テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
ビーーーーッ
ビーーーーッ
ビーーーーッ
『ダンジョンに侵入者が現れました』
警報と共に、淡々としたアナウンスが入る。
来た。ついに来てしまった。
王子様だ。
「いらっしゃいませ!」
シルキーちゃんたちの、ちょっと緊張気味の声がモニターごしに聞こえてきた。マスタールームに待機していた俺たちも、アライン王子に挨拶するため、受付に移動する。
最初に見えたのは、鎧を着込んだ屈強な兵士たちだった。
さすがに王子様の護衛を任されるだけあって、動きに隙がない。先頭の兵士がこちらに気付き、声をかけてきた。
「このダンジョンの主はどなたか? アライン王子のお着きである。御前に控えよ」
ゼロがあたふたと飛び出し、俺はそれを制止しようと、ゼロを守るようにさらに前にでる。その時だ。
「ばっかじゃないの?」
男にしてはやや高めの声が、あたりに響いた。
鎧たちを掻き分けて出てきたのは……え? これがカエンも逆らえない、王子様?
まだ『可愛い』という表現のほうが似合いそうな童顔。身長は170cmくらいか、肩口で切り揃えられたストレートの金髪にでっかい緑色の目、真っ白な肌。エルフの中に混ぜても違和感がないんじゃないだろうか。
たしか、18歳・男、だったよな?
ついつい王子様を凝視する俺たちには目もくれず、王子様はいきなり鎧たちに説教を始めた。
「そういうくだらない形式ばったことは要らないって、いつも言ってるだろ?」
「身分の違いは最初にわきまえさせませんと。アライン様がその調子ですので、国民も皆、垣根が無さ過ぎですから」
おおっ、鎧の男も負けていない。王子様とは真逆の黒髪黒目が、クールに王子様を見下ろしていた。
もちろん王子様は不満そうに眉を寄せ、しっかりと睨み返している。
「このダンジョンの主とは、国として交渉したいことが山ほどあるんだ。友好的に接していきたい。……とにかく、失礼は許さないから」
王子様と先頭の鎧の男との間に、一瞬火花が散った。
「……御意」
へぇ、やっぱ御意とか言うんだな。
感心していたら、その鎧の男がツカツカとこちらへ近寄ってきた。反射的にゼロを後ろに庇う。この男は、他の鎧たちに比べても威圧感が相当高いからだ。多分、相当の手練れなんだろう。
「先程は失礼した。非礼を許して欲しい」
意外にも折り目正しく礼をする。
「私はアライン王子の護衛隊長ユリウス。以後、お見知りおきを。改めて、このダンジョンの主はどなたか?」
「あ、あの、僕です。ゼロといいます。よろしく、お願いします……」
一方うちのダンジョンマスターはもちろんヘタレモード発動だ。こういう場面ではキリッと対応して欲しいもんだが、まぁムリだよな。
ユリウスも苦笑している。
「これはこれは若い主だな。怖がらせてしまったようですまない。悪いが、アライン様にダンジョンの説明を頼めるだろうか?」
ゼロはコクコクと頷くと、王子様と鎧たちを、応接室へと案内した。
全員を入れるわけにもいかず、室内に入るのはアライン王子とユリウスだけと決め、他の鎧たちにはホールで待っていて貰うことにして、ドアを閉めようとした瞬間。
カエンが凄い勢いで乗り込んできた。
「アライン、てめぇっ! ギルドで待ってろって、あんだけ言ってあっただろうが!」
「やだよ。あんな酔っ払いばっかのとこ」
カエンの怒声を聞いても、王子様は涼しい顔だ。
「ユリウス! てめぇもとめろよ!」
「こればかりは、アライン様と同意見でしたので」
こちらも涼しい顔だ。カエンの王宮での扱われ方が偲ばれる。
これでいいのか? 守護龍の扱いって……。
ぶりぶりに怒っているカエンを気にする様子もなく、王子様はゼロに先を促している。なるほど、今朝カエンが言ってた通り、大変に肝の太い方のようだ。そして、ユリウスも負けず劣らず図太いタイプなんだろう。
「えっと……」
「ああ、スマンなあゼロ、こんなヤツらで。悪いが説明してやってくれ」
カエンにも促され、やっと気持ちも落ち着いてきたらしいゼロは、意外にも手際よくダンジョンの説明を始めた。
受付とカフェ、ダンジョンの構造や、想定している客層、ダンジョン内の装備品販売、クリア後のサービス。街中の、ギルドと併設されていても問題が出ないように自分たちなりに考えていることも含め、かなり的確に伝わったんじゃないかと俺も思う。
カエンもところどころでフォローしてくれた甲斐もあって、あらかた話し終わると、ゼロは少し困った顔をした。
「あとは実際にダンジョンに入って、体験して貰うのが一番だと思うんですけど……ここって、初心者用のダンジョンだから」
俺もゼロの言いたいことがすぐに分かった。なんせこの護衛たち、どう見てもレベル20オーバーしかいないと思う。
すると王子様は、輝く笑顔で言い切った。
「大丈夫! カエンから、町娘でも半分は進めるダンジョンだって聞いてたから、実はちょうどいいのを連れてきてるんだ」
そして応接室の扉からひょいと顔を出すと、ホールで待機していた鎧の一人に「そろそろ連れてきて?」と指示している。
うわ、なんだろう。扉の隙間から見えた鎧、超イヤそうな顔してたんだけど。
不安だ……。