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攻🐉×受🔝の捏造まみれのジヨタプ小説。ご本人様たちとは全くの無関係。
ご都合主義の矛盾まみれ解釈違いもろもろですがたくさんの愛はある。
今回はThe乙女🔝がテーマ。乙女にしすぎレベル。
覚悟の上読んでくださる方はそのままお進みください…!
恋に落ちる瞬間を、体験したことがある。
俺たちがデビューしてからもうすぐ5年という月日が経とうとする頃。ありがたいことに忙しい毎日で、目まぐるしく過ぎていく時間の流れに置いていかれないように必死だったころ。仕事が楽しくて、休みなんてなくたって平気だって本気で思ってた。応援してくれるファンの愛を目一杯に感じながら、信頼できるメンバーと毎日を過ごす。プライベートな時間はほとんどなかったけど、それでもそれを嫌だと思ったことなどない。
同年代の人達は日々生きる中で様々な恋愛をして、早い人は結婚して子どももいる中、俺たちはがむしゃらに仕事に全てを捧げていたから、恋愛なんてものとは程遠い場所にいた。普通の幸せとは違うように見えるが、俺はそれでもよかった。
このときまでは。
それは久しぶりの休日前夜。ホテルの部屋でみんなで飲んでいたときのこと。ライブも終わり身体はくたくただったのに、内側から燃えるような熱を放出するように俺たちはともに酒を飲んだ。次の日のことなんて考える必要はなく、ただ今この瞬間を楽しんで、俺たちは疲れが一周まわってハイになっていた。アルコールのせいもありふわふわと浮いたような気分のまま、気付けば深夜もとっくに回っていて。空いたボトルの数もわからなくなっていた。
「はーーすっげー飲んだあ」
「いやもうさすがに入らないです」
みんなの呂律もだいぶ怪しい。かく言う俺もその1人。久しぶりに飲んだ酒は驚くほど美味しかったけど、驚くほどの酔いの回り方だった。テソンとヨンベはさっきから同じ話で何が面白いのか分からないのにずっと笑ってるし、スンリはほとんど開いていない目をしたままごにょごにょと聞き取れない言葉を発している。俺はふらつく足を引きずるように歩きながら、夜風に当たりたくてベランダに出た。涼しいくらいの気温が、熱い身体を冷ますにはちょうどいい。至る所のポケットをまさぐってやっと見つけたタバコを取り出して火をつける。
(そーいや灰皿、どこだ)
煙を吐き出しながらきょろきょろと首を動かした。視界に入ってるはずの景色は、思考が纏まらない脳には何一つ届かなくて。さっき吸ったのいつだっけ。たしか1時間くらい前だったのような。そのあとどこに置いたのかわからない。そういえば喉もかわいたな。あんなにお酒飲んだのに、今猛烈に水が飲みたい。あれ、俺今何探してたっけ。
「ふふ、なにしてんの」
後ろから聞こえた声に振り返る。そこには楽しそうに笑うジヨン。右手には灰皿。左手にはペットボトル。
「あ、それ」
「やっぱりこれ探してたんだ」
はい、と灰皿とともにミネラルウォーターも渡された。隣に座りタバコを咥える彼の横顔をまじまじと見つめる。
「…エスパーだ。超能力者」
「……ん?なに?急に」
「だって俺の欲しかったもん全部もってきた、ジヨンが、今」
自分でも何を言ってるかわからなかった。文脈なんてもんもめちゃくちゃで、思ったことが勝手に全部口に出た感じ。彼はきょとんとした顔で何度か瞬きをしたあと、声を上げて笑った。
「あははっ!なにそれ!」
「だってほんとに、本当にそうだったから、探してて、ずっと」
ジヨンの目がにゅっと細まる。口角を上げながら愛おしそうに微笑む彼の顔から目が離せない。
「んー…うん。そうだよ、すごいでしょ?」
「…?」
「俺、タプヒョンのこと、なんでも分かっちゃうの」
全ての音が、一瞬消えた、気がした。
その後心臓が握りつぶさたみたいにぎゅっと締まって、今度は勢いよく動き出した。ものすごいスピードで収縮を繰り返す様が目に見えるようで、身体を流れている血が一気に逆流するようで。ドクドクと高鳴る心臓の音が耳を支配した。
(……ああ、俺、)
恋に落ちる瞬間があるとすれば、きっとこれなのかもしれない。
ジヨンのことが、好き。
あの夜自覚した。からと言って俺たちの関係が変わるわけがなく。同じ活動をするメンバーで、そもそも男同士。想いを伝えようとは思わなかった。もちろん上手くいけばそれはとてつもなく幸せなのだろうが、上手くいかなかったときが最悪だ。今まで築き上げてきたもの、友達という間柄もすべてなくなってなにもかもが壊れてしまうかもしれない。それならばこの気持ちは胸に秘めて、内緒のまま、気付かないフリをしていた方が何倍もいい。俺はそう思ってこの恋に蓋をして心の奥にしまい込んだ。
それでもふとした瞬間にときめくときがある。例えば楽しそうな笑顔を向けられたときとか、ふいに彼の身体が服の隙間から見えたときとか、偶然手が触れたときとか。中学生男子かとツッコミをいれたくなるような自分が恥ずかしい。
『俺、タプヒョンのこと、なんでも分かっちゃうの』
じゃあいっそ俺のこの気持ちに気付いて、なんて。
「最近タプヒョン、肌ツヤいいですね」
「え?」
唐突にテソンにそう言われ、思わず固まってしまった。彼は美容に関しての関心が高く、女性も驚くほどの美容グッズを愛用しているらしい。
「そ、そうか?」
「はい。ついこの前までまたニキビできたーとか言ってましたよね?今は全然。つるつるですよ。何かしてるんですか?」
興味津々と言った様子で聞いてくるテソンにドキッとした。たしかに最近は前よりも肌の管理に気をつけている。なぜかと言う理由は、もちろん言えるはずもなく。
「あー…いや、特には…」
適当に誤魔化した俺の脳裏で、数週間前の会話を思い出していた。
それはたしか、スンリとジヨンが話していたときのこと。楽屋に置いてあった雑誌を、スンリが暇つぶしにとパラパラ捲っていた。
「あ、この子最近よく出てますよねー。CMとかドラマとか」
「ん?…あー確かに。まだ若いよね」
隣にいたジヨンが覗き込む。どのCMに出ていたとか、なんのドラマに出ていたとか、そんな他愛もない会話していた中、ふとスンリが言った。
「それにしてもすごい肌綺麗。色も白いし」
「なに?スンちゃんこういう子がタイプ?」
「いやそういうわけじゃないですけど…純粋に感心して。ジヨンヒョンはどうです?」
「ん?んー…まあ、肌は綺麗だねたしかに。いいよね」
その言葉が耳に届いて、無意識に鏡を見る。テレビやステージに立つ際は必ず化粧をするということもあり、俺は割と肌が荒れやすかった。今だって口の端に小さなニキビができている。前まで気にならなかった。というか今の今まで気にならなかった、のに。ジヨンの言葉1つでものすごく気になってしまった。
(……見られたくない、かも。これ)
仕舞いにはそんなことまで考えちゃって。我ながら女々しくて恥ずかしいのにどうしても拭いきれない。気になりだしたら止まらなかった。
「そうなんですか。てっきりなにかきっかけとか理由があるのかと思いました」
きっかけも理由もある。はっきりと。でもそんなこと、例えテソンにだって。
「…………言えるわけねーだろ」
「はい?何か言いました?」
呟くように言った声に、テソンが反応する。俺はなんでもないと答えてまた誤魔化した。
それはとあるインタビューを受ける仕事のとき。タイプの女性は?なんていうありがちでベタな質問。この手の問いは慣れっこで、今まで何回答えてきたかわからない。
「んー、なんですかね…」
「なんでもいいですよ。例えば見た目とか」
ジヨンが考え込む。質問をした相手の目は興味津々でキラキラとして見えた。女性ファンを多くもつジヨンにとって、みんな気になるところなのだろう。
俺も、そんな中の1人だったりするわけだが。
「あんまり見た目を重視したことはないですけど……そうですね、スタイルのいい子かな?」
「なるほど!」
「細い子とか。小さくて華奢で可愛い感じの。守ってあげたくなりますよね」
ぐ、と思わず胸が詰まる。だって俺は全部持ってない。全部真逆。男として生まれてきて、周りから羨ましがられてきた高い背、ガッチリとした男らしい体格。それが今は憎かった。
(まあ…痩せるくらいなら、俺にもできる、かも?)
質問の順番が俺に回ってきても、どこか上の空。心ここに在らず。ジヨンの言葉が胸の奥に引っかかって離れなかった。
「タプヒョン…最近、痩せた?」
ヨンベにそう言われ、ついに他人が気づくほどになったのかと思う。仕事柄前からなるべく体型維持には気をつけていたし、かといって過度な食事制限で体力が持たなくてもダメだったから、適度な食事と適度な運動で今まで体重をキープしてきたが、ここ最近は少しだけ食事の量を減らしてみた。顔に出やすい俺は鏡を見ればたしかに輪郭がほっそりしたし、腕や足だってしなやかな細身のものになった。
「あー…かもな?」
かも、なんて嘘。本当は体重計に毎日のってる。彼の理想に近づきたいなんて口が裂けても言えないけど。
「大丈夫?体調悪いとかじゃないよね?」
「いや全然…」
「ちゃんと食べてる?」
どっちか年上か分からない。心配そうな顔をするヨンベはまるでお母さんみたいだ。なんだか小さな罪悪感が心に芽生える。
「…食べてる。大丈夫だって」
「………だめだよ?ちゃんと食べなきゃ。倒れちゃったらどうするの?」
「!」
にゅ、と現れたジヨンにそう言われ、思わずグッと胸が詰まった。
(誰のせいだと…っ、)
いや、紛れもない自分のせいなんだけど。こんなのただの八つ当たり。ジヨンは悪くない。分かってるのに、行き場のない怒りが思わず顔に出てしまって、ムッとした表情になってるのが自分でもわかった。
「………しつこい。大丈夫だって言ってんだろ」
ああ違うのに。こんなこと、言いたいんじゃないのに。可愛くない。こんな俺、俺だったら好きにならない。
分かってるのに止められない。これ以上いたらただの八つ当たりで無駄に彼を傷つけてしまいそうだ。俺はそう思い、2人に背を向けそそくさと離れた。
「………俺、変なこと言っちゃったかな」
そうヨンベに言う不安そうなジヨンの小さな声が微かに聞こえて、胸の辺りがちくっと痛んだ。
(………ごめん、)
ごめん、好きになって。
ジヨンが、週刊誌にすっぱ抜かれた。厳密にはまだゲラの段階で、世間には公開されていないのだが。
「……あちゃー、ジヨンヒョンやっちゃいましたね」
「うるさい、殴るよ?」
「痛っ!もう殴ってるじゃないですか!」
隣に立つ女の人と楽しげに話すジヨンの白黒写真。どこかの影から撮られたであろう2人。
「てかスンちゃんもこの日この場にいたじゃん」
「はい。なのでこれが嘘ってちゃんと知ってますよ。たしかタバコ吸いに外でた時に、ファンだって方に話しかけられてましたよね」
「ほんとそれだけなのにさー。これだけ見るとまるで俺がこの子とデートしてたみたいじゃん。記事もあることないこと書きやがって…」
「まあまあ、パパラッチってそういうもんですよ……でもまあ、実際可愛かったですよね、この子」
「うっわーーースンちゃんそういうこと言っちゃう?やらしー」
ゲラゲラと笑い声を上げるジヨンに、怒って反論するスンリ。2人の会話が遠のく。俺は写真から目が離せない。
顔は見えないが、肩まである髪が艶やかで、淡いピンク色のワンピースから覗く手足は細い。華奢な女の子。男なら誰でも守ってあげたくなるような、か弱い女の子。俺には全部持ってないそれ。
「……なんだよ」
こういう子がジヨンにはお似合いなんて、知りたくなかったのに。
「?タプヒョンなんか言いました?」
「…………別に」
そう言って写真をスンリに押付け、そそくさと帰宅の用意を始める。もうここにいたくない。
「なんか怒ってます?」
「別に怒ってない」
「……いや明らかに苛立ってるじゃん。ごめん、嘘だとしてもこんなの撮られたのは俺の不注意だった。メンバーに迷惑をかけたかったわけじゃないのに」
ジヨンが不安そうな瞳でこちらを見る。やめてくれ、そんな顔で見ないで。俺がどんどん惨めになるだけ。
「……別に。俺には関係ないし。まずこれが嘘だって証拠本当にあんのかよ」
「…タプヒョン?どういうこと?」
「そのまんまの意味。可愛かったんだろ、スンリも言ってた。よかったな」
自分でも何を言ってるのかわからなかった。こんなこと言いたくないのに。
「……何言ってんの?タプヒョン」
「………………もう帰る」
シン、と静まる。テソンもヨンベも心配そうにこちらを見ていていたたまれない。カバンを乱暴に掴んでその場を後にした。彼の顔を見れないまま。
家に着いて、まっすぐに酒の棚に向かう。置いてあったウイスキーは度数の高いもので、グラスにドバドバ注ぐと一気に煽った。喉が焼けるように熱くなって、そのあとその熱が広がった。それをもう一度繰り返す。今度は心臓も頭も熱くなった。
「…っはぁ……バカみたい」
本当にバカみたいだ。俺は何してんだろう。ジヨンを好きになって、彼の理想に少しでも近付こうと無駄なことして。そうしたからって何になる。女々しいにも程があるだろ。俺は俺だし、立派な男で、どうあがいたって彼の彼女にはなれない。わかってたはずなのに。
「…ひ、ぐぅ…っ、」
情けない。惨めすぎて涙が出る。全部自分勝手なことしてるのはわかってるのに。それでも涙は止まってくれない。震える手でもう一度グラスに酒を注ぐ。この酒みたいに、俺の想いも全部流れて表に出てしまえばいいのに。そしてそのまま消えてくれたらどんなに楽か。惨めな俺を誰か笑って。
『俺、タプヒョンのこと、なんでも分かっちゃうの』
「…わかってねーじゃんっ、嘘つき」
分かるなら、今の俺を助けて。好きになって、その手で俺を抱きしめて。
そんなこと、言えやしないけど。