テラーノベル
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華
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────思わず走って逃げてしまった。僕は何をやっているのか。
走る。走る。何処か遠くへ。何処でも善い、只ひたすらに遠くへ。
貧弱な肺が恨めしい。知らない奴等の好奇の視線が突き刺さる。腹立たしい。
彼奴も彼奴で腹が立つ。入学式初日だぞ。其れなのに…其れなのに、何故……。嗚呼、然し、
「……本当に、何なのだ…っ」
────これしきのことで動揺している自分自身に一番腹が立つ。
翌日。
芥川は教室にいない。ならば保健室にいるだろうと思って足を運ぼうとしたが、やはり躊躇してしまう。勢い余って告白してしまった恥ずかしさと気まずさが消えず、さらにどうにもならない不安に悩まされていた。
拒絶されるかもしれない。もしかしたら無視されてしまうかも、という不安。そのせいで昨晩はあまりよく眠れなかった。
それでも、芥川と話せなくなるのは嫌だ。深く息を吸い込んで保健室のドアをノックする。
「…入れ」
小さく聞こえた彼奴の声。取り敢えず無視されなかったとほっと胸を撫で下ろした。
「おはよう、えっと…体調、どう?」
「嗚呼、…存外悪くない」
「…そっか」
保健室の枕に背を預けてベッドの上に座っていた芥川は、開いたままだった本に目線を落とした。
入学式の時と変わらない反応。まるで、昨日の告白なんて無かったかのようだった。
拒絶されるのが怖かったくせに、何も反応されないのもそれはそれで……傷付く。僕なんて意識していないと言外に伝えられるようで。
彼奴が知れば、身勝手だと思うだろうか。愚か者だとなじるだろうか。
いっそのことそうしてくれれば良い。それで僕のことを見てくれるなら、安いものだ。
コメント
3件
わあ……主人公の心の動きがすごく繊細で、読んでて胸がぎゅっとなりました。入学式の勢いで告白した直後、自分でも戸惑いながら走り去っちゃったのが切なくて。翌日、芥川が保健室で普通に本読んでる様子に「拒絶も無視もされたわけじゃない」って安堵する一方で、「何も反応されない」ことへの不安がまた違う種類の痛みで……。あの「いっそ拒絶してくれればいい」って台詞に、無関心より敵意を選びたいという主人公の必死さが滲んでて、感情の描写がとてもリアルでした。