じゃらしを取り出した。
「……これ、反応するよな?」
試しに、目の前でふわっと揺らす。
すると――
×××(猫)の視線が一気に集中する。
「……分かりやすすぎ」
次の瞬間、ぴょん!と前足が伸びた。
「にゃっ!」
「はは、ほら来た」
キルアは少しだけ意地悪に、
猫じゃらしを左右にゆっくり動かす。
×××は夢中で追いかけて、
ベッドの上をちょこちょこ跳ね回る。
「そんな必死になる?
……可愛すぎだろ」
気づいたら、またスマホを構えていた。
今度は堂々と動画撮影。
「よしよし、カメラ目線もらっとくか」
猫じゃらしを高く上げると、
×××が思い切りジャンプ――失敗して、
そのままころん、と転がる。
「……っ」
一瞬心配になったけど、
すぐに起き上がってまた構える姿を見て安心する。
「大丈夫か?
……もう、ほんと楽しそうだな」
動画越しに映る×××は、
目をきらきらさせて、しっぽをぶんぶん振っている。
「戻ったらこれ見せてやろ。
絶対『消して!』って言うやつ」
そう言いながら、
キルアの声はどこか嬉しそうだった。
最後に、猫じゃらしをそっと止める。
「はい、おしまい。
いっぱい遊んだからな」
×××は名残惜しそうにじゃらしを見てから、
とことことキルアの足元に来て、すとんと座る。
「……甘えタイムか」
小さく笑って、
キルアはしゃがんで優しく頭を撫でた。
「今日一日、
俺のそばにいろ。
それくらいなら、いいだろ」
×××は「にゃぁ」と鳴いて、
満足そうに目を細めた。
猫じゃらしでたくさん遊んだあと、
×××(猫)はベッドの上でぺたん、と座り込んだ。
「……もう限界か?」
キルアがそう言うと、
×××は返事するみたいに小さく鳴いて、そのまま丸くなる。
「はは。
さっきまであんな元気だったのに」
キルアもベッドの端に腰を下ろして、
しばらくその様子を見ていたけど――
静かな部屋と、規則的な呼吸につられて、
だんだんまぶたが重くなってくる。
「……ちょっとだけな」
そう言って、横になる。
×××は安心したみたいに、
キルアの方へころころ転がってきて、近くで丸くなった。
「……警戒心なさすぎだろ」
そう言いながらも、声はやさしい。
キルアは起き上がって、
棚から薄手の毛布を取ってくる。
起こさないように、そっと。
×××と自分の肩先に、ふわっとかけてやる。
「寒くないように、な」
×××は寝たまま、小さくしっぽを動かして、
満足そうに喉を鳴らす。
「……ほんと、安心しきってる」
キルアはその音を聞きながら、
目を閉じる。
「起きたら、元に戻ってるかもしれないし、
まだ猫のままかもしれないけど」
小さく、独り言みたいに。
「今はこれでいい。
ちゃんと休め」
静かな昼下がり。
同じ毛布の下で、
二人はゆっくり眠りについた。
×××が先に目を覚ます。
……あれ?
天井が見えて、
柔らかい毛布の感触があって――
違和感に気づいて、そっと自分を見る。
「……え?」
服を着ていない。
一気に目が覚めて、×××は毛布をぎゅっと掴む。
「な、なんで……!?」
記憶を辿ろうとしても、
猫だったときのことは何一つ思い出せない。
恐る恐る横を見ると、
すぐ隣でキルアが静かに寝息を立てていた。
「……き、キルア……?」
心臓がばくばくして、
起こさないように身を縮める。
(起きないで…起きないで…)
……と思った矢先、
キルアが小さく身じろぎする。
「……ん……」
×××は反射的に毛布を引き上げて、
体を完全に隠す。
「……っ」
キルアがゆっくり目を開けて、
状況を確認して――一瞬、固まる。
「……あ」
すぐに顔が赤くなる。
「ち、違う!
誤解する前に言うけど、
何もしてないからな!?」
慌てて視線を逸らしながら、
耳まで真っ赤。
×××も顔を真っ赤にして、
毛布の中から小さく言う。
「……ふ、服……取ってきてほしい……」
「……っ、あ、ああ!」
キルアは勢いよく立ち上がって、
クローゼットの方を向いたまま服を取ってくる。
「……ここ、置いとくから。
見ないからな、ほんとに」
背中向けたままなのが、
逆に必死さを物語っていた。
少しして、×××が落ち着いたころ。
「……その……説明、いる?」
キルアは遠慮がちに聞いてから、
スマホを取り出す。
「猫になってた。
それだけ」
そして、動画を再生。
そこには――
おやつを喜んで食べる×××、
猫じゃらしに必死で飛びつく×××、
喉を鳴らして甘える×××。
「……っ!!」
×××は両手で顔を覆う。
「な、なにこれ……!
やだ……恥ずかしすぎ……!」
「はは」
キルアはちょっと意地悪に笑う。
「自覚ない分、破壊力すごいな。
めちゃくちゃ懐いてたし」
×××が抗議すると、
キルアは軽く肩をすくめる。
「安心しろ。
俺以外には見せてない」
一拍置いて、少しだけ声を落とす。
「……可愛かったし」
×××はさらに赤くなって、
キルアはそれを見て満足そうに笑った。
×××はスマホを持つキルアを見て、
少しもじもじしながら言う。
「……あの……
その動画……消してほしい……」
キルアは一瞬きょとんとしてから、
すぐに口元をつり上げる。
「えー?」
わざとらしくスマホを持ち上げて。
「なんで?
あんなに可愛く遊んで、甘えてたのに」
「か、かわいくない……!」
×××が慌てると、キルアはさらに意地悪。
「いや、可愛かった。
自覚ないのが一番タチ悪い」
×××が一歩近づいて、
小さくおねだりするみたいに言う。
「……お願い……」
キルアは一瞬だけ黙る。
でも、すぐに視線を逸らして。
「……その顔で言うの反則なんだけど」
そう言いながらも、
まだ消す気配はない。
「消したらさ、
猫の×××が見れなくなるだろ」
「もうならないもん……!」
「それは分かんねーだろ?」
からかいながら、
キルアは少しだけ距離を詰める。
「でも安心しろって。
これ、俺のだし。誰にも見せない」
×××がむぅっとすると、
キルアは小さく笑って続ける。
「そんなに恥ずかしいなら、
また今度、俺にだけ甘えればいい」
「……っ」
赤くなる×××を見て、
キルアは満足そう。
「ほら、顔真っ赤。
その反応見ると、消すの惜しくなる」
少し間を置いてから、
画面を操作して、動画をフォルダにしまう。
「……消すかどうかは、考えとく」
そう言って、肩をすくめる。
「まあでも、
今の×××も十分可愛いけどな」
さらっと言われて、
×××はさらに言葉を失う。
「……意地悪」
「今さら気づいた?」
キルアはそう言って、
ちょっとだけ優しく笑った。
×××はまだ赤い顔のまま、
悔しそうにキルアの背中を見つめていた。
(……絶対からかわれっぱなしはやだ)
そっと立ち上がって、
棚の奥から取り出すのは――
ハロウィンのときに使った猫耳カチューシャ。
キルアはスマホを見ながら、完全に油断している。
今だ、と思って――
×××は後ろから、そっと。
「……えいっ」
「ん?」
次の瞬間、キルアの頭に猫耳。
「……は?」
状況を理解したキルアが、
ゆっくり鏡の方を見る。
「……ちょっと待て」
猫耳をつけた自分を見て、
数秒固まる。
「……お前……」
×××は耐えきれずに笑う。
「ふふ、似合ってる」
「意地悪なんでしょ?おあいこ!」
キルアは一瞬むっとした顔をしたあと、
ふっと息を吐いて、苦笑い。
「……不意打ちすんなよ」
でも、外そうとしない。
「ていうかさ、
それつけてる俺見て笑ってる顔のほうが反則だろ」
×××が近づくと、
キルアはちょっとだけかがんで視線を合わせる。
「猫は一匹で十分だと思ってたけど……
これ、悪くないな」
からかうように言いながら、
声はやたら優しい。
「ほら。
今度は俺が撮る番?」
×××が慌てると、
キルアは小さく笑って猫耳をちょいっと触る。
「冗談。
今日は甘々で終わりな」
そう言って、
軽く頭をぽん、と撫でる。
「……仕返し、かわいすぎ」
部屋には、
ちょっと照れた空気と、
静かな笑い声が残った。
キルアは少し考えるふりをしてから、
棚の上に置いてあったもう一つの猫耳を手に取った。
「……せっかくだし」
そう言って、今度は自分で×××の頭にそっと乗せる。
「はい。これでおそろい」
「……ほんとにやるの?」
「今さら逃げる気?」
キルアは猫耳をつけたまま、
スマホを構えて少し距離を縮める。
「ほら、こっち来い」
×××は一瞬ためらったけど、
もう恥ずかしさを振り切って、素直に近づく。
「……もうどうにでもなれ」
そう言って、
キルアの腕に軽く寄りかかる。
「にゃー」
わざとらしく甘えた声を出すと、
キルアが一瞬固まってから、吹き出す。
「……自覚したら強いな」
でも、嫌そうじゃない。
むしろ、少し嬉しそう。
「そのまま動くなよ」
カメラを自撮りモードにして、
二人の猫耳が画面に収まる。
「はい、撮るぞ。
……3、2――」
シャッター音。
もう一枚。
今度は×××がキルアの袖をきゅっと掴む。
「……どう?」
「どうもこうも」
キルアは画面を確認して、
小さく笑う。
「甘えすぎ。
……でも、いい顔してる」
×××がそのまま、
少しだけ距離を縮めて、肩に頭を預ける。
「さっき意地悪だったから、
今は甘え返す」
キルアは一瞬驚いたあと、
何も言わずに受け入れる。
「……反則だって」
そう言いながら、
空いてる手で軽く頭を撫でる。
「猫モード、解除する気ないな?」
「ないかも」
「……じゃあ、今日はこのままな」
猫耳をつけたまま、
二人は並んで座って、
写真を見返しながら、ゆっくり時間を過ごした。
猫耳をつけたまま、二人はソファに並んで座っていた。
さっき撮った写真を見返しながら、×××はだんだん恥ずかしさより安心感が勝ってくる。
「……もうさ」
そう言って、×××は開き直るみたいにキルアの腕に寄りかかる。
「猫なら甘えてもいいよね」
「都合よすぎだろ」
そう言いつつ、キルアは腕を引くことはしない。
むしろ、少し体勢を整えて、×××が楽になるようにする。
「……ほんとに甘え猫だな」
×××は返事の代わりに、
キルアの服をきゅっと掴んで、額を肩にこつんと当てる。
「にゃー」
「……それやるのか」
呆れた声なのに、
キルアの手は自然に×××の頭に伸びて、
猫耳ごと、ゆっくり撫でる。
「落ち着く?」
×××は小さく頷いて、
そのまま動かなくなる。
「……さっきまで意地悪だったくせに」
「反省してる。ちょっとだけな」
そう言って、
キルアは自分の猫耳を軽く指で触る。
「ていうかさ、
これつけてると、変に気が抜ける」
×××が顔を上げると、
キルアと目が合う。
近いけど、空気は静かで、
変にドキドキしすぎない。
「今日はこのままでいーよ」
キルアはそう言って、
×××の背中を軽くぽんぽんと叩く。
「猫でも、人でも。
甘えたいなら、今はそれで」
×××は安心しきって、
もう一度寄り添う。
猫耳がちょっと触れ合って、
二人ともくすっと笑った。
部屋には、
なにもしない時間と、
あったかい空気だけが流れていた。
to be continued….