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藤澤サイド
「元貴、おかえり」
部屋を片付けていると元貴がシャワーから帰ってきた。
元貴の髪が湿り、伸びた髪からは水滴が滴り落ちていた。
「ちゃんと拭かなきゃ…風邪ひいちゃうよ…」
元貴の持っているタオルで髪を拭く。
「これでよし。…元貴、ドライヤー、する?」
元貴の顔を覗き込むと元貴の顔は暗い。
纏う雰囲気が、シャワー前よりも暗くて、寂しそうになっていた。
夜の闇を全部集めて元貴の周りに放ったような、黒い、暗い闇。
「元貴、どうかした…?」
そう言って元貴の顔を掴んでこっちを向かせる。
元貴の目は少し透明の膜が張っていて、水晶玉のようにつるりとしている。
まつ毛が長い。
長いまつ毛に縁取られた目が揺れている。
「っ、」
元貴が急に僕の肩に手を置いてキスを求める。
前歯と前歯がぶつかり合って、カツンと色気のない音が鼻の奥の方で響いた。
「涼ちゃん、」
「なに?」
元貴を安心させるように、出来る限り優しい声で聞く。
まだしっとりしている髪からは、シャンプーのいい香りがする。
もう、あの香水の匂いじゃない。
あの香水の匂いは、若井が好きだったブランドのもの。
「なんで、俺…捨てられたんだろ…」
「元貴のせいじゃないよ」
不安そうに聞く元貴を安心させるように声を出す。
元貴の薄い唇が微かに震えている。
「…ほんと? 」
「ほんと。元貴のせいじゃないよ」
「涼ちゃんは、俺を捨てない?」
「捨てないよ、絶対」
元貴が安心したように目を伏せる。
纏う雰囲気が少しだけ変わる。
暗い室内は淡くて、ガラスみたいに透き通っていて、冷たかった。
でも二人の間に流れる空気は、
暖かった。
♡&💬よろしくお願いします
コメント
6件
投稿頻度高くてめちゃ嬉しい🥺 今回も雰囲気が好こい…!!一つ一つの表現が刺さる😭涼ちゃん優しすぎる、、
少し遅れたァァ…!!更新頻度高すぎませんか?!とても嬉しい!!ありがとうございます!!そして毎回最高すぎます!!!
見れなかった時間にこんなに沢山更新されているなんて感謝でしかない 涼ちゃん優しいね、そのままでいてくれ