テラーノベル
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遠い遠い昔の話。
暗黒神が世界を滅ぼそうとし、それを『英雄』が討ち滅ぼしたと伝説が残されている。
だが、その後、人々は戦争や空気汚染などで、世界を自らの手で殺した。
それから、人は何度も世界を再生、破壊を繰り返した。
✵✵✵✵
「なぁ、兄貴、ほんとにここにあるのか?」
「さぁな、俺の考えが正しければ、ここにいるはずだが・・・」
そう、地下に続く階段を見ながら、恐らく双子はそう話す。
彼らは『怪盗兄弟』と言われているミスターレッドとミスターブルー。
彼らは、あるお宝を探しに、もう崩れてしまった恐らく建物だったであろう所へとやってきた。
そのお宝と言うのは
『そのものを手に入れれば世界の知識を教えて貰える』
というお宝。
だが、どんなものなのか、どれくらいの大きさなのかは不明。
盗賊達は血眼になり、それを探すが、一向に見つからない。
双子もその宝を探しにここへとやってきた。
ここは、もう億劫になるほど遠い昔。英雄がいたと言われる建物。
だが、もう長い年月を得て、建物は崩壊してしまった。
そして、その建物に地下へ続く階段を発見した。
レッドはゆっくりその地下へ続く階段の扉を開けた。
✵✵✵✵
コツ、コツ、コツ、コツ・・・
足音が長く暗い通路に響く。
「く、暗いなぁ・・」
「おい、あんまひっつくな。動きづらいだろ」
そう言いながら、2人は奥へ進む。ふと、奥にドアを見つけた。
とても錆びている鉄のドア。
鉄のドアが使われるなんて、珍しいと思った。今の時代、鉄なんかはほぼ建築や防具などの材料にされるのだから、ドアとして使われるなんて珍しかった。
レッドとブルーは顔を見合せ、ゆっくりドアを開けた。
✵✵✵✵✵
ドアの先は四畳程だが、真っ白な世界だった。いや、壁や天井、床が真っ白な為、そう勘違いした。
「・・・うわぁ・・・」
ブルーは思わずそうこぼす。まるで、別の世界に来たと錯覚してしまうほど、真っ白な景色が目を刺激した。
「な、なぁ・・・兄貴」
「ん?」
「・・・“あれ”」
と、ブルーが指さした先には、誰かがいた。
(は・・・?他にも盗賊がいたのか?だが、ここは一本道だった気が・・・?)
レッドはそう思いながら、ブルーを背に隠し、ゆっくりゆっくりとその誰かに近寄った。
その人は恐らく椅子に寄りかかって瞼を閉じていた。
床に銀色が散らばっていた。いや、よく見ると、この椅子に座っている主の髪だと気づく。 髪は光に反射するように、銀色がキラキラと輝いていた。
長い長い髪だ。
レッドとブルーはそれを踏まぬように椅子に座る主に近寄った。
「・・・人形みたいだ・・・」
そうブルーは呟く。目の前の人は、人形のような顔立ちに、銀色の髪の一部が水色の髪を流していた。
レッドとブルーは何故か“彼”を懐かしいと感じた。
(・・・ん?“彼”?なんで俺、こいつを見てすぐ“男”だって気づいたんだ?)
目の前の人は長い髪をしているため、大概は初見は女と勘違いするはず、なのに、自分どころか、弟も、何故か彼を“男”と認識した。
それに、首を傾げると、
「・・・だれ?」
ふと、声が聞こえた。2人は思わず驚いた。
目の前の彼が、“目を開けた”
目の前の彼は快晴をそのまま埋め込んだこのような青い瞳をこちらへ向けていた。そして、彼は口を開いた。
「・・・君たちは、だれ?」
そう目の前の彼はレッド達に聞いた。レッドとブルーは驚きのあまり、声が出なかったが、絞り出すように、レッドは答えた。
「・・・お前こそ、誰だよ・・・?」
すると、目の前の彼はキョトンとした。
「ぼく?・・・僕は・・・あれ?・・・僕ってなんだっけ?」
目の前の彼はそう答えた。
「・・・記憶がねぇのか?」
「・・・わかんない。僕、もう何年も生きてるから・・・僕の名前を呼ぶ人もいないし・・・あぁ、そうだ。前に1回知らない人が僕のことを呼んでたかひとがいたなぁ・・・」
「「何年も生きてる?」」
「うん」
そう彼は微笑んだ。そして、答えた。
「・・・その人、“世界の知識を与える者”って呼んでたなぁ」
「「!?」」
レッドとブルーは驚いた。つまりは、この“彼”がお宝なのだ。
何千年、何万年もの知識を蓄え、出会った者には、世界の知識を与えるお宝。
それが、彼なのだ。
彼はニコッと微笑んだ。
「・・・お前が、“世界の知識を与える者”・・・なのか?」
そうレッドはこぼした。目の前の青年は首を傾げた。
「・・・うーん、そう言われてるけど、別に世界の知識を与えるっていうか、僕、こう見えて永く生きてるから、その時の知識を持ってるだけなんだけどね?」
と、小首を傾げながらそう言う。レッドとブルーはぽかんとしていた。
「何かききたいことある?なんでもいいよ?ここに人がくるなんてもう何年ぶりだろ」
と、青年は嬉しそうに笑い、立ち上がろうとした、が、
バタンッ
突然青年は地面に転ぶ。レッドとブルーは慌てて駆け寄った。
「だ、大丈夫ですか!?」
「いてて、ごめん・・・しばらく歩いてないから、上手く足が動かなくって」
と、青年は苦笑した。
「・・・しばらく歩いてないからって・・・椅子から降りた途端に転ける程足の筋肉が落ちてるんじゃ・・・ていうか、どうしてここにいるんですか?」
そう聞くと、青年はうーんと唸り始めた。
「・・・わかんない」
「「は?」」
「・・・わかんないけど、ここは僕にとって大切な場所・・・だった気がするんだよね」
「大切な場所?」
ふと、言われてみれば、何故かここに来る時、ここが“懐かしい”と感じた。それはブルーも同じなようで、何故かここを“知っているような気がした”。
「・・・外の世界は今どんな感じ?」
そう青年は聞いた。ずっと長いあいだ、ひとりでここにいたと考えると、どれだけ寂しくて、どれだけ辛かったのだろう。レッド達には想像も絶する年月をひとりで過ごしてきたのかもしれない。すると、レッドは口を開いた。
「・・・なら、俺らと来るか?」
「兄貴?」
「?」
青年は首を傾げた。レッドは青年に手を差し伸べた。
「・・・そんな外の世界気になるならさ、俺らと来ないか?一緒に外の世界に」
そうレッドが言うと、青年はクスッと笑った。
「・・・君、あんま覚えてないけど、僕の大切な子達にそっくりだ」
「・・・子達?」
「・・・もう、顔も名前も声も忘れちゃった・・・忘れたくなかったのに、忘れてしまったってことだけは覚えてる。・・・とてもとても大好きで大切な子達がいたんだけどねぇ・・・」
そう青年は答える。恐らく、永く生きすぎて、昔の記憶が上手く思い出せないのだろう。すると、青年はこたえた。
「うん、いいよ。僕も、久しぶりに外に行きたいし」
そう笑った。
「・・・そういえば、お兄さん名前は?」
そうブルーが聞くと、青年は苦笑した。
「・・・名前、覚えてないんだよね・・・」
「名前がねぇのは不便だよな・・・」
と、レッドとブルーはうーんと唸る。すると、
『すまない!』
ふと、知らない青年が笑いながらそう叫ぶ映像が頭に浮かんだ。だが、それはすぐシャボン玉のように消えた。
けれど、懐かしいと思った。
「「・・・すまない先生?」」
「へ?」
「あ、いや、なんかふと降りてきて・・・で、先生ってのは、知識を教えてくれるから先生、だから、すまない先生、どう、かな?」
そうブルーは恐る恐ると言うように聞くと、青年は微笑んだ。
「うん、いいね、じゃあ、僕の名前は“すまない先生”だね」
と、笑う。そして、ブルーとレッドの手を借りながら、すまない先生はその場を離れた。
✵✵✵✵✵
これは、前世の業か、はたまた神のイタズラか、不老不死となり、記憶を無くした彼は、新たな子供達と共に、世界を巡る旅へと出た。
これが、吉と出るか凶と出るか、それは誰も知らない。
コメント
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語彙力すげえ!ほんとに初めての方?私より上手いんだが! すまない先生…レッドとブルー(子孫だけど)の記憶って戻るんかな!バナナとブラック達も出て欲しいな…でるかな!続き楽しみ!