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マリンが着替えを終えて今は『ラヴィラビット』の捕獲クエストに来ている。
まず、ラヴィラビットについて話す前にマリンがどんな装備を貰ったかを簡単に話すと、ほとんど普段着に近い装備品だった。頭装備には『ムスビグサ』という植物の花冠。これを装備と言っていいのか怪しいと思うが、実はこんなんでも立派な装備なのだ。
花冠自体はべつに装備でもなんでもないが、ムスビグサで作られているとなると話は変わる。防御力に関しては皆無だが代わりに独特な香りを放つ植物で、その匂いは人間にはよく分からず分かっても『良い香り』で済む。
しかし、魔物たちからすればムスビグサの放つ香りは人で言う銀杏踏み潰した時のあの臭いと同じ臭さなのだ。なので、魔除けとしての効果の側面を持つ。ちなみに俺も一人でクエストに行く時、道中ムスビグサを見つけたら少し摘んでいき腕輪にして身につけている。が、効力は長く持って一日程度で翌日には魔よけ効果はなくなりただの花飾りで終わる。
マリンに装備させた花冠も同じく一日で効力を失うのか、それとも何かしらの魔法で効果を伸ばしてるのか。その真意は分からないが少なくともギルド側はマリンを守ることには全力を尽くしてるらしい。というか、恐らくギルドというよりあの受付の人が肩入れしてるんだろうなぁ。
胴体装備は白いワンピース。もちろんこれもただのワンピースでは無い。使われてる素材は『ヨロイグモ』の糸を使ってる。
ヨロイグモとは名の通り、鎧をまとっているかのような硬さを持つことから付けられた名で、このクモの一番の怖さはその糸になる。糸なのに鋼鉄かの如く硬く、ファストで手に入る装備ではまぁ切れない。
しかし、所詮クモの糸なので火には弱いのだ。マリンのワンピースもヨロイグモの糸を使ってるなら恐らく火に弱いだろう。だが、この辺の魔物は火を使うものはいない。且つ物理攻撃に対してはその辺に売ってる鎧よりも硬い上に衣類なので身軽。
この時点で俺よりも装備はいいモノ。何せヨロイグモの糸で作られた衣類なんて高級品だし、俺が何年やっすいクエストで働いたら買えるかどうかのレベルだ。それほどまでにマリンが大事にされてるのは嬉しいような、自分よりもいいものを使っていて悲しくもある
足装備もやっぱりいいもので『ヤイバクサ』という植物で作られたサンダルで、草とか名前についてるが一応ツル科でそれを編んで作ったものになる。
強度もヨロイグモよりかは劣るがそれでも植物なのにそれを思わせない丈夫さを持ち、名の通り上手く使うと刃として扱える。なので蹴りとかもコツ掴むと打撃と斬撃の二種を扱える訳だが、まだマリンは子供のためそんな器用なことはできない。
で、肝心の扱う武器は俺と同じ短刀という武器種だが持ってるものは『疾風の刃』というもので、これは切れ味もさることながら一番はバフの一種でそれを手に持ってる合間は移動速度が少し上がるというもの。
とにかくマリンの装備は彼女を守るため、且つ逃げに徹することが出来るようの軽装というわけだ。俺にはなんで安物の装備支給なのにマリンにはこんなに至れり尽くせりなのか?ぶっちゃけ腑に落ちんが、大事にしてくれてるという面で見ればまぁ納得せざる得ない。
さて、では本題のラヴィラビットとはどんな魔物なのかということだが、実際のところほとんど普通のウサギと変わらない。が、変わった特性を持っていていわゆる『魅了』というものを持ってる。
このイメージはサキュバスとかが強いが、ラヴィラビットや他の動物達も稀に持っていることがある。サキュバスとラヴィラビットの持つ魅了は内容が変わっていて、サキュバスは主に人間の男性に効力があり、ラヴィラビットは『動物好き』に対して効力があるのだ。
で、大抵の人間は猫や犬に弱いので魅了に掛かりやすい。けど、ラヴィラビットには決定打となる攻撃方法がなくそれほど驚異では無く、且つ魅了の強さもサキュバスなんかと比べると強力ではなく自力解除も可能なのだ。
なので戦闘面で脅威とは言えないが、その中で唯一怖いのが繁殖力の高さがある。油断すればこの平和な草原もいっぱいラヴィラビットだらけになる。だから退治依頼もよく来る。
ちなみにちょっとした豆知識だが、繁殖力が高いのを逆手にとって人々の食料になる事もあるので、脅威であると同時に彼らの存在は俺たち人間にとってありがたい存在でもある。
さて、ここまでがラヴィラビットとマリンについてのざっくりとした説明だ。で、今現在何してるの?というところだが、しっかり狩りしているところだ。
俺は底辺冒険者で大したスキルとか何も無いので、ひたすら地味に矢を射るだけ。色んな職を触ってきたから中途半端に色々出来て、いわゆる器用貧乏状態の人間だが、そのおかげである程度のクエストは受けられる。
特別な力はなーんにもないが、凡人らしく生きて来たので多少の知識や技術があるというわけだ。弓を扱えるのも『狩人』を少しかじっているので扱える。が、もちろん狩人の持つスキルが使えるかと言われると全く使えないのが凡人の俺の限界値である。
「ミナルお兄ちゃん私五羽捕まえた!」
「おぉ!凄いじゃないか!!」
「えへへ〜」
マリンは罠魔道士の才があり、受付のお姉さんから一つだけ簡単な魔法を教えてもらい、その魔法を使って今こうして手伝ってくれている。教えてもらった魔法は『捕縛【Lv1】』というもので、設置した魔法陣の上を通ると発動し、ツルが伸びてきて対象者を捕まえるという魔法だ。
察しがいいやつは【Lv1】という文字を見てもしや?と思っただろうが、その勘は正しい。レベルが上がれば対象を捕まえるツルが変わっていく仕組みで、聞いた話では鎖とかにまで化けるとも聞く。
俺個人の考えだが、恐らくこのレベルは上げられるもので、上げ方は至って単純。繰り返し何度も使用することだろう。
それ以上に俺は子供の成長というものを侮っていた節がある。マリンは推定八歳と俺は思っているが、仮にそうだった場合そのぐらいの歳の子は全てに興味を示す。また、無垢な状態ならばこの罠魔法も真価を発揮するだろう。
大人が使えばランダムに配置したつもりでもどこかしらで規則性が生まれてしまう。賢い奴が敵だった時、その規則性を読まれたら使い物にならない。だが、彼女はまだ子供。故に思考が読めないのだ。
現に、彼女が仕掛けた罠魔法全てが起動しラヴィラビットは捕縛されている。近いうちに彼女に罠魔法の魔導書を与えれば恐ろしい速さで成長して、さらに俺を超えていくだろう。それが嬉しいような悲しいような、そんな気持ちはあるが………