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【 壊れるように救われる 】
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あの日から数日経った今でも 、 俺の中の何かには 、 触れられていない 。
手が届かないような 、 逃げていくような 。
その何かは 、 見ようとすればするほど 、 見えなくなる 。
忘れようとすればするほど 、 思い出す 。
数々の感情の矛先が 、 その何かに集結しているような … 。
K ,
「 … あれ 、 なんでこの時間にアラームかけたんだっけ … ? 」
深夜三時 、 突然鳴ったアラーム音 。
なぜこの時間なのか 、 なんのためなのか 。
K ,
「 … 落ち着け 。 とりあえず … お茶を飲もう 。 」
寝室を出て 、 冷蔵庫からお茶を取り出し 、 一口 。
… あぁ 、 そんな予感はしていた 。
K ,
「 味がしない … 。 」
そんなはずないという焦燥感に駆られながら 、 沢山の飲み物を飲んだ 。
K ,
「 味が … しない … 。 」
味覚を感じなくなったのを 、 どこかで納得してしまう 。
納得できるようなことではないはずなのに 。
嗅覚も 、 鈍ってきていた 。
あー 、 そうなんだよな 。
俺は気づかないフリをしていただけで 、 確実に何かが壊れ始めていたんだ 。
… 気づきたくなかったんだ …… 。
K ,
「 っ … 、 はぁ … っ 、 」
涙が溢れて止まらない 。
でもなぜか 、 喜びも同時に感じる 。
俺の中の何かに 、 少し触れられたようで 。
正体の掴めない何かに壊されていくのに 、 壊されるたびに 、 その何かに触れられた喜びを感じられる 。
あぁ 、 俺はもう戻れないんだ 。
K ,
「 はは … 、 ははっ … 。 」
壊れるように救われるこの感覚が 、 俺を襲う 。
“ もうなんでもいい ” と 、 全てを投げやりにしたくもなる 。
でもまだ 、 視覚はある 、 触角はある 、 聴覚もある 。
大丈夫 。 生きてる 。 俺は生きているはず 。
… そうだよ … な … ?
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