「…ぁ、」
頬に冷たいものが落ちる
上を見上げると星一つ無い真っ黒な夜空から白いものがちらほらと降ってくる
━━━━雪だ
「…もう、そんな季節、」
真っ黒な瞳で輝く雪を見つめる
みんなが消えてからもう1年
立ち直れなくてショーキャストを降りた
どうせまたひとりぼっちのショーを作るだけ。
そんなのもうやめた
もう、ッ、むりだ
前までの元気はどこに行ったのかな
わんだほいなんて陽気なこと出来ない
きらきら瞬く星は、もう、私には見えない
空にも、ショーステージにも、どこにも、。
雪を見ると緑髪のあの子を思い出す
お歌がとっても上手で、くせっ毛が可愛くて。優しくて。…
その子といつも一緒にいるロボちゃんを作ったすごい子もいたな
いつもすごいアイディアを出してくれて、そのアイディアを試してみるのはわくわくドキドキだった
そして、…星。
きらきら輝く、スター、だった。
でも突然その光は消えた
消えてしまった
ー、あれ、誰だっけ、名前、思い出せないや…ッ
「…ッ」
ダメ、泣いちゃ…ッだめ…ッ
視界がにじむ
もう、思い出したくなかったのに…ッ
「ぅ…ッうぁぁあぁあ…ッ!!…」
ハッと気がつくと、そこは何も無い空間だった
私のヒタヒタという裸足の足音だけ響く
、と当たりを見渡すと聞き覚えのある歌声が耳に入ってきた
まさか、と声のする方へ全速力で駆け出す
「…ッ、!!」
息を、呑む
驚愕で足が震える
、だって、
消えたはずの彼らが私の目の前で楽しそうに歌ってショーをしていたから。
生きている
みんなが、生きてる…ッ
…ぁ、やっと、思い出せた
息を吸って笑顔で呼ぶ
「…司くん、寧々ちゃん、類くんっ!!」
途端3人は私の方に振り向き、ぱぁっと笑顔になる
暖かい香りに包まれる
ここが、私の居場所
大好き!!
私の瞳に、光が灯った瞬間だった
「えむ、遅いな」
「…確かにそうだな、そろそろ帰ってきてもおかしくない時間なんだが」
「少し、様子を見に行くか」
そう言って俺たちが歩き出した瞬間、人の叫び声と共にピンク色の髪の毛が車体に弾かれた
「…ッは、?」
「、な、え?」
俺たちは驚きを隠せず変な声しか出ない
ピンク色の髪の主の元へ駆け寄る
━━━━━━それは、紛れも無く、俺たちの妹のえむだった。
「え、む……?」
誰か!!救急車を!!と、焦った声が周りから聞こえてくる
放心状態、というのかこれを。
えむ、ともう一度名前を呼ぶが、いつもみたいに元気に返事をしてくれない
血色を失った肌は、痛々しいほどに傷だらけだった
「なんで……ッ」
10年後━━━━━━━━━
神山高校
「ねぇ、知ってる?10年前のワンダショの事件」
「ワンダショ……?あ、なんか同じ期間で一斉に死んだ死亡事件でしょ」
「そうそう、4人中3人が一気に死んで、後を追ったみたいに残りの1人が車に轢かれて死んだらしいよ」
「なんか不思議な事件だよねーしかもうちの高校の生徒でしょ?怖いなー」
「だよね。あの事件からもう10年か。 ネットでまた話題になってるよ」
そう呟いて飲み干した牛乳パックを机に置いた瞬間、どこからともなくメロディーが聞こえた
まるで、あのワンダショの曲のようなメロディーが。
「……ん?今、何か聞こえなかった……?」
「え?いや、何も……?」
おかしいな、と思いつつも、そんなに気にせず次の移動教室のため教室を後にした
みんなは今笑えてる?
私、今にっこにこわんだほいだよっ!!
ね!!司くん、寧々ちゃん、類くん!!
もう一度、メロディーと、声が聞こえたような気がした
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えむちゃぁん!