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藍の誕生日。ふたりで過ごす夜。
ケーキを食べて、プレゼントを渡して、幸せな空気の中。
「なぁ、祐希さん」
「ん?」
「誕生日ってさ、わがまま言ってええ日やろ?」
「まあ、そうだな」
「ほんなら……全部ちょうだい」
「は?」
「ぎゅーも、ちゅーも、言葉も、手も、時間も……今日だけは、祐希さんの全部が欲しいねん」
「お前なぁ……」
「アカン?」
「ダメなわけないだろ」
その言葉と同時に優しく抱きしめられて、藍はうれしそうに目を細めた。
「なぁ、今日も明日も好きやけど、誕生日の好きはもっと大きなんねん」
「そう言われたら毎日お前の誕生日にしてやろうかな」
「ふふ、ほんなら毎日甘えるわ」
祐希の全部を、世界一幸せそうな顔で受け取る藍。
その笑顔を守りたいって、心から思う。
ふたりの世界は、「甘やかしたい」と「甘えたい」がぴったり重なる場所。
祐希にぎゅっと抱きしめられながら、藍は小さく声を漏らす。
「あったかい」
「そりゃ俺だからな」
「ふふふ、俺だけの祐希さんや」
祐希は笑顔を浮かべながら、藍の髪を優しく撫でる。
その仕草がくすぐったくて、藍はまた目を細めた。
「なぁ……好きって、もう一回言って」
「欲張りだな、お前」
「誕生日やもん。今日くらい、好きって何回でもほしい」
「わかったよ」
少し息を整えて、祐希は藍の耳元で囁く。
「好きだ、藍」
耳に落ちた低い声に、藍の頬は一気に赤くなる。
「……っ、反則やわ。ドキドキ止まらへん」
「それも誕生日特典だろ」
祐希の言葉に、藍は胸いっぱいに笑顔を咲かせた。
「なぁ……祐希さん。俺、こんな幸せでええんかな」
「お前は俺に幸せにされるために生まれてきたんだよ」
一瞬、時間が止まったように感じた。藍は思わず祐希を見上げ、震える声で笑う。
「……ずるいなぁ。そんなこと言われたら、一生そばにおりたなるやん」
「それでいい。ずっと俺のそばにいろ」
抱きしめ合う腕が、また少し強くなった。
その夜、藍は誕生日の幸せを何度も何度も重ねて受け取った。