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第三章・無力な自分
いじめられなくなった日から二日が経った。私は学校に行くのが楽しみになった。だけど、果南・グラウンに向けてのいじめはエスカレートしていくだけだった。けれども、彼女はめげずに学校に来て皆に話しかけようと頑張っていた。それを見た私と能代さんは話しかけようと試みた。 その日の昼休み、独りぼっちの果南・グラウンに話しかけた。
「グラウンさん。良かったら一緒に話さない?」
すると彼女はにっこり笑ってこくりとうなずいた
「わたしもいい?」
と、能代さんがいうと
「いいよ。お話ししよう!」
そう答えてくれた。そこからドイツのことについて聞いたり、好きなものとか色々話した。そういう楽しい時間はあっという間に過ぎていつの間にか予鈴がなっていた。そして席に座ると果南・グラウンが
「棗って呼ぶから、私の事も果南って呼んで。」
と、言われたので喜んでそう呼ばせてもらうことにした。
翌日、果南に向けられたいじめは私の時よりも比べものにならないぐらいひどくなり、私は見ていられなくなった。机に落書きがされていたり、ノートが破かれていたり、仕事を押し付けられたり。私は果南に話しかけた。
「果南、先生に相談した方がいいよ。」
すると彼女は
「いいの。棗は心配しすぎ。」
そういわれた。無理に笑っているのは分かっている。
「でも…。」
「大丈夫だから!心配してくれたのは、ダンケ・シェーン。」
そう言い残し教室から出て行った。私はどうしても不安でしょうがなかった。
ある日、果南は学校を休んだ。次の日も、次の日も来なかった。土曜日、柳川空花先輩の家に行くことにした。ピンポーンインターフォンを鳴らすと空花先輩の声が聞こえてきた。
「はーい。今鍵開けるね。」
そう言った直後ガチャとドアの鍵が開く音がした。数秒後にドアが開いた。
「どうぞ、入って!」
「お邪魔します。」
そう言い玄関で靴を脱ぎ空花先輩の家に上がる。先輩の部屋に着くと不思議そうな顔をした。
「棗が私の家に来るなんて珍しいわね。何かあったの?」
そう聞かれると私はぼたぼたと涙が零れた。何故かは分からない。でも、何故かすごく安心したのだ。それを見た先輩は、何も言わず背中をさすってくれた。
「落ち着いた?」
そう先輩の声を聴いてこくりと頷いた。何分経ったかは分からないけど少し楽になった。するとコンコンと扉がノックされた音がした。先輩が扉を開けると男の人が飲み物を持って立っていた。多分先輩のお兄さん、柳川海星さんだろう。すると先輩がびっくりした顔をして
「兄上⁉居たなら言って下さいよ。」
そう言い溜息を着いた。
「済まないな。なんかお取込み中みたいだったから区切りがいいところまで待っちまったよ。」
そう言い苦笑した。私は一応挨拶をしようと立ち上がった。
「お久しぶりです。梅崎棗です。」
そういうとニカッと笑い
「おう。ゆっくりしていきな。」
と、言ってくれた。すると先輩が不服そうに
「私空気でしょうか?」
と言ったので海星さんはふっと笑い
「ごめんて。じゃあ」
そう言い飲み物を先輩に渡して出て行った。先輩は溜息を着きながら
「で、どうしたの?」
と、聞いてくれた。私はゆっくり果南の事を話し始めた。
「果南今いじめられてるんです。今まで私に起きてたことがそのまま果南の方にいちゃって…。そして今、私の時よりも酷い事されていて…大丈夫?と聞いても気にしすぎだよ。と言われて。最近学校休んでいるし、どうしたらいいのか分からないの。
」そう言い終えると先輩は少し考えこんだ。私は只々俯いているだけ。
「それはさ、先生に言うべきだと思う。棗はさ、いつもここでウジウジしているからいけないの。おせっかいと思われても、嫌われてもいいっていう覚悟でやらなきゃダメでしょう。分かった?」
そう言われハッとした。私は果南に嫌われるのが怖いのだ。そしてやっと友達になった人を手放して皆に無視される日々に戻るのが怖いのだと。
「ありがとう空花先輩。」
そういうと先輩はにっこり笑い
「どういたしまして。あと先輩を外しましょう。」
と、言った。その言葉に対して私は苦笑してしまった。
「はい。気を付けます。」
「それでよろしい。」
そう言われ二人で大笑いしてしまった。 その日家に帰ってから少し考えた。果南が何で虐められたか。何故かは考えても、考えても分からなかった。