テラーノベル
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「……よし、霊夢、魔理沙。今日から俺たちは『味噌』を仕込む。出汁を極めた先にある、究極の相棒を作るんだ」
博麗神社の境内に積み上げられた大量の大豆を前に、俺は宣言した。不老不死の体は、どれだけ豆を運んでも疲れない。これこそ永遠の命の正しい使い方だ(たぶん)。
「味噌ねぇ。時間がかかるんでしょ? 私たちが高校生姿のまま、お婆ちゃんになるくらい寝かせるの?」 「バカ言え、霊夢。俺たちの『蓬莱の力』と『白だし』を隠し味にすれば、時間は超越できるはずだ」
俺たちが大豆を洗い始めた、その時だった。
「――お待ちください! その大豆、私にも手伝わせてください!」
空からひらりと舞い降りたのは、半人半霊の庭師、魂魄妖夢だった。 その手には楼観剣と白楼剣……ではなく、なぜか巨大な「すりこぎ」と「樽」を抱えている。
「妖夢? なんでアンタがここにいるのよ」 「幽々子様が……『なんだか神社の方から、百年寝かせたような深い香りがする予感がするわ。先に場所を確保してきてちょうだい』と仰られて……」
「予感だけで人をパシリにするなよ!」という俺の突っ込みも虚しく、妖夢の瞳は真剣そのものだった。
「料理人殿。味噌造りは、豆を潰す工程が命。私の剣技をもってすれば、大豆の一粒一粒を細胞レベルで均一に、かつ情熱的に粉砕することができます! 幽々子様に最高の味噌汁を献上するため、この魂魄妖夢、粉骨砕身(豆粉砕)のお手伝いをいたします!」
「……剣で豆を潰すのか? 面白い、やってみろ!」
妖夢は楼観剣を鞘から抜くと、凄まじい集中力で大豆の山に向き合った。
「……人斬り包丁に断てぬものなし。ましてや、茹でたての大豆など! 人智剣『天女返し・大豆微塵』!!」
シュババババババッ!!
目にも止まらぬ速さで銀光が走り、宙に舞った大豆が、一瞬にして完璧なペースト状になって桶に収まっていく。
「す、すげぇ……。これが白玉楼の庭師の力か……!」 「私の魔力で蒸かして、妖夢の剣で潰す。これ、最強の布陣じゃないか?」
魔理沙がニヤリと笑い、俺はそこに秘蔵の「白だし」を注ぎ込んだ。 大豆の甘み、白だしの旨味、そして妖夢の気合。これらが混ざり合い、まだ発酵前だというのに、境内にはすでに「美味しい約束」のような香りが漂い始めていた。