テラーノベル
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ようやく「そろそろ出よっか」という玲於の声が聞こえ、二人が部屋から出ていく音を確認すると
俺もゆっくりと部屋の扉を開け
となりの部屋は暗く、人影がないのを確認すると受付に向かった。
すると受付を済ませ颯爽と店から出ていこうとする二人を見かけ
俺は急いでレジに行き精算を済ませると
店を出て玲於たちの後を引き続き尾行した。
二人はアニメイトの方に向かって歩いているようだ。
後を追うように俺もアニメイトの方向へ向かう
女の子がはしゃぎながらアニメキャラのグッズを手に取って
玲於はそれを「前もそれ買ってなかった?」
って前も一緒に来たことを匂わせるような口振りで。
店を出ると
女の子は玲於の腕にしがみつきながら楽しそうに笑って、玲於も満更でも無さそうだ。
もうその光景と
さっきのカラオケでの二人の会話を思い出しただけで
尾行している自分が馬鹿馬鹿しくなってきて、足を止めた。
玲於は俺のことが好きだなんて言ったけれど、きっと俺だけではないんだと思った。
(なんで玲於にこんな…腹立たなきゃいけないんだろ…あぁもうむしゃくしゃする…久々にメジ買ってODしようかな)
そう思い、踵を返したときだった。
後ろから「あれ、キミって昨日の子だよね?」と肩をトントンと叩かれた。
振り返ると目の前には昨日ツインテの子と一緒に
玲於の隣にいた金髪ショートの
俺と同等にピアスをバチバチにつけている女の子がいた。
その子は俺が返事をする前に「やっぱりそうだ」と口元に笑みを浮かべる。
「あっ…昨日、玲於と一緒にいた……」
「あーあたしはミチルね。玲於とは腐れ縁でさ、よく通わせてもらってんの。」
「そ、そうなんですか。俺は…」
「キミ、裏アカのソラくんでしょ?知ってるよ~」
「えっ、あ、俺のこと知ってるの?」
「うんうん、てか玲於のロック画面覗いてソラくんのこと知ってハマった感じ。ソラくん鎖骨どえろいよね~」
「そ……そう?嬉しい…」
会話の中で、よく俺の投稿に『みー』さんだと言うことと、玲於と同い年の人だということ。
さらには俺が中学の頃から大好きなジャンプ漫画
「果て」の大ファンであるという共通点も見つけ一気に意気投合したのだ。
そして1時間ほど立ち話をしてからその場で解散した。
LINEも交換して、今日の投稿待ってます!なんて言われちゃって。
なんだか気分も晴れて
玲於とはどうせ夜に会うんだし気にしなくていいや、と心晴れやかになっていた。
その頃にはもう日も暮れかかっており
玲於との約束の時間までもうすぐだったため約束のホテル向かって歩き出す。
そんなとき、スマホから着信がなった。
出ると、それは玲於からで
玲於は電話口で困ったような声を出した。
「ごめん!霄くん」
「えっ、なに。開口一番に謝罪って…」
「ちょっとこれから急用入っちゃって、今日会えなくなっちゃった」
「えっ…そ、それって今日しかダメなの?」
「うん……悪いけど、また連絡するから」
「…わかった。あっ、ねえ玲於…最後にひとつ聞きたいんだけど」
「ん?なに?」
「…今日渋谷いた?」
「え?…いないけど」
「そう……」
「なんで?霄くん渋谷いたの?」
「い、いないよ。その…なんでもない。じゃあ、また」
玲於との電話を切り、家までの帰り道を歩く。
夜になっても街中は明るくて人が多い。
そんな中を歩きながらぼんやり考えていた。
『夜は猫愛でるので忙しいしお前に構ってる暇ないの』
なんてのは比喩的に俺のことを言っているわけじゃなくて、本当に飼い猫か
または僕よりも優先度の高い誰かがいるのかもしれない。
そう考えたら
俺も『構ってる暇無い』と言われたツインテの女の子と同等なのだろう。
なんか、すごく虚しい、悔しい。
それに、渋谷いたくせに
こっちは尾行までして他の子と楽しそうに歩いてんの見てるのに
嘘つくんだ。はは。
(俺は一体玲於にとって何なの……)
そう思うとまた胸が締め付けられるように苦しくなって涙が溢れてきた。
(なんで泣いてんだろ)
自分が何に対して泣いているのかわからないまま立ち止まる。
とりあえず家に帰ろうと声を殺して泣きながら
溢れる涙を拭い、歩き出す。
その途中でドラッグストアに通りかかり、自然と足が止まる。
ふと目に入ったのは薬の棚。
それを見て思い出すのは病んだときの俺が三種の神器にも入るオーバードーズ
(あれを飲めば少しは嫌な気分も楽になるかな……)
玲於のことはムカつくけど、薬飲んで寝落ちたら何も考えずに済む。
俺はその思いでドラッグストアに入り
カゴに20錠入りのメジコンを二つ入れるとそのままレジに向かった。
家に帰ってからは母親の叱責を無視して
そのまま部屋に籠り、ベッドに腰掛ける。
購入したメジコンを取り出すが
今からODするのも…てか明日大学だし絶対眠くなる。
買ったの失敗だったか、と悩みつつも一旦引き出しに入れた。
「…そだ、ODしない代わりにリスカしよ」
俺はいつもみたいに愛用のカッターを取り出し左腕を露出させた。
刃をあてがいそのまま力強く引けば簡単に皮膚が切れ真っ赤な血が流れ出す。
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