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思いのほか、結構な難題だった事に気付く。
何度も何度もアクセサリーのページを行き来して、俺はやっと候補を絞りこんだ。
超初心者用には、やっぱりネックレスだ。効果は全ステータス+1。冒険の初期はなにせステータスが弱い。こういうのが意外と助かるんだよな。
駆け出し用には、指輪。1日1回だけ、回復(小:単体)してくれる。財力もないうえに魔力も少なく、魔法のレベルも低いだけに、この時期回復アイテムは重要だ。
他にも候補を2~3選んで、俺はようやくホッと息をついた。最終決定はゼロがやればいい。
一段落ついた俺は、昼メシを貰いにカフェに向かった。
みんなの分も貰っていこうかな。サンドイッチなら、各々、特訓しながらでも食えるだろう。
「あぁっ! ハクさん、いい所に!」
フロアに入るなり、でかい声で呼び止められた。
呼び止めたのはどうやらオレンジらしいが、その場にいるシルキーちゃんたち全員が、なぜか期待に満ちた目で俺を見ている。
「お願いします、ハクさん。お客さん役やってください!」
「いっぱい練習したけどぉ、やっぱり不安なんですぅ」
ウルウルした瞳で懇願される。
なるほど、練習台ってわけね。昨日から俺、そういうのばっかだな。
とは言え、確かにロールプレイは大事かもしれない。特に受付は最初に客に相対する、言わば顔だしな。
「よし、任せろ」
「ありがとうございます!!!」
シルキーちゃんたち一人ひとりが行う接客に客として応じ、気付いた点は丁寧にアドバイスする。シルキーちゃんたちも真剣そのものだ。
だいたい二巡した頃だろうか。
「よう! 面白れぇ事やってんじゃねぇか!」
フロアに突然でかい声が響き渡る。この声は、言うまでもなカエンだな。
「なんだよ、こっちに来るなんて珍しいな」
いつもはマスタールームに直なのに。
「ああ、そういやぁ構想は聞いたが、実際に受付やカフェがどんな感じか、ヤツが来る前に見とこうと思ってなぁ」
ヤツとは王子様のことだろう。下見に来るとは、カエンも意外と慎重なタイプらしい。
「だがまぁ、この分なら大丈夫そうだなぁ」
カエンの言葉に、俺もシルキーちゃんたちもホッと息をつく。王子様をよく知っているカエンがそう言うなら、きっと大丈夫なんだろう。ホッとしたら、ふと大事なことを思い出した。
「そういえばカエン、王子様って、名前なんて言うんだ?」
名前も知らないとか、結構失礼かもしれない。
「ああ、言ってなかったか。アラインだよ。アライン王子だ。だいたい三時頃こっちに着くって言ってたぜぇ?」
ま、後は頼んだ、と言うとカエンはさっさとギルドに戻ってしまった。ホントにちょっと様子を見に来ただけだったんだろう。
俺もそろそろ戻らないと。特訓中のゼロやルリに昼メシを届けてやろうと思ってたんだった。
思いのほか時間くっちまったな。
シルキーちゃんたちから感謝の言葉と共にサンドイッチを受け取ると、俺は急いでマスタールームに戻る。
そこには意外にも、ゼロとユキの姿があった。
「あ、おかえり!」
「あれ? もう終わったのか? えらくごきげんだな、上手くいったのか?」
「うん、早くも3人合格! 僕3つも魔法覚えちゃった。エルフのみんな、教えるの超うまいし、すごい優秀だよ!」
なんだと? この短時間で3つも!?
魔法ってことは、ミズキとコノハの女性陣と、インテリっぽいエアルが合格したのか。エルフのみんなが、っていうか……実はゼロがすごいんじゃないか?
俺の驚愕には一切気付かず、ゼロは楽しそうに続ける。
「ハクは? いいの見つかった?」
「あ? ……ああ、賞品にする魔具か。カタログに印つけてある。オススメはその、二重丸のヤツな」
俺が渡したサンドイッチを頬張りながら、うわぁ、理想通り! とか騒いでいると思ったら、ゼロは急に真顔になった。
もしかしてまた何か、思いついたのか?
「ハクさ、さっきカエンと王子様の話、してたよね」
「ああ、モニターで見てたのか。アライン王子な、3時ぐらいに来るってよ」
「もしかして、応接室とか要るのかな。さすがに王子様までマスタールームに入れるわけいかないし。カフェとか、ご褒美ルームで何とかなると思う?」
サンドイッチをハグハグとがっつくユキをモフりながら、しばし考えてみる。
……いや、ムリじゃねぇか?
だってお互いに、お付きの兵士やダンジョンモンスターには聞かせられない話もあるだろう。
「やっぱ防音の効いた応接室でも造った方がいいんじゃねぇの?」
ゼロ、満面の笑み。
その笑顔を見て、俺は急に後悔する。もしかしてこいつ、造ってみたいだけだったかも知れない。
いや、でもやっぱり必要だとは思うが。なんかハメられた気がするのはなんでだろう。
嬉々として豪華な応接室を召喚するゼロにため息をつきつつ、俺はルリたちに昼メシを届けるためにマスタールームを出た。
まぁ、なんだかんだで、これで準備は整っただろう。
いつでも来いよ、王子様。