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アップルパイが焼き上がり小さく切り分けお皿に並べた。


「そろそろ戻らないとね」

「はい……」


皿を持つレンブラントにピッタリと寄り添いながらティアナはついて行く。

多分まだ顔は赤く染まったままに違いない。今回は気を失わなくて良かったと思いつつ、彼の側を離れるのが寂しくなってしまった。


「意外とティアナは甘えん坊なのかな」


揶揄う様に言われて彼の腕を掴んでいた手を離そうとするが「離しちゃうの?」と寂しそうに言われて思い留まった。



外に出ると何やら騒がしいとティアナとレンブラントは顔を見合わせる。


「何かあったの?」


近くにいたテオフィルにレンブラントが話し掛けると彼は少し戸惑った様子だった。


「それが……」


言い淀む彼の視線の先を見ると、そこには見慣れない女性がいた。肩下まである赤髪の歳はエルヴィーラと同じくらいに見える。

彼女を囲む様にして人が集まり、子供達はかなり興奮した様にはしゃいでいた。


「聖女様だ」


一人の男性がそう呟いたのを皮切りに、その場の大人達は口々に「聖女」と口にした。


彼女の前にはまだ蕾である花が一輪ある。彼女がそれに手を翳すとその瞬間花が一気に咲いた。まるで魔法の様な光景に、誰もが歓声を上げ「奇跡だ!」「聖女様だ!」と歓喜に沸いている。


(聖女……)


以前見た美術館の絵とレンブラントの話を思い出す。あの時何故か分からないが胸が騒ついた。そして今もまた同じ様に胸が騒つき落ち着かないでいる。


「レンブラント様……?」


隣で彼女を凝視するレンブラントに、ティアナは不安な気持ちが込み上げてきて思わず彼の腕にしがみ付いてしまった。彼は目を丸くしてティアナを見た。


「どうしたの?」

「あ、その……」

「もしかして、妬きもちかい?」

「違っ……」


否定しようとしてティアナは口篭る。


(違わない)


今自分はあの女性に嫉妬していた。


「大丈夫だよ、ティアナ。僕が見ていた理由はそうじゃないから」

「?」


レンブラントは再び女性とその隣にいる男性にも鋭い視線を向けた。その男性は頭からフードをスッポリと被っており顔はハッキリと見えないがまだ年若い様に見えた。


「ティアナ、今日はもう引き上げよう」

「でもまだ……」

「シスターには僕から話をしてくるから、君は先に馬車に乗って待っていて。テオフィル、クラウディウスに引き上げる様に伝えて君達も帰った方が良い」


テオフィルも何か思う事がある様で、レンブラントの言葉に頷くと直様行動に移した。ティアナも戸惑いながらもレンブラントの指示に従い踵を返した。



どこか落ち着かない中、馬車に乗って彼を待っていると程なくしてレンブラントが来た。彼の顔を見てティアナは安堵のため息吐く。


「待たせたね」


何時もなら向かい側に座る彼は、何故かティアナの隣に腰を下ろす。その様子を不思議そうに眺めていると、彼はティアナの手取り握り締めてきた。


「折角誘ってくれたのに台無しにしてしまって、すまない。ただよく分からないが彼等から不穏なものを感じたんだ。もし今後先程の彼等を見掛ける事があっても絶対に近付いてはダメだ。ティアナ、約束して欲しい」

「はい……レンブラント様」


深刻な面持ちの彼にティアナは素直に頷いた。



ーーこれが私と彼女の出会いだった。まさかあんな事になるなど、この時誰も思いもしなかった。平穏だった日常が次々と音を立て壊れ崩れていく……。








【拝啓、天国のお祖母様へ】この度、貴女のかつて愛した人の孫息子様と恋に落ちました事をご報告致します。

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