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部屋でベッドに仰向けになる。
天井の模様を何となくぼんやりと眺めるているとドアをノックする音で意識が戻る。
「瞳、入るわよ」
元義母を追い返したあと正人や元義母からきた電話の内容などを話をして私は部屋に篭ったのだ。
「うん」
ベッドに座っていると母も隣に座る。
そりゃ言いたいことがあるよね。
「正人さんの性病の話。瞳は私たちに心配させたくなくて黙っていたんでしょう。でもね、こんなふうに後から聞かされるのはショックだし、何より瞳が一人で悩んでいたと思うと自分が情けなくなる」
「ごめんなさい。陰性だったし、離婚のことでも心配をかけたら」
「親はね幾つになっても子供の心配をすることが幸せなのよ。だから、瞳がすこしでも気持ちが楽になるのなら話をして欲しい。甲斐さんの事もね」
隠しているようでも一緒に住んでいるとわかってしまうんだ。
それならと、凌太との話をポツリポツリと母に話をした。
大学時代の女性問題のこと、家庭になにか問題があること。だけどその事を聞かないままだったこと。そして今、またあの頃のような状況であること、凌太がその女性と話しをつけるのを待っていることを話した。
話しをしている間、母はわたしの肩を抱いていて頭をポンポンと優しく叩いていた。
「甲斐くんとやり直したいのね」
煩わしいことはもう懲り懲りで友人として付き合っていくならいいと思っていた。
違う、思い込もうとした。
でもあの日、凌太の母親が現れた時、凌太を信じきれていなかった。だからあっさりと母親の言葉を信じてしまった。
好きなのに離れる決心をした。
だから、凌太のようなタイプの人を避けて思い出さないようにして生きてきた。
そんな時に凌太とは真逆の正人と付き合った。
そんな風に考えると本当に正人を好きだったのか、ただいつまでも心の隅にいて消えてくれない凌太を忘れるために好きになろうとしたのかわからなくなった。
母の問いに頷くことも否定することも出来ずにいると
「甲斐さんは瞳とお付き合いしていた間は他の女(ひと)と遊んでいなかったんでしょ?」
自信は無いけど、あの頃はほとんど一緒にいたし甲斐商事の後継者として勉強も系列会社でのバイトも頑張っていたし何より、何かを調べているようだった。
「うん、多分。学生時代は入学して私と付き合うまでは色々とあったけど、その後は忙しそうだったし、何か家庭のことで悩んでいるみたいだったし」
「甲斐さんはどんな悩みを持っていたのかしら?まぁ、母親があんな感じだから何かしらあるとは思うけど」
私はちいさく首を振った。
「凌太が言ってくれるのを待とうと思って、聞かなかった」
「聞いてみたらいいじゃない」
「え?」
聞いてもいいの?でも、嫌がるかもしれないし。
「もしかしたら、向こうだって瞳に言っていいのかわからなかったかもしれないし、聞いたら言っていいんだって思って話しをしてくれるかもしれない。まずは、甲斐さんが女関係をきちんとクリアにして瞳と真摯に向き合うのなら、瞳も一歩を踏み出したらどう」
一歩を踏み出す。
「お母さんは反対しないの?」
「甲斐さんが身の回りを綺麗にして、ちゃんと瞳を守ってくれるのなら」
二人で顔を見合わせて笑った。
「そうそう、お父さんが夜は3人で寿司を食べに行こうって。もちろん」
「「廻るやつ」」
二人の声が重なってまた笑った。