テラーノベル
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「――おいお前ら、こんなところで何やってんだ!」
アンティークショップのドアを乱暴に開けて入ってきたのは、レンズのない伊達眼鏡の奥の瞳を怒りで燃え上がらせた、上杉和典だった。
その後ろには、不安そうな表情の小塚くん、そしてもう二人の顔が並んでいた。
「あ……翼に、忍まで!?みんなどうしたの?」
私が驚いて声を上げると、眩しい美貌を持つ美門翼が、少し悲しそうな、だけど鋭い視線を黒木くんに向けた。
「アーヤ。いくら黒木が相手でも、放課後に二人きりでこんな薄暗い店に入るのは感心しないな。……俺、アーヤの『心の友』として、少し傷ついたよ」
翼はいつもの完璧な微笑みを浮かべているけれど、その声はどこか本気で怒っているように聞こえた。
さらに、その隣からは、紫がかった長い髪をシリコンゴムで後ろに結んだ七鬼忍が、ノートパソコンを片手に一歩前に出た。代々受け継がれてきた、中央が紫に染まった菫色の瞳が、店の怪しげな空気と同調するように妖しく光る。
「黒木、お前がどこに立花を連れて行こうと、俺の監視カメラへのアクセスと美門の鼻でわかるんだよ。……それに、ここにはあまり良くない『気』が漂ってる。長居する場所じゃないな」
忍は人を傷つけるようなことは絶対に言わないけれど、今回は私のことを本気で心配して、不器用ながらも必死に追いかけてきてくれたのが分かった。
「やれやれ……。誰にも教えたことのない俺の秘密基地にたどり着くなんて」
黒木くんは私を抱きしめていた腕をゆっくりと離すと、いつものマダムキラーの笑顔に戻り、フッと肩をすくめた。
「七鬼、ほんとに追跡は監視カメラだけか? 俺のスマホを追跡したなんてことはないよな、個人情報は見ないでくれよ?……それと翼、お前も。ハイスペックの練習はどうしたんだ? サッカーチームHSのエースが、こんなところで油を売っていていいのか?」
黒木くんは彼らに対して、慌てる様子もなく会話する。
「黒木、話を逸らすな」
上杉くんが黒木くんの胸ぐらを掴みかねない勢いで詰め寄った。
「俺たちは、お前が立花に何か無理強いをしているんじゃないかと案じてきたんだ。まさか何もしていないだろうな」
「そうだよ、黒木。僕だって、アーヤが心配でハラハラしちゃったんだから……」
小塚くんがそばかすのある顔を曇らせて、タッパーを抱えながらおろおろしている。
男子メンバー全員から向けられる、激しい敵意と心配の視線。
「みんな、待って……! 違うの!」
私が割って入ろうとした瞬間、翼がすっと私の前に立ち、小塚くん特製のマスクを少し下げて顔を近づけた。
「……アーヤ。嘘を言ってない?黒木に、何か言われたんだろう?」
翼には、私の動揺がすべて筒抜けだった。
「それは……」
私が言い淀むと、忍がノートパソコンを開き、キーボードの上に指を置いた。
「立花。若武がさっき、新しい事件の件で怒り狂って連絡してきたぞ。お前がいてくれないと、あいつの暴走は止められない。……放置するとめんどくさいからな、早くあいつのところに戻ろう」
忍の言葉が、張り詰めた室内の空気を少しだけ和らげる。
「フン、行くぞ、立花」
上杉くんが私のリュックを黒木くんの手からひったくるように奪い返すと、ぶっきらぼうに私の背中を押した。
「……ありがとう、みんな。お騒がせしてごめんなさい」
私はみんなに促されるように、アンティークショップの出口へと歩き出した。
最後に一度だけ振り返ると、夕闇が迫る古い店の中、黒木くんはたった一人で蠟色の闇の中に佇んでいた。
その瞳は、いつもの完璧な仮面を被り直していたけれど――私と目が合った一瞬だけ、哀しく、激しく、何かを訴えかけるように揺れた。
上杉くん、小塚くん、若武。そして、翼と忍。
最高の仲間たちに囲まれながらも、私の胸の奥には、黒木くんから手渡された彼の闇が、確かに残されたままだった。
餡蜜
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コメント
3件
最後のところ、心臓がばくんばくんしてる。 黒木ぃ~!!!
黒木の「マダムキラー」。見てみたい…
わあっ、第3話……!みんなが一斉に助けに来てくれたシーン、すごく熱かったです🥺✨ 翼くんが「心の友」って言いながら本気で怒ってるのとか、忍くんが監視カメラまで駆使して追いかけてきたのとか……アーヤちゃん、本当に大事にされてるんだなって感じました。 でも最後の黒木くんのあの瞳……何か隠してるよね。まだ彼の闇が見えてなくて、続きが気になりすぎます……!餡蜜さんの紡ぐ重さが、沁みます🌙🤍