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グレーゴルさんとレオボルトさんは、警備のために食堂から出ていった。

残ったのは15人だけど、それでも人数はまだまだ多い。


もう少し時間が経つと、話す相手もそれぞれ徐々に固定化していった。

飲み会とかでもそうだけど、途中からは気の合う人と長く話すことになるもんね。


そんな中――



「そろそろ、妾のとっておきを出すことにしようかの!」


――グリゼルダが上機嫌に、そんなことを言った。

そしてそのまま、食堂の隅の棚からひとつの大きな瓶を出してくる。


「おお、グリゼルダ様。それは何でしょう?」


見慣れぬ瓶に興味を持ったのはポエールさんだった。

さすが商人、好奇心は人一倍だ。


「ふふふ♪ これは幻の酒、『竜の秘宝』というものじゃ!

むかーしむかし、妾を崇める者がこれを奉納してきてのう。ひとくち飲んで、とても気に入ったのじゃよ。

今日は特別じゃぞ? 誰か飲む者はおらんかえ?」


その言葉に、食堂にいる全員が手を挙げた。

瓶を出してくると同時に、みんなの注目を強く集めていたのだ。


グリゼルダはその光景を見て、誇らしく微笑んだ。

ちなみにそのお酒は日本酒のようなものらしく、グリゼルダはお|猪口《ちょこ》のような小さなグラスをクラリスさんに持って来るように頼んだ。


……そんなグラス、あったっけ?

このお屋敷に引っ越してきて間もないし、さすがにそんな食器は――


「グリゼルダ様、お待たせいたしました」


「おお、これこれ! これくらいのグラスが丁度良いんじゃよ♪」


……私の心配も虚しく、クラリスさんはあっさりと良い感じのグラスをたくさん持ってきた。

あれ? いつの間にそんな……?


私の知らない間に、何やらいろいろと進んでいるようだ……。



「あー、グリゼルダ。私にもください」


「おう、アイナもやはり飲まなければな。

『竜の秘宝』はアイナに作ってもらったものじゃし」


「え? そうなんですか?」


目をキラキラさせるポエールさんが聞いてきた。


「まぁ、錬金術なんですけどね……。

でも素材はグリゼルダが用意してきたんですよ」


今日あげたお小遣いで何を買ってきたのかと思えば、グリゼルダはこのお酒の素材を買ってきていたのだ。

それだけのために金貨3枚を使ってきたわけだけど……なかなかの値段である。


ちなみに私が作ってはいるものの、味見はさせてもらえないでいた。

だから私も、このお酒を飲むのはこれが初めてだったりする。



「――よしよし、全員に渡ったかの?

それでは改めて、乾杯じゃー♪」



かんぱーい!



……何に乾杯するのかは分からないけど、食堂に再び乾杯の声が響き渡る。

さてさて、それでは肝心のお酒の味はどんなものやら――


「――からっ!?」


口に含めてみると、とんでもない辛さが口の中に広がった。

アルコールの度数が高いのだろうか。思わず火を噴き出してしまいそうな……!


しかしそれも一瞬のことで、辛さが通り過ぎると、甘さというか清涼感というか、そんな後味が口の中を支配した。



「おお、何たる美味……。

私、こんな美味い酒は初めてですっ!!」


一番興奮していたのは、ポエールさんだった。

実力派の商人だから、美味しいものもいろいろと食べたり飲んだりしているだろう。

その上で『竜の秘宝』が美味しいと言ってくれるのは、やはり嬉しくなってしまう。


「ふふふ♪ そうじゃろ、そうじゃろ?

しかし妾が昔飲んだものよりも圧倒的に美味いのう。やはりアイナの錬金術で作ったからかのう……」


「きっと品質も、S+級なんでしょうね」


エミリアさんはグラスをちょこんと持ちながら、ちびちびとお酒を啜っていた。

可愛い飲み方だ。私も見習うことにしよう。


「はい、しっかりS+級ですよ。

グリゼルダが認めたお酒を私が作ると、こうなるんですね。なるほど、なるほど……」


「言ってみれば、酒の神器というやつじゃな!!」


「確かにそうですね!!」


グリゼルダの言葉に、ポエールさんは納得するように頷いた。

……神器に比べれば、素材は圧倒的に安いけどね。



辺りの様子を改めて眺めてみると、アドルフさんが2杯目を手酌でおかわりしていた。

神妙な顔をしているが、それはきっと『竜の秘宝』を味わっているのだろう。


警備メンバーの師弟コンビ、弟子のノーマンさんなどはやたらと感動していた。

その横で師匠のチェスターさんが、世界は広いものだな……などと、誰かに向かって呟いている。

……きっと自分に対しても言っていたのだろう。


メイドさんたちは少量を口に含める感じで、その味をじっくりと確かめていた。

そして早速、このお酒が合う料理について議論を深めているようだった。

何と言う勉強熱心さだろう。


リリーは子供だからと止められていた。

飲んだところで辛口だから、きっと合わないと思うけどね。リリーは見た目通り、子供舌だし。



そして輪から微妙に外れたところで、ルークもしっかり飲んでいた。

……え? あ、飲んじゃった?


「ルーク、結構強いお酒だけど大丈夫?」


「はい、このくらいは問題ありません。

しかしさすがアイナ様の作られたお酒ですね。全体から優しさと可愛さを感じますが、しかしその後ろには強い一本筋が通っています。

このお酒を飲めば、皆がアイナ様の素晴らしさを理解することができるでしょう」


ルークは静かに、そして力強く言った。

……ダメだ、やっぱり余計な言葉が多くなってる……。


「ふむ、ルークは面白い例え方をするのう?」


「いえ、グリゼルダ様。面白いも何も、すべては言葉通りで――」


「す、すいません! ルークは酔っぱらうと饒舌になるというか、えぇっと……はい!!」


私のフォローもいまいちフォローになり切れていない。


「なるほど、ルークはそういう酔い方をするのじゃな。

面白い。いざというときには酔わせることにしよう♪」


「ちょ……、変なことを聞き出さないでくださいよ!?」


「変なこと、とな? お主、ルークと変なことでもしているのか?」


「まさか! アイナ様は私なんぞには手の届かぬお方。

そんなお方に、どうして手を出すことができましょう!!」


「だああああっ!! おしまい!! この話、おしまいーっ!!!!」


「何と、つまらんのう……♪」


私の制止に、グリゼルダはにやりと笑いながら言った。

ルークはルークで、それを気に留める様子もなく、引き続きグラスを口に運んでいた。


「アイナ様、結婚式の段取りも我らにお任せを!」


「ポエールさん、出禁にしますよ」


「えぇっ!?」


「アイナさん、容赦がない……」


エミリアさんの呟きも、今回に関しては軽くスルーだ。


「た、大変失礼しました……!

それにしてもアレですね!! この『竜の秘宝』は凄い!!

かなりの高額で売れると思いますよ……!!」


お酒の瓶を眺めながら、ポエールさんは興奮しながら言った。


「確かに……。しかもこれ、素材も大したものは無いんですよね。

……1本で金貨3枚分ではありましたけど」


「ふむふむ……。この味であれば金貨10枚は余裕でしょう。

いやいや、100枚でもいけるはずですよ!!」


お酒一本に金貨100枚……!?

確かに国賓を迎えるなどの用途であれば、それも普通にできてしまうかもしれない。

……つまりは売り方次第、ブランディング次第というやつだ。


「妾としてはあまり安売りしたくはないのう。

個人的には思い入れもあるものじゃし」


「確かに、大量販売は考えたくないですね。

ポエールさん、このお酒を売るにしても、グリゼルダと相談してから決めることにしますね」


「かしこまりました!

販売する際には、是非ともポエール商会をご用命ください!!」


最後まで営業を忘れないポエールさん。

売るのであれば、当然ながら彼にお願いすることにしよう。


……でもこのお酒、使い方によっては凄い使えそうだよね……!!

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