テラーノベル
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キックオフ前の両者整列の際に、長髪ゴールキーパーが不遜な態度で俺達を舐めまわした。間近で見ると壁のように背が高く、横幅もある巨体だ。圧迫感そのものとも言えた。
「わしからゴール奪えるか、おのれら? ふん」
憤慨した幸成が、何だとてめぇ、と?みつこうとするのを、拓真さんが制した。
「幸成、抑えろ。その憤りの感情は試合で晴らせ」
「優等生じゃの。せめてゴールを脅かすシュートを期待しているっち。ききき」
「やめろ水沼」
水沼と呼ばれた長髪ゴールキーパーが、相手チームのキャプテンと思しき選手から窘められる。
両陣営が各ポジションに散っていく際も、水沼は高圧的な態度を崩さなかった。「くそみたいなシュート打ってくるなよ。せめて楽しませるシュートを打ってこいよ。ひひひ」
幸成が、バン、と俺の肩を強く叩く。目が逆立っていた。「ゴール決めて、絶対にあいつを泣かせろ。ちきしょーめ」
小学生のケンカみたいな文言だったが、気持ちはよく分かった。俺はゆっくり頷いて拳を握る。
俺はフォワードだけに色々なゴールキーパーと対峙してきたが、正直、初めて目にするタイプのゴールキーパーだった。
川南と話している時に感じた、水沼からの威圧感が、近くで接するとより強烈だった。
もし試合中に水沼と一対一の場面が訪れたら、俺は落ち着いてシュートすることができるだろうか。
いけない……、戦う前から気弱になっている。俺は、両頬を強く張った。その場で跳び、のしのしとゴールマウスの方へ歩いて行く水沼の背を睨んだ。